『論語と算盤』を読んだ。 渋沢の生きた時代は「私」を抑え「公」を優先する官尊民卑の生き方が正しいという風潮が強かった。そうした中で「私益の追求」が公益となりうるという信念のもと、渋沢は500におよぶ会社を設立した。
渋沢の基礎にあったのは『論語』である。武士道はもっぱら武家社会だけで行われ、商工業者の間では重んじられなかった。しかし、渋沢は義と道にかなっておれば富と貴きは認められると主張し、『論語』は人間の金儲けの暴走に歯止めをかける役割を果たすと説いた。
また、社会から金持ちを追い出そうとしても国は豊かにはならない。地位や名誉を手に入れたいと思うから人々は日夜努力し、国家が豊かになる。結果として貧富の差が生まれるなら、それは自然の成り行きであるとも説く。
この本を読んでいて、渋沢は日本のアダム・スミスだという感想を持った。