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『アニマル・キングダム』

2012年10月22日 | 映画(あ行)
『アニマル・キングダム』(原題:Animal Kingdom)
監督:デヴィッド・ミショッド
出演:ジェームズ・フレッシュヴィル,ベン・メンデルソーン,ジョエル・エドガートン,
   ガイ・ピアース,ルーク・フォード,ジャッキー・ウィーヴァー,サリヴァン・ステイプルトン他

2010年のオーストラリア作品。
日本公開は今年に入ってからで、先月初旬にDVD化されました。

監督は『メタルヘッド』(2010)の脚本家で、監督としてはこれが長編デビュー作。
物語の基となっているのは、1988年にメルボルンで起きた警官射殺事件。
のちに無罪判決を受けた容疑者とその家族に監督が着想を得たのだとか。
本国ではもちろん、アメリカやイギリスなど、各国の映画協会賞を受賞。
クエンティン・タランティーノが選んだ2010年のベスト作品のうち、3位に本作が入っています。

1980年代のオーストラリア、メルボルン。
17歳の高校生ジェイことジョシュアは、母親と二人暮らし。
ところがその母親がヘロインの過剰摂取で急死し、
疎遠にしていた祖母のスマーフことジャニーンに連絡を取る。

スマーフはただちにジェイを迎えにくる。
ジェイにとっては伯父となるスマーフの息子たちとともに、
スマーフの家で暮らすことに。

しかし、彼らは強盗や麻薬で生計を立てる犯罪一家。
伯父のバズ、クレイグ、ダレンはジェイを拒んだりしないが、
どうにもジェイは彼らの日常になじめず、力が抜けない。
しかも、もう一人の伯父ポープが行方不明で、
彼の帰りを見張っているのか、表には常に警官がいる。

戸惑いつつも元の高校生活へと戻るジェイ。
ガールフレンドのニコールも支えになってくれる。
だが、いつしか伯父たちはジェイにも仕事を手伝わせるようになり……。

地味に淡々と進むのに、終始不穏な空気が漂い、何が起こるかわからない。
いったいこれはどういう種類の映画なのか判断がつきません。
冒頭からして狭い部屋の中、すでに死んでいるように見える母親の隣、
騒ぐでもなくテレビを見ながら救急隊員の到着を待つジェイに引きつけられます。

ジェイ役のジェームズ・フレッシュヴィルの徹底して無表情な演技が素晴らしく、
無表情でありながら心の動きはしっかり感じさせます。
自分の居場所を求め、一旦は逃げだそうとしても、
どうあがこうがこのファミリーからは抜けられないことを悟り、
戻ったときには王者の風格さえ見え隠れしています。

ファミリーの中で唯一不動の存在であるスマーフは、
息子たちにいびつな愛を注ぎつづけ、息子たちとともに過ごすことに固執します。
息子たちを裏切ったら、孫でさえも許さない。
そんな彼女が打ちのめされる瞬間は目が離せません。
なんとも言えない重々しい余韻。

ちなみにタランティーノが選んだ2010年の1位と2位は、
『トイ・ストーリー3』と『ソーシャル・ネットワーク』だそうで、とっても楽しい守備範囲。(^O^)

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