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南英世の 「くろねこ日記」

チボー家の人々

この小説は20世紀のフランス文学を代表する大河小説である。20世紀の初めから第一次世界大戦にかけてのチボー家の兄弟とその友人を中心に、様々な生き方や悩みを描いている。私が中学生の時、友人がこの本を読んでいた。彼は恐ろしく早熟な文学少年で、のちに出家して坊さんになった。今頃は高僧になっていることだろう。

 

この本にはすごいことが書いてある。

「戦争に動員されるくらいなら、ぼくは両手を切っても惜しくはないんだ。全体の利益、大衆の利益は明らかに平和にあって戦争にはない! 銃を手にして戦場に駆けつけることではなく、戦争を拒否することにこそヒロイズムがあるんだ。戦争を可能にしているもの、それは大衆の無知蒙昧な服従だ。ぼくは国家が人間の良心を踏みにじる権利を否定する。国の決めた法律などよりぼくの良心の声のほうがずっとずっと大きいんだ・・・・」

とはいいつつ主人公のアントワーヌは、結局、兵役を拒否できず、毒ガスにやられて口もきけなくなり帰還する。迫りくる死を確信した彼は、最期に自らモルヒネを注射して自殺することをほのめかす。「37歳、思ったよりわけなくやれる」。

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