minaの官能世界

今までのことは、なかったことにして。これから考えていきます。

リハビリ(その4)~お酒を飲んだ時~

2014年02月28日 | リハビリ

手足の感覚が麻痺している。
最初は手足だけでなく、
首から下が完全麻痺の状態だった。

自分の身体なのに、どこも動かない。
どうなっているのかさえ判らない。
何かの拍子で、腕が身体の下敷きになっても、
そのことが判らないし、戻すこともできない。

療養士が二人、私の担当になって、
毎日、熱心に、
多い時は1日に何回もマッサージしてくれた。
最初のうちは、主治医も何回も顔を出してくれた。

そういう周囲の腫れものに触れるような雰囲気に、
「ああ、私って、相当な重症なんだ」と自覚してしまった。

何も判らないと言っても、痛みを感じないわけではない。
腕の上腕筋のあたりが猛烈に痛かったり、
足のふくらはぎのあたりに激痛がはしったり、
それでも、自分ではなにもできない。
看護士や療養士になんとかしてほしいと頼み、
マッサージをしてもらうのだが、それがよく判らない。
感じないのだ。
もどかしい気持が極限になった。

私の手を療養士や看護士が触っても、触っているのが判らない。
指を曲げて貰っても、自分の指ではないような感じがした。
手がプラスチック製のグローブで覆われているような感触だった。

「これって、リハビリを続けたら、感触が戻ってくるんですよね?」

私は、すがる様な気持ちで療養士に訊いた。

「・・・うーん・・・、感触は判る様にはなるとは思いますけれどね・・・」

彼は困ったような顔をして答えた。

「リハビリでは痺れや麻痺は治らないんですよ」

あれから1年6カ月が過ぎようとしているが、
あまり状況は変わっていない。

薬のおかげで、凍えるような痺れと痛みは、
相当程度、抑えられるようになった。
でも、薬の効果が切れたら、酷いことになるのは、以前に書いたとおりだ。
つまり、何もよくなっていない。

先日、元勤務先の同僚だった方が、お酒を携えて見舞いに来てくれた。
事前の確認があれば、お断りしたかもしれなかったが、
・・・いや、そういう方ではないなぁ、
豪快で磊落な方だから、私が何を言おうと来られたろうなぁ・・・
そういうわけで、久しぶりにお酒をいただくことになった。

夕食前だったから、薬を飲むタイミングを失ってしまった。
盃に5~6杯くらいだろうか、私自身がいただいたのは・・・。
それでも、久しぶりのお酒に、かなり酔ってしまった。
だから、就寝前の睡眠薬も鎮痛剤も控えようと考えた。

薬を飲まないと、痛みや痺れが酷くなることは承知していたが、
お酒を飲んでいるから、大丈夫ではないかと思ったのだ。

こんな状態になる前も、
寝る前に、このくらい飲めば、熟睡できたから・・・。

これは、完全な間違いだった。

眠ろうと横になったが、身体が、特に四肢が凍えるように痛む。
それが、次第に強くなってくる。
1時間くらい我慢していたが、それが限界だった。

這う這うの体で寝床から起きだし、
キッチンの蛇口まで辿り着くのが大変だった。
映画のサイレント・ヒルに出てくるゾンビみたいに、
よたよたとよろめきながら、懸命に歩を進める。
ぶるぶると震える手でコップに水を汲み、
必死の形相で薬を飲む。
傍で見ている人がいたら、何事かと思ったことだろう。

リハビリも退院当初は、月1回から2回だったが、
間隔が開くと、身体の痛みや痺れが酷くなるような気がして、
なおかつ、身体が動き難くなるのが判り、
週1回とした経緯がある。

身体が全く動かなかった当初の状態を0とすると、少しでも動けば、それは∞だ。
身体が動き始めて、私は有頂天になっていた。
「きっと元通りになれる」

健常者の状態を100としたら、今の私は、どのくらいなんだろう。
多分、10か20くらいだろう・・・もっと低いかも・・・
手拭いがちゃんと絞れない、
ワイシャツのボタンの留め外しができない、
頻繁に手足がぶるぶると震える・・・いわゆる反射だ・・・
必要に迫られて、やっとのことで部屋の中を伝い歩きするが、よく転ぶ。
足ががくがくするので、継続的に立っていることは不可能だ。
重いものは持てず・・・5キロが限界だ。
手足の動きが捗々しくなく、トイレに間に合わないこともある。

そもそもリハビリは、
身体が固まって動かなくなることを防ぎ、
耐えがたい痺れや痛みを緩和するために不可欠なのだ。

しかし、
そのための通院は、手足の不自由な私には、
肉体的にも精神的にも大きな負担となっている。

ああ、なんとかして、この状況から脱却しなくてはいけない。
激痛をともなうリハビリを続けているのは、
その強い思いから・・・
それだけなのだ。





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