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東京国立博物館 【大徳川展】 千利休~泪の茶杓:公開

2007-10-21 20:12:36 | 美術・芸術・創造

大徳川展へのリンク 10月10日~12月2日開催。(終了)
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=4660
                          東京国立博物館ホーム・ページ内

 
 10月12日の午後。東京上野にある国立博物館へ立ち寄った。
 滞在時間が1時間程の余裕しかなく、駆け足で特別展「大徳川展」を観た。
 開催日3日目の平日の午後にもかかわらず大勢の人が詰め掛けていた。

 平成館で開催されている特別展の詳細は、リンク先をご覧いただきたい。
 この展覧会は、徳川家が残し伝えた名品の数々を一同に集めた稀有な展覧会であることは確かだ。
 名古屋の徳川美術館や、水戸の徳川博物館の名品を柱に、日光・久能山・紀州の東照宮に納められた美術品も数多く出品されている。

 その中でひとつ。
 千利休が、古田織部に与えた「泪の茶杓」が、期間限定:10月10日~28日で出品されていることに驚いた。
 この茶杓は、所蔵する名古屋・徳川美術館でも年に一度、利休の命日に当たる2月28日の前後、一週間ほどの公開。
 この期間に名古屋へ足を運ばない限りは、目にする機会はなく、ぜひ観たい一品のひとつだった。
 
 「泪の茶杓」は、一般的な視点で見ると、美術的価値はないように感じる。
 
 千利休が、豊臣秀吉に切腹を命じられ、その猶予期間の間に自らの手で削った中節形の茶杓。
 その茶杓を使用した生涯最後の茶会の後に、弟子の一人である古田織部に分け与えた茶杓こそが、今回展示されている「泪の茶杓」。
 さらには、弟子の古田織部は、その茶杓を本来用いられるべきの着色のない木地の竹筒ではなく、黒漆で丹念に塗りあげた茶杓用の筒を自作した。
 織部は黒く塗ることで、茶杓を入れる筒を保存用の筒に留まらず位牌としての意味づけをしたと伝えられる。
 日本の美意識の中で見立てと言われるものがあるが、この茶杓こそは、見立ての美学。
 
利休から授かった形見の茶杓を分身と見立て、その分身を奉る社としての黒漆に丹念に塗られた真塗りの筒。

 さらには、黒く塗り上げた塗り筒の中にある茶杓を絶えず拝むことができるようにと、おそらく茶杓の節にあたる部分に小窓を空けた織部は、毎日毎夜その茶杓を拝したと伝えられる。
 その、古田織部の心情とセンスの良さとが合い重なり、茶道具史上もっとも有名な茶杓として存在する。

 初めて鑑賞したこの茶杓は、思ったよりもずっと薄い造りで(展示方法が側面からも鑑賞できるために厚みの確認が可能)、茶杓の規範とも言える形状は静かな面持ちがあり、茶杓の先端にわずかな割れも見つけることができる。
 また、筒に塗られた漆も思った以上に丁寧に塗り重ねられ、やや茶色身に変色した筒は時代を感じさせる上品な仕上がりとなっている。
 
 利休の与えた真摯な茶杓に対して、古田織部の扱いと思い入れは、その後の織部焼きの祖としての面目躍如。茶杓に対するアプローチに本当のセンスの良さを感じる逸品。

 時間のない中、私にとってこの日のお気に入りはこの泪の茶杓と、長崎図鑑
 
 長崎図鑑と題した絵巻物は、多くの南蛮図を目にしてきたが、これほど美しく繊細な描写は珍しく、なぜ国指定の文化財になっていないのか不思議なほどの出来。
 
 他に、実際には使用されなかった水戸黄門の印籠や、慶喜の直筆になる大政奉還勅許の写し等、長期間続いた徳川家の興味深い資料の数々。
 
 美術品としての圧巻は千代姫の婚礼道具として有名な国宝「初音の調度品」。
 もちろん、戦国好きの方のための鎧兜や刀剣などの武具も多数展示。
 本腰を入れて見ようと思うと、何時間もかけてしまいそうな歴史ロマン。
 この展覧会の会期は、10月10日~12月2日。
 時間があれば、ぜひ足を運んでください。

 


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