韓国が反日的である理由として次のようなことが考えられる。
① 韓国では昔から「中華思想」の下で中国が1番で韓国が2番、日本はその下の3番という序列意識がある。韓国は儒教の影響が強く、儒教では「長幼の序」を重視する。だから、日本が韓国の上にあることには我慢がならない。
② そのうえ、古代にあっては日本にさまざまな文化を「教えてやった」という自負もある。ところが近代に入って国力をつけた日本が韓国をリスペクトしなくなった。それどころか植民地(1910~1945年)にして、ひどい扱いをした。
③ 上記の理由から、韓国民の間でたとえ意見が違っていても、反日という点では共通するものがある。政府はそうした国民感情を利用して、韓国内をまとめるために意図的に反日教育をした。
日韓戦のサッカーの試合が異様に盛り上がるのは、こうした国民感情によるところが大きいのだろう。
一方、台湾が親日的であるのはなぜか?
まず、台湾の歴史など基本的なことを振り返り、最後に台湾が親日的な理由をまとめたいと思う。

台湾は1624年オランダの植民地となった。その後、鄭成功がオランダ人を追放したが、清の康熙帝によって滅ぼされ(1683年)、その後1895年まで清朝に属することとなった。しかし、当時の台湾はマラリアやデング熱などが蔓延する地であり、清朝は統治にほとんど関心を示さなかった。
その後、日清戦争で日本は勝利し、台湾は日本に割譲された(1895年)。下関条約の交渉に臨んだ李鴻章は伊藤博文に対して「なんであんな野蛮な土地を欲しがるのか」と言ったといわれる。
台湾の開発が始まったのは、日本が統治するようになってからである。鉄道、道路、港湾などのインフラ整備が行われ、サトウキビの品種改良により製糖業を主要産業にまで育て上げた。そればかりではなく、学校教育を普及させ、台湾の教育水準を著しく向上させた。
第二次世界大戦後、毛沢東との内戦に敗れた蒋介石が台湾に逃れてきた。台湾ではもともと住んでいた人々を本省人(ほんしょうじん、台湾の85%を占める)と呼ぶのに対して、蒋介石とともにやってきた漢民族を外省人(がいしょうじん)と呼ぶ。
日本軍とたたかった蒋介石は当然のことながら反日教育を叩き込み。1949年から1987年まで戒厳令を敷いた。台湾の民主化が始まったのは1988年に李登輝が総統の地位についてからである。軍部独裁の解体、言論の自由化、総統直接選挙などが実施され、それまでの反日教育も改められた。
こうした台湾を中国の一部として完全に掌握しようとしているのが習近平政権である。南シナ海への海洋進出を狙う中国にとって、台湾は地政学的に譲ることができない場所である。それは地図を見れば一目瞭然である。台湾には3000メートル級の山が200座以上ある。日本の21座どころではない。一番高いのは玉山(新高山という暗号にも使われた山)と言われ、標高は富士山より高い3950メートルである。

この山にレーダーを設置すれば南シナ海が一望できる。したがって、東アジアの安定のためにアメリカも台湾に強い関心を示している。アメリカは1979年、台湾関係法を成立させ、台湾を軍事的にも強力に支えている。2019年の総統選挙では、中国からの独立を掲げる民進党の蔡英文(さいえいぶん)氏が、中国との融和政策を進めようとする国民党の候補を破って再選を果たしている。
以上のことから、台湾が親日的である理由は次のようにまとめることができるのではないか。
① 台湾は長い間中国権力が関心を示さない地(化外の地 けがいのち)に置かれていたため、韓国のような中華秩序に基づくプライドが形成されていなかった。
② 日本の統治下でインフラ整備や学校教育が実施され、それが清朝の支配と比べ良い政治として歓迎された。
③ 李登輝の民主化政策によって、蒋介石時代の反日教育が見直され、日本統治時代を評価する声が高まった。特に50歳以下では親日感情が非常に強い。
東日本大震災に際して、台湾は民間資金をかき集めニ百数十億円を日本に寄付してくれたことは記憶に新しい。現在、台湾では人口の10%が日本語を話すといわれる。最大の理由は、1990年代に高校で英語のほかに第2外国語も必修となり、生徒の約9割が日本語を選択しているからだという。
韓国も台湾もともに大切な友人である。お互いの地図上の住所は変えられない。どうしたらうまく付き合っていけるのだろうか。