夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『シスター 夏のわかれ道』

2022年12月03日 | 映画(さ行)
『シスター 夏のわかれ道』(原題:我的姐姐)
監督:イン・ルオシン
出演:チャン・ツィフォン,シャオ・ヤン,ジュー・ユエンユエン,ダレン・キム,
   ドアン・ボーウェン,リャン・ジンカン,ワン・シェンディー他
 
日曜日に1本だけ、大阪ステーションシティシネマにて。
どれを観るか、他劇場の他作品と迷いに迷って決めましたが、すごーくよかった。
 
背景となっているのは、2015年まで続いた一人っ子政策
こんなことになっていたのかと唖然としてしまいます。
 
アン・ランは望まれて生まれてきた子どもではなかった。
息子がほしかった両親、特に父親は、アン・ランに障害があるふりをさせ、
「第一子に障害があるため、第二子を持つことを許可してほしい」と申請。

両親の世話になることをあきらめてアン・ランは勉学に励み、
高校を卒業すると一人住まい。看護師の資格を得て働いている。
今も医者を目指して勉強中で、まもなく北京の大学院の試験を受ける予定。
 
ところが、アン・ランの両親が交通事故に遭って死亡。
葬儀の日に初めて会った弟でまだ6歳のズーシーを引き取るようにと言われるアン・ラン。
待望の男の子ゆえに甘やかされて育ったズーシーは超わがまま。
 
両親に恨みこそあれど感謝の念などない。弟なんてどうなろうが知るか。
憤るアン・ランはズーシーを養子に出すことに決めるのだが……。
 
酷い話があったものです。そこまでして男の子がほしいのか。
アン・ランのように悲しい思いをさせられた子どもがどれほどいたことか。
男の子さえ生まれれば、母体は死んでもかまわないとも思われているのですから、
子どものみならず母親だってつらい立場にあったでしょう。
 
早くから独り立ちして生きてきたアン・ランに、親族は好き勝手なことを言う。
金を稼いでいるんだから大丈夫だろう、姉なんだから弟を育てるのは当然だろ。
両親が名義をアン・ランにしていた物件を売ればいいじゃないか。
そればかりか、売った金を少しは回せ、みたいなことまで言う。
 
伯母さんの言い分にはいちばん腹が立ったけど、終盤になると、
この伯母さんが女だというせいでどれだけ割を食って生きてきたかがわかる。
彼女とアン・ランがふたりでスイカを食べるシーンにはボロ泣き。
ろくでなしの叔父だけど、子どもが女でも男でも気にしない、そこだけはイイ。
叔父さんがお父さんだったらよかったのに、という台詞にも少しホロリ。
 
そうそう、本作でいちばん驚いたのは、葬儀の席で皆が麻雀をすることです。
いくつも卓が並べられていて、麻雀をすることは故人の供養になるのですと。ひょえ~。
 
という驚きのシーンはさておき、めちゃくちゃ良い作品でした。
先月鑑賞した中でいちばん泣かされた作品。
泣ける映画がいい映画とは限らないけれど、これはとても良かった。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ミドリムシの姫』 | トップ | 『天使の涙』【4K版】 »

映画(さ行)」カテゴリの最新記事