宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・29・膨張宇宙とハッブルパラメータ

2019-06-11 04:45:37 | 日記
膨張する宇宙、といえばハッブル定数であります。
そういうわけで、前回の続きとしてハッブルパラメータの話が続きます。

ハッブル定数Hoを式で表すと観測された銀河の後退速度をVとして、その銀河までの距離rで割ってHo=V/rとなります。

このハッブルパラメータH(t)は定義によって
H(t)=V(t)/r(t)=(t)/a(t)

さてそうなりますと、前回示した「宇宙の膨張曲線」、以下に再提示しますが、そのカーブのt=0でa(0)=1での接線の傾きが(0)であり、従って
Ho=(0)/a(0)=(0)/1=(0)と言う事になります。
つまりt=0 ではそこでの接線の傾きがHoになっている、そう言う事になります。

以下、前ページの再掲示。
さてこのa(t)をつかって宇宙の膨張の様子を示したグラフがあります。

宇宙の未来について(5)スケール因子の時間発展<--リンク(or http://archive.fo/Rmrex)

(5)では④の線(黄色)が現状認められている「再加速あり」の膨張曲線となります。
・・・・・

そうしてtがどの値であっても、その時のグラフの接線の傾きがその時(tという宇宙時間の時)の宇宙の後退速度を表す事になります。
それではその時(t という時)のH(t)はどうなりますか?
定義からH(t)=(t)/a(t) 。
したがってその時のグラフ接線の傾きをその時のa の値 a(t)で割ればよい事になります。
(但し後述しますがその事が成立する為には、そのグラフのt=0での傾きがHo=74km/sec/Mpcになっている事が必要であり、そうして通常はグラフはHo=1と規格化されて表示されているため、傾きの値は換算しなおす必要があります。)

さてそれで(5)の④の線(黄色)が現状認められている「再加速あり」の膨張曲線ですが、膨張スタート時には随分と膨張スピードが速いのですが、その後はほぼ安定して一定の後退速度で膨張していく、と言う事が分かります。
そうして、その時々でのaの値で(t)を割る事でその時のハッブルパラメータ(あるいはその時のハッブル定数)がきまるのですから、「宇宙が膨張するに従ってハッブル定数は小さくなる」と言う事が分かるのであります。
あるいは同じ事ですが「昔の方がハッブルパラメータは大きかった」という事が分かります。
ちなみにハッブル定数の「定数」という意味は「時間による変化はしない」ではなく「空間のどの場所でも同じ一定の値を示す」と言う意味での「定数」になります。


さてそう言う訳で宇宙の膨張グラフを作ること、がフリードマン方程式の結果でした。
そのグラフを作る式については「宇宙の未来について(1)」にてご確認願います。<--リンク
そして、その式の中にはハッブル定数Hoが入っていますが、グラフを作る時にはHoを1として計算していきます。
そうしてΩmとΩΛ、Ωmが物質密度項、ΩΛが宇宙項(あるいはダークエネルギー項)です。
空間の曲率が平坦な宇宙である事を前提に、この二つのパラメータを決めてやる事でグラフが描けます。

しかしそのままではHoは決まりません。
Hoを決めるにはt=0で1Mpc(3.26光年の100万倍の距離)をa(0)に代入し、ビッグバンから現在までに経過した時間 Toをa=0であるX軸上の点(ビックバンが始まった点)にマイナスToとして代入する事が必要です。
そうすることでいままでは傾きが1であったハッブル定数Hoが実際の数値を示す事になります。
以上の手順詳細につきましては4.宇宙論パラメータの決定」の48~50ページを参照願います。<--リンク
ちなみに以上の様にこのグラフを解釈しますと、このグラフの線は現時点で地球から1Mpcの距離にある座標点(あるいは銀河)がかつては地球からどのくらいの距離にあったか、そうして未来に至ってどのくらい離れるのかを示していることになり、その点の後退速度を地球からの距離で割る事でその時のハッブルパラメータが求められる、という事になります。(注1)


そうして、それらのパラメータを宇宙背景放射(CMB)のデータから決める事ができる、と主張するのが以下の記事になります。
プランクの最終版CMBデータ公開<--リンク(or http://archive.fo/jOa8O)

それに対して実際に銀河の後退速度とその銀河までの距離を測定する事でHoを決めようじゃないか、というのが以下の記事になります。
ケフェイド変光星の距離改良で導かれたハッブル定数の不一致<--リンク(or http://archive.fo/3gr21)


こうしてお互いに一歩も譲らない2つの陣営が存在する、というのが現状のハッブル定数Hoの状況なのでありました。

(注1):宇宙の大きさについて
我々が見ることが出来る、一番遠い宇宙の端は「我々から光速で遠ざかっている所」になります。
ここで「見る」と言っても「宇宙が誕生してから37万年間はプラズマの雲におおわれて」光では見通せません。
ですから「光(電磁波)以外で見る事」を前提とした話です。
さてそれで、その点をt=0でのa(0)が示している、とします。
そうしますと、その時のグラフの傾きは、上記前提から光速Cという事になります。
これは、そこの点の傾きが光速になるようにa(0)の値を決める、という事ですね。

そのように上記グラフを読み替える事で、ハッブル定数を求める事ができたグラフが今度は「現在の宇宙の大きさを示すグラフ」に変わってしまいます。
そうでありますから、このフリードマングラフは「とても使い出があるグラフである」という事になります。
ちなみにそこで求めた点が何時の時代においても常に「見ることが出来る宇宙の端」であったかどうかは「定かな事」にはなりません。
これは、宇宙の膨張が「減速したり」「加速したり」しているからであります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/vMPoy

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