宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

序論・ホーキング放射のメカニズム

2023-01-29 12:05:49 | 日記
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2020/2/26 0:23 | 最終変更
 
 
"ホーキング放射の簡略な説明はうぃき
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB
「ブラックホール」の蒸発の項目にあります。

"そして、簡略かつ詳細な説明は「ホーキング輻射って正しいんですか?」のベストアンサーではない3番目のpis***さんの説明、
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1120574466
「ホーキング輻射は正しいと思いますが、正しくない説明を見かけます。・・・」
が良さそうです。"
(Or http://archive.fo/oU4CT )

その中でBHから出てくる(様に見える)粒子についての言及があります。
『ブラックホール近辺から、あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が放出されるのが見えます。
これがホーキング輻射です。
(引用注:ここでのhはプランク定数を2πで割ったもの。RはRs、シュワルツシルト半径)
このとき、どういう粒子が出てくるかは、たとえば
Particle emission rates from a black hole; Massless particles from an uncharged non-rotating hole
Don N. Page
Phys. Rev. D 13 P.198 (1976)
によれば、ニュートリノ:81%、光子:17%、重力子:2% となっています。』

そうして、このホーキング放射の説明のポイントはここです。

『この結果、生成消滅演算子も、空間が平らでないと、形を変えます。
空間が曲がっているときの消滅演算子をa'とすると
a'=αa-βa†
というように、ボゴリューボフ変換で結ばれます。』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%95%E5%A4%89%E6%8F%9B
「ボゴリューボフ変換」、難しい言葉ですねえ。
しかしどうやらこれがホーキングさんがBHのホライズン近傍の重力場についてやった事のポイントの様です。

その結果、BHから離れた所から見ているとBHのホライズンで仮想粒子のペアが発生し、その半分がBHに落ち込む事で
『あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が』BHのホライズンで生成されている様に見えると言う訳です。
これはBHの存在によって空間が曲げられた効果の結果であり、BHの存在が原因でその結果として粒子の放出が観測される、と言う事になります。

以上の説明がホーキング放射の説明としては良さそうですが、この方の説明の最後の部分、エネルギーバランスについての説明には少々疑問が残ります。


さて「ホーキングさんが考えたこと・1」で取り上げた質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホール、シュワルツシルト半径Rsが2.57*10^-16 (m)をまずはプランクレベルまで「蒸発」させなくてはいけません。
そしてここはニュートリノ君にがんばってもらう事としましょう。

このBHの温度を計算しましょう。
T=h*C^3/(8*pi*kB*G*M)   
(注:ここでのhはプランク定数を2πで割ったもの)
諸式に定数をいれて質量Mの関数としてT=0.1227*10^(+24)/M(ケルビン)とこうなります。

Mに1.73*10^11(Kg)を入れるとT=7.09*10^11(K)
709000000000度=7090億度、まあ大したことはありませんね。
ちなみに
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~kazu/class_2010/par_phys_101014.pdf
LHCでの陽子加速後の粒子温度は7TeV = 70,000,000,000,000,000 eV= 7京 ℃=7X10^16度です。


さて、この温度でのプランク則によるピーク波長(光換算)はλ=H*C/(4.97*k*T)。
よってこの光子の振動数SはS=C/λ=(4.97*k*T)/H。
エネルギーはE=H*SよりE=(4.97*k*T)(ジュール)
E=M*C^2よりM=(4.97*k*T)/C^2

そう言う訳で、質量換算でM=(7.63*10^-40)*T(Kg)の全エネルギーを持つ粒子の放出が一番多いとそう言う事になります。
今の場合はT=7.09*10^11(K)ですから5.41*10^-28(Kg)という全エネルギーをもつ粒子の放射が一番多い事になります。
それはつまりBHにしてみればこの粒子ひとつを放出するたびに、5.41*10^-28(Kg)というエネルギーでBHの質量が減っていく、そういうことになります。

そしてニュートリノで考えていますので、BHから出てくる(様に見える)一個のニュートリノの静止質量Moと運動エネルギーEkの合計が5.41*10^-28(Kg)になると、そう言う事でもあります。

ちなみに参考までに電子と陽子/中性子の質量を掲げておきます。
電子      9.11*10^-31(Kg)
陽子/中性子  1.67*10^-27(Kg)

このBHの放出するニュートリノのエネルギースペクトルのなかで、一番数が多い、と言う意味でのこのBHにとっては典型的なニュートリノになる訳ですが、その一個が持つ全エネルギーの換算質量が5.41*10^-28(Kg)ですが、それが陽子/中性子の質量の約3分の1と言う事で、相当に重くなっている、つまりほとんど光速で飛び出している、ということがこれによって分かります。

そうして、こうしたプロセスによって質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールが質量ゼロになるのに宇宙年齢程の時間が必要になる、というのが皆さんの計算結果でした。


さてこのBHのホライズンの表面積SはS=4*Pi*Rs^2ですが、その上にプランク長さLpを直径とした円がいくつ取れるか計算しましょう。
その最大値はRs^2/(Lp/2)^2程度になると予想でき、その値は1.00*10^+39個ほどです。

これは何を計算したのか、といいますと、ニュートリノの大きさをプランク長さ程度とした時に、一度にどれぐらいの数のニュートリノがホライズン上に存在できるのか、という数字になります。
そうして、これほどの数のニュートリノがホライズン上に存在できるのであれば、なるほど今のこのサイズのBHであれば統計力学を適用する事が妥当であろうと、そう言う事になります。

しかしながらプランク質量程のBHのRsは2*Lpでありますから、さてその場合はRs^2/(Lp/2)^2は16個、たかだか16個のニュートリノの集団に対して統計力学をそのままあてはめて使うのは、これは妥当とは思えないのであります。

これがプランク質量のBHについては、まずは考慮されなくてはいけない一つ目の問題です。
連続的に質量が減っていくのではなく、離散的に、確率的にしか質量は減っていかない、そういう状況になります。

以上は従来から皆さんがおやりになっているBHの寿命計算のやり方への批判になります。
離散的、確率的になる状況をつかむには代数計算では無理で、数値計算によるシミュレーションが必要になると思われます。
(プランク単位系については
http://eman-physics.net/dynamics/planck_unit.html
EMAN物理のプランク単位系を参照願います。)


二つ目の問題は、いつまでニュートリノがこのBHに飛び込めるか、と言う事です。
BHの半径が2Lp程度であればたしかにLpの大きさの粒子は中に入れそうですが、BHの半径がLpになった時にはどうか、さらにはLp/2になったら、これはもはやどの粒子もこのBHの中には入れそうもありません。
そしてそのBHの質量(重量)はMp/4となります。

そうであれば半径がLp/2以下のBHはそれ以上蒸発する事は出来ない、そのように考える事ができそうです。
そうして、その事が「プランクスケールのBHが蒸発して消え去る事は出来ない」という主張に結びつくのでありました。

PS
BH蒸発についての良い説明が見つかりましたのでご参考までに載せておきます。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1415526224
ブラックホールが蒸発するとはどういうことですか?
(Or http://archive.fo/raDU0 )

追伸
せっかくですから載せておきます。(2020/2/26)
「宇宙のダークマター直接探索の現状」
https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/2020/02/75-02_068interdisciplinary.pdf

物理というのは最後は実物勝負ですから、実に楽しみな事であります。
 
 
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