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南英世の 「くろねこ日記」

東ロボくん 英文語句整序問題に挑戦


最近の生徒は教科書をきちんと読むことができない。常々そう思っていたところ、『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子 東洋経済新報社)という本を見つけ、その題名にひかれ読み始めた。しかし、読み始めて分かったのは、私が知りたかった「子どもたちが教科書を読めない理由」ではなくて、AIには何ができて、何ができないかという数学者の話だった。

私の期待した話とは違ってはいたが、28万部も売れただけあって非常に面白い本だった。特におもしろかったのは、東大の入試問題に挑戦する東ロボくんの話だった。東ロボくんに英語の語句整除問題を解かせるくだりである。たとえば、次のような問題があったとする。

問題 次の文章の(  )内に(complex , me, solve, for, to, with)の語句を適当に入れて正しい文にせよ。

This problem is too (  )(  )(  )(  )(  )(  )ease.

人間がこの問題を見れば、too…to のあの構文だと一目で分かる。しかし、AIは文章の意味がわからない。AIがわかるのは教え込まれた3300万個の例文だけである。そこでAIにこの問題を解かせる場合、次のようなアプローチになる。

6個の単語をアット・ランダムに並べる。すると6の階乗通り(6×5×4×3×2×1=720通り)の文章が出来上がる。そして、出来上がった文章を片っぱしから検索し、覚え込ませた例文に適合するかどうかを確かめる。

AIは覚えることや検索は大得意である。だから、力任せに一致する例文に遭うまで検索させる。こうして、
This problem is too complex for me to solve with ease. 
という正解にたどりつく。

しかし、こうしたやり方には限界があったという。最終的に、東ロボくんに150億個の文章を学習させたが、会話文や常識が必要とされる文章に対しては歯が立たず、正解率は4割に届かなかったという。

そうかあ。AIは文章が理解できないのか。最近、ロボットに話しかけると、いろいろ応えてくれる対話型のロボットが開発されている。しかし、これらも意味を理解して応答しているわけではなく、キーワードを頼りに検索をして、「さも理解をしているようなふり」をして応答しているだけなのだ。そうだったのか。
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