2018年度の医療保険の診療報酬と、介護保険の介護報酬の改定をめぐる政府内の議論が本格化してきました。診療・介護報酬は、公的な医療と介護のサービスを国民が利用するときの「価格」です。これらの報酬は、自民・公明政権の社会保障削減路線の下で削減と抑制が続いた結果、医療と介護の現場に深刻なゆがみと困難をもたらしています。それにもかかわらず安倍晋三政権は18年度も「マイナス改定」を実行する姿勢です。社会保障費「削減ありき」で、国民の健康と暮らしを支える仕組みを揺るがす「マイナス改定」は到底認められません。
同時改定は6年に1度
診療報酬は、外来、入院、手術、投薬など患者が受ける医療行為について、健保や国保などの公的医療保険から医療機関に支払われる「価格」(患者負担1~3割)です。診療報酬総額は年末の予算案で決定され、それぞれの医療行為や薬の個別の単価は、厚生労働省の審議会の議論を経て決められます。
介護報酬も在宅や施設で行われる介護サービスの「価格」(利用者負担1~3割)で、サービスを実施する介護事業者の収入になります。介護報酬も政府予算案で総額が決められ、サービスの単価は、厚労省の審議会が具体化し、決定します。
診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度の改定が原則になっており、18年度は二つの報酬改定が同時に行われる6年に1度の年です。このほか障害者福祉の報酬改定も重なる18年度は「トリプル改定」の大きな節目の年とも位置づけられています。本来なら、医療や介護、障害者福祉の各分野での施策をいかに充実・改善させていくのかという積極的な議論が優先的に行われていいはずです。
ところが、もっぱら安倍政権内から聞こえてくるのは「マイナス改定」「削減ありき」の声ばかりです。社会保障費削減の加速を狙う財務省の審議会は、医療・介護の「効率化」の一体的対応ができ「絶好の機会」とのべ、2%半ば以上の診療報酬マイナス改定が必要などと迫っています。経団連の榊原定征会長は「国民にとって痛みを伴う改革」を求め、「安定的な政権基盤を得た」から「自信を持って」取り組めとはっぱをかける始末です(「産経」25日付)。暮らしの実態を無視した乱暴な発言です。
02年~08年度に強行された診療報酬の大幅マイナス改定の影響は、各地の医療機関の経営を危機にさらし、「医療崩壊」といわれる事態を招き、その後もマイナス改定が続く中で大きな矛盾を抱えたままです。介護報酬もマイナス改定が繰り返される下で経営が成り立たなくなった事業所が続出、介護が必要な人がサービスを使えない「介護難民」が後をたたない状況になっています。いま必要なのは、マイナス改定ではなく、削減されてきた医療・介護の報酬を元に戻し、増額に転じることです。
国民負担増やさず拡充を
18年度の診療・介護報酬をめぐる議論では、マイナスによって生まれた現場の危機を打開するため、プラス改定を求める切実な声が出されています。報酬の増額が国民負担増に直結しないよう、窓口負担・利用料負担の軽減と合わせた報酬アップが求められます。そのための税の集め方と使い方の改革はいよいよ急務です。