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メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

トレーラー…パーキングブレーキ解放しない。

2016-06-01 02:53:01 | トレーラー
トレーラーによくある故障で、パーキングブレーキが解放しないという症状…

近くのお客様から、トレーラーを連結して発進しようとしてもブレーキが引きずって走れない!と
電話があり現地へ出張。

現車を確認すると3軸中、後2軸がロックしたままです…

最近のトレーラーのパーキングブレーキは法規制の関係でスプリングが内蔵されたマキシ式チャンバーを使用しています。
通常のサービスチャンバーにピギーバックと呼ばれる部分が合体した物で…このピギーバックの中にはとても強力なスプリングが内蔵されてます。

このマキシ式も大型トラックなどではフットブレーキはエアーで作動して、パーキングブレーキはスプリングで作動する…といった感じ。

トレーラーも基本的には同じなんですが、トレーラー側には通称キャブコン…と呼ばれるトレーラー単体時に使用するパーキングブレーキバルブが付いており…
メーカーによって異なりますが、多くが車体の左側面に取り付けられています…
こんなバルブ…


このバルブを押し込むとピギーバック内のエアー圧が抜けてスプリングの力でパーキングブレーキが作動します…
逆にバルブを引くとピギーバック内にエアーが供給され、その力でスプリングが戻されてパーキングブレーキは解放されます。

今回の症状はバルブを解放側にしてもパーキングブレーキが解放されず、ブレーキがロックしたまま…
当然、走行は出来ません。

この症状…よくあるんですが…
原因はプレッシャーコントロールバルブの不良。


で、この車両は3週間前に別の整備会社で車検を受けたばかりだそうで…
記録簿を見ると指定工場での継続車検なんですが…
本来ならこの症状は検査時に分かるはずなんですよね…
ちゃんと検査してれば…の話ですけど。

というのも…このプレッシャーコントロールバルブ不良による引きずりは、突然発生する故障では無いんです…
詳しい説明は後にするとして…


ちゃんと整備してちゃんと検査してれば嫌でも分かる事なんですよ…

整備で見落とす事はあっても検査時にはパーキングブレーキの制動力の測定があるから…
分かるはず…

これ以上は言うのもアホらしいですね。笑



とりあえずプレッシャーコントロールバルブを取り外して工場が近くなので持ち帰り組み替え。

外したプレッシャーコントロールバルブ。


で、原因はこのプレッシャーコントロールバルブの中に…


このようなピストンが入ってるんですが…




このピストンに取り付けられたゴムのスリーブ…


これがカチカチに硬化する事で今回のような症状がおきます。

どういう事かというと…
このピストンのスリーブの裏にはこの様な穴が開いており…


トレーラーのパーキングブレーキ作動時にはピギーバック内のエアー(青の矢印)が外部(赤の矢印)に排出されます。


逆に解放時は矢印の方向からタンクのエアー圧がかかり


先ほどの穴からエアーがスリーブを押し広げながらピギーバック内にエアーを供給する事でスプリングを解放します…

ところがそのゴムのスリーブが経年劣化でカチカチに硬化するとエアー圧がかかっても押し広げる事が出来ず、パーキングブレーキが解放されないか、もしくは解放までに時間がかかったりします。

この車両はスリーブが硬化してまるでプラスチックかと思うほど硬くなっておりました。
この硬さから言って3週間前まで問題無かったという事はありえません…
徐々に劣化してくるので。
また、車検の完成検査時にパーキングブレーキの制動力を測定しなければならないので通常通り検査してればパーキングブレーキが引きずる事はブレーキテスターの数字を見ても分かるものなんです…
先程、キチンと検査してれば分かるはず…と言ったのもそういう理由です。


正常な状態であればバルブを引くと1~3秒位で解放されます…
解放に5秒以上かかるようなら交換した方がいいですね…
今回の車両は待てど暮らせど解放されず…笑


よくある故障の為、在庫を持ってるので新品を組み付けて完成。


現場で応急的に修理する時は硬くなったスリーブを取り外して元のスリーブと同径の柔らかいゴムホースで代用する事で走行可能にもなります。
急いでいる時やプレッシャーコントロールバルブが外しにくい時はその方法で一時的に凌げます…


今回は空荷だった事もあり運転手さんが気付いてくれましたが、何十トンも荷を積んでいると、ブレーキが引きずってる事に気付かず走行して結果…車両火災っていう事があるんです…

トレーラーはエアーがある一定以下の圧力になると自動でパーキングブレーキが作動する様になってるんですが…
気をつけなきゃいけないのは今回のタイプのキャブコンはエアー圧が下がりパーキングブレーキが作動するとその後、エアーが供給されても手動で操作してやらない限り解放されないんです…

その事を知らない運転手さんが多く、そのまま走行して車両火災…という事が全国で何件かあってから各メーカーはこぞってリコールやサービスキャンペーンで対応してます。

これが手動での解放が必要なタイプ。


こちらがリコールなどの対策品でエアー圧が規定以上になると自動で解放するタイプです。



個人的に思ったのが、この手動で解放するタイプも機械的に何か不具合がある訳では無いんです…
手動式…という事を知らない運転手さんが多いだけなんですよね…
昔からのトレーラー乗りの運転手さんに言わせると、そんなもん知ってるのが当たり前だろ…って話なんです。

思うに…最近はプロ意識の高いドライバーさんが減ってきてる様に感じます。
自分の乗ってる車の事すら興味無いみたいな…

最近の自動車はハイテクになり過ぎてドライバーが育たないんじゃないでしょうか…

車だけじゃなく何でも自動にすればいいって訳でも無いと思います。

それでは人の技術や感覚が育ちませんから…














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4 コメント

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全くその通りでございます (厠之雲黒斎)
2016-06-01 16:56:16
非常に解りやすい解説ありがとうございます。
当社サービスマン教育に使える内容です。
赤いノブの駐車ブレーキバルブは、“バカ避け”なんですが、“バカ”が多過ぎて逃げられないのでリコールになってます。

某、厚木方面より。
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厠之雲黒斎 さん (mikiaxis)
2016-06-02 12:58:39
部品や設計になんら不具合は無いのにリコールですからね…

メーカーがユーザーにどれだけ周知させようとしてもユーザー側に知ろうとする気持ちが無ければ意味がないですよね…
悲しい現実です。

腹の内はどうあれ、各メーカーさんは大人の対応だと思いますよ…笑
返信する
Unknown (道産子重トレーラーオペ)
2019-06-14 14:11:44
はじめまして
聞きたいんですが台車のマキシブレーキ側のチャンバー
基本非分解ですがもし中のバネ他欲しい時って部品って出た経験とかありますかね?
フットブレーキ側のロッド、バルブ、スプリングなどはメーカーによっては部品供給ありますがマキシ側は聞いたことがなく。。もし良かったら情報提供頂けませんか?
返信する
Unknown (mikiaxis)
2019-06-14 16:14:19
道産子重トレーラーオペさん 初めまして。

私の経験上ではピギーバック側の内部部品を供給してもらった事はありませんし、部品設定があるという話も聞いた事はありませんね…
基本的にピギーバックは非分解指定ですが、分解出来る構造のタイプもありますが構造を知らないメカニックが分解して大ケガをしたという話はよく聞く話ですからね…(^_^;)
最近では分解出来ないようにピギーバック側のクランプはボルトナットではなく一本物のリングによるカシメになっている物も多いですから…
メーカーとしてはやはり分解して欲しくないんだと思います…
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