南英世の 「くろねこ日記」

裏社会を読み解く1冊

 著者の植草一秀氏は2000年から2006年を「黒い霧期」と呼ぶ。この時期に市場原理主義、新自由主義経済政策が本格導入され、現在の日本経済に通じる問題の基本構造が構築された。

アメリカ巨大資本の利益を最大化するために日本がどのようなことをしたか。彼は旧長銀の不正入札や株価操縦、インサイダー取引を暴き出し、小泉竹中政権時代の新自由主義政策を「売国政策」として厳しく糾弾していた。政権にとって極めて危険な人物であったに違いない。

植草氏はかつて早稲田大学の教授であった。しかし、痴漢行為で有罪とされ、4か月間の実刑判決を受けた。権力批判が政権側の逆鱗に触れ、人物破壊工作の標的となった冤罪の可能性も考えられる。真実を伝える作業は命がけである。当時は権力者周辺で、原因不明のなぞの死人が何人も出た時代である。

そんな経緯もあって、これまで彼の本を読むことはなかった。ところがこの4月に発行されたばかりの『日本の黒い霧』を書店で手にして、その分析の面白さに俄然引き付けられてしまった。 これまでに読んだどの本よりも刺激的である。知らないことがいっぱい書いてあり、学者として非常に優秀であると感じた。

そこで、この際、彼の書いた本を全部買い集めることにした。とりあえず20冊ほど購入した。このほか10冊ほど注文中である。

 

かつて田中角栄首相が言っていた。

「私は新聞記事の1面は読まない。真実を知っているのはワシだけであり、真実を知らない新聞記者が書いたものを読んでも意味がない」と。

植草氏は「アメリカの巨大資本は日本の政治家やマスコミにも大きな影響力を持っている」と著書に書いている。かつてフジメディアホールディングの株式は外国人が20%以上持っていて問題になったことがあった。学者の世界ではアメリカを批判するものは容赦なく仕事を干されると名古屋大学の飯田経夫教授が書いていた。確かにアメリカを批判するのをテレビでは見たことがない。

自由と民主主義は矛盾する。自由は所得格差を生み、1%の人の利益を最大化し99%の人を不幸にする。一方、民主主義は99%の人の幸福を追求する。

マスコミを操縦し、国民主権という民主主義的な方法を利用してアメリカの利益を最大化する政策が進められている。かつてフジテレビの「めざましテレビ」という番組のメインキャスターを務めていた森田実(政治評論家)は、アメリカが5000億円を日本のメディアに投入し、テレビを使って日本国民を洗脳し郵政民営化を進めたことを暴いた。そのため森田はテレビ局の社長から「電通の意向があって森田先生はもうわが社では使えない」といわれ、テレビ界から追放された。

日本は自由な国であると多くの人が思っている。しかし、民放はスポンサーの意向を無視できないし、NHKは人事権を政府に握られ「政府が右といったことを左とは言えない」という体質を持つ。また新聞はスポンサーへの忖度のほか、再販価格維持や消費税の軽減税率適用のため政府権力に服従せざるを得ない。

ウクライナ問題の情報もマスコミが伝える情報をうのみにはできない。ウクライナ戦争によってアメリカの軍事産業は高笑いをしていることだろう。もし日本が悪乗りをして、防衛予算を今の2倍のGDP2%にするとしたら、一番利益を得るのはアメリカの軍事産業である。アメリカの巨大資本はあらゆる手段を使って自らの利益の最大化を図ろうと虎視眈々と狙っている。

マスメディアは連日デルタ株やオミクロン株のことを伝えている。DELTAとOMICRON、これらの文字をシャッフルすると”MEDIA CONTROL”となる。現実の政治・経済の背後でどのような巨大な力が動いているのか。北朝鮮や中国・ロシアのことを笑ってはいられない。

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