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『アライブ 生還者』

2010年01月21日 | 映画(あ行)
『アライブ 生還者』(原題:Stranded: I Have Come from a Plane that Crashed on the Mountains)
監督:ゴンサロ・アリホン
出演:ロベルト・カネッサ,ナンド・パラード,アントニオ・ビシンティン他

1972年10月13日に起きたウルグアイ空軍機571便遭難事故。
乗客乗員あわせて45名のうち16名が、
雪に覆われたアンデス山中で72日間を経て生還した様子は、
過去に幾度となく映画化されています。

もっとも有名なのは、ハリウッド映画の『生きてこそ』(1993)。
事実に基づき、生存者がアドバイザーを務めた作品です。
『アンデスの聖餐 人肉で生き残った16人の若者』(1975)は、
タイトルからはカニバリズムに目を向けた興味本位の作品とも取れますが、
真面目に撮られた、ブラジル人監督によるドキュメンタリーでした。

本作は、初めて生存者全員が出演したドキュメンタリー。
生存者へのインタビューと再現映像で構成されています。
なんというのか、良いとか悪いとかではなく、凄まじい。
観終わるとしばし放心状態に。

ウルグアイのラグビー部に所属する大学生とその関係者たちを乗せて、
チリのサンティアゴへ向かったチャーター機571便。
生まれて初めて飛行機に乗る者もいて、みんな大はしゃぎ。
ところが、諸般の悪事情が重なり、名もない峰に墜落してしまいます。

機体は雪山を滑り落ちて、ふたつにぶった切られた状態に。
墜落した拍子に機体から投げ出されて即死した者、数名。
パイロットはどの辺りの上空かを言い残して死亡。
食糧を含む大半の荷物が積まれていた尾部は、
乗客のいた部分とは切り離された形でどこか遠くへ。

救助隊の到着を今か今かと待ちわびますが、
機体が白かったために雪と同化してしまい、上空からは見つけることが困難。
すぐそこを飛んでいる捜索機が素通り。
やがて、捜索が打ち切られたことをラジオで知って愕然。

負傷が原因で徐々に増えてゆく死亡者。
食糧が底を突き、遺体を食べることを決意するまで、
自分は狂ったのではないかと思い悩みます。
口に出してみれば、誰もが考えていたこと。

助けは来ないと悟り、最も体力のある2名が、
5,000メートル級の山を越えて9日間歩き続け、
やっと辿り着いた緑のある場所で、川向こうに牛が見えた瞬間の喜び。

その場に立つ力すら残っていないはずなのに、
丁寧に並べた遺体について、
そのひとりずつの名前を救助隊員に懸命に伝えた生存者。
彼らの気持ちがわかるなんて言えないけれど、
どの言葉も表情も胸に迫ってきました。
凄いです。

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