言語空間+備忘録

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「日米同盟:未来のための変革と再編」の意義

2010-12-12 | 日記
西部邁・宮崎正弘 『日米安保50年』 ( p.20 )

(宮崎) 二〇一〇年は日米安全保障条約が改定された一九六〇年から数えてちょうど五十年になります。
 日米安保条約はまだ続いていると我々は錯覚していますが、実はこの安保条約は事実上終わっているとも言えるのです。元外務省国際情報局長・駐イラン大使の孫崎亨 (まごさきうける) さんによれば、二〇〇五年十月に「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書が出ていて、日米両国がサインしました。これは事実上の条約改定を意味します。
 安保条約には極東条項 (第六条) があるのに、この文書には、在日米軍の活動範囲は極東に限定されないとか、日米には共通の戦略があって、日米同盟は「世界における課題に効果的に対処するうえで重要」とか、飛躍したことが書いてあります。日本が「世界」の平和と秩序のために貢献し得るという内容で、この文書に署名したということは、今からの日本は、イラクでもスーダンでも、世界中どこへでも出て行かざるを得ないということです。しかも、行く先はアメリカが一方的に決めるという片務性が残ったままにです。

(中略)

「日米同盟:未来のための変革と再編」のことは、ほとんど新聞に出ませんでした。これが大きな変革につながっていることに政治家は気づいていません。ですから、外務省はうやむやのうちに進めてしまいました。
「極東」と言いますが、アメリカ人やヨーロッパ人の世界地図では確かに日本は端っこだから極東ですが、日本が中心なら、極東はニューヨークであり極西はロンドン……という冗談はおくとしても、極東条項もいつの間にかうやむやになりました。
 ここ数年、論議されているのは、むしろ集団安保保障の問題で、集団的自衛権の行使を認めるかどうかといったことを日本の国会は世界情勢の周回遅れで話しています。しかし、実際にはとうの昔に、事実上の集団安保体制に移行しているわけです。国際情勢に疎い (うとい) 民主党が政権を握り、国会議員の一部にいまだに観念論が残っていることも恐るべきことです。

(中略)

(西部) この防衛問題を考えるたびに、僕は疑問に思うことがあるのです。よく「個別的自衛」と「集団的自衛」の区別がされて、中曾根康弘さんさじめ旧政権党の自民党関係者も「日本は個別的自衛権で専守防衛に徹する。集団的自衛権は、内閣法制局の『憲法解釈として行使できない』という見解を受け入れる」と発言していました。
 しかし考えてみれば、これは実に奇妙な言い方で、個別的自衛と集団的自衛が無関係であるはずがありません。自分の国を守るという非常に強い気持ちがあったとしても、では守るためにどうするかと考えたら、少なくとも可能性として、友好国と集団的に協定なり何なりを結んで、集団的自衛を第二段階として考えるのは論理上必然のことです。

(中略)

 実は、イラク問題が苛烈 (かれつ) になっていった時に、有名な外交評論家である岡崎久彦さんが、僕が自主防衛の必要を言った時に、「自主防衛を言うとはおこがましい。その前に集団的自衛権の行使を日本国家が認めるかどうかが先決なのだ」とおっしゃった。その場はテレビだからまともな議論もできませんでしたけど、その時以来、僕はむしろ逆ではないかと思っているのです。まず自分の国は自分で自主的に防衛する、そのほうが先だということです。
 国際情勢が最悪で、どの国も自国に協力してくれないという状況があったとしても、ある一定期間、自力でとことん頑張り続けて状況の転換を待つ、というぐらいの気力と準備を持つというのが、自主防衛の第一段階です。それをやって初めて、自主防衛をさらに堅固なものとするために、友好国なり同盟国なりと協定を結ぶということが、自主防衛の一つの系 (コロラリー) として出てきます。
 まず自主防衛の構え、そして自主防衛の最悪のケースとしての単独防衛の構えを持たない国は、形のうえで集団自衛をやっても、結局は今の日米同盟と称されているものに見られるがごとく、友好国アメリカのほとんど言うがままに動かざるを得なくなるという形で、むしろ自主防衛にとっての阻害要因となってしまうのだと僕は考えているのです。


 日米同盟は「事実上」終わっている。実際にはすでに「事実上の」集団安保体制に移行している。内閣法制局は集団的自衛権は「憲法解釈として行使できない」としており、集団的自衛権の行使を認めるかどうかが論議されているが、これは世界情勢からみて遅れている、と書かれています。



 引用文中に出てくる「日米安全保障条約」の全文と、「日米同盟:未来のための変革と再編」の冒頭部を引用します。



外務省」の「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

 日本国及びアメリカ合衆国は、
 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、
 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、
 両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、
 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、
 よつて、次のとおり協定する。

第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。

 千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎

アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ




外務省」の「日米同盟:未来のための変革と再編(仮訳)

I. 概観
 日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎である。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない。以上を踏まえ、2002年12月の安全保障協議委員会以降、日本及び米国は、日米同盟の方向性を検証し、地域及び世界の安全保障環境の変化に同盟を適応させるための選択肢を作成するため、日米それぞれの安全保障及び防衛政策について精力的に協議した。

 2005年2月19日の安全保障協議委員会において、閣僚は、共通の戦略目標についての理解に到達し、それらの目標を追求する上での自衛隊及び米軍の役割・任務・能力に関する検討を継続する必要性を強調した。また、閣僚は、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化することとし、事務当局に対して、これらの協議の結果について速やかに報告するよう指示した。

 本日、安全保障協議委員会の構成員たる閣僚は、新たに発生している脅威が、日本及び米国を含む世界中の国々の安全に影響を及ぼし得る共通の課題として浮かび上がってきた、安全保障環境に関する共通の見解を再確認した。また、閣僚は、アジア太平洋地域において不透明性や不確実性を生み出す課題が引き続き存在していることを改めて強調し、地域における軍事力の近代化に注意を払う必要があることを強調した。この文脈で、双方は、2005年2月19日の共同発表において確認された地域及び世界における共通の戦略目標を追求するために緊密に協力するとのコミットメントを改めて強調した。

 閣僚は、役割・任務・能力に関する検討内容及び勧告を承認した。また、閣僚は、この報告に含まれた再編に関する勧告を承認した。これらの措置は、新たな脅威や多様な事態に対応するための同盟の能力を向上させるためのものであり、全体として地元に与える負担を軽減するものである。これによって、安全保障が強化され、同盟が地域の安定の礎石であり続けることが確保される。




 これを見ると、たしかに、「日米同盟:未来のための変革と再編(仮訳)」には、「日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎である。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない」ので「地域及び世界の安全保障環境の変化に同盟を適応させるための選択肢を作成するため、日米それぞれの安全保障及び防衛政策について精力的に協議した」と書かれています。

 しかしこの文章(仮訳)は、「日米安保条約」第6条の極東条項、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」に反しているとはいえないと思います。

 もちろん方向性としては、日本が世界平和に積極的な役割を担う方向に向かっており、「事実上の」安保条約の改定といえないことはないことも、たしかだとは思いますが、

 「日米同盟:未来のための変革と再編(仮訳)」を読むかぎりでは、自衛隊が海外に出ていく義務は負っていない (法的に強要されない) と考えられます。また、現に日本はインド洋での給油活動を中止しており、海外に出ていく義務は負っていない (法的に強要されない) 、と考えてよいのではないでしょうか。

 また、(引用文中の) 孫崎亨さんのように「(対中防衛のために) 日本が防衛力を強化することを否定する」人であればともかく、日本も普通の国家となり防衛力を高めるべきであると考える私のような者が見れば、「事実上の」安保条約の改定は「よいこと」であり、かりに「事実上」日米同盟が終わっているとしても、それは「発展的解消」であって「よいこと」ではないかと思います。

 これはつまり、内閣法制局が集団的自衛権は「憲法解釈として行使できない」という見解を示しているなかで、法的に (ギリギリ) 可能な、現実的な選択を政治が行ってきたということではないでしょうか。

 とくに問題視する必要はないと思います。
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