記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

度重なる水害と博多祗園山笠と地域の関係。

2007年07月07日 12時33分12秒 | 博多部
 九州はずっと豪雨続き、自宅前の御笠川の水位が気になる日々である。
1999年6月29日、2003年7月19日と、ここ8年間に2度氾濫した川で
ある。ちょうど4年間隔、今年あたりまた?との危機感もひとしおだ。

 4年前は夜中中、水位を警戒し消防団を中心に見まわりを置いたが、雨
が小康状態となった明け方、5時を過ぎて各人が自宅へ休憩に帰った間に、
上流の太宰府市で1時間に100mmを超える豪雨が降り、一気に濁流が
川下へ流れてあっという間に周囲は濁流で溢れた。

 マンションも立体駐車場の地下が水没、玄関には亀やサンショウウオま
で流れ着き(笑)、泥だらけになったマンションや地域が元通りになるま
で大変だった。この期のマンションの管理組合理事長だった私は、任期あ
と1週間のところで、最後の大仕事がこの水害処理となった。水害で救済
を受けたのは戸建て住宅で、マンションなどの集合住宅は何も救済が無く
駐車場をはじめとする修繕費は組合の積立金から全額支出する他なかった。

 4年前の水害時、99年の水害を踏まえて川幅は2倍に拡張されており、
まさか再度溢れるとは思わなかった。今回も当時の状況を踏まえ、川添い
は50cmほどコンクリートで堤をかさ上げし、さらに川底が2m掘削さ
れており、さらに複数の調整池が流域に造られている。これが完成した昨
年は相当の雨量があっても川の水位は思ったよりも上がらなくなっている。
昨日も相当の雨量があったが、以前のような水位上昇は見られない。

 前回の水害時は早朝で皆が睡眠中だったこともあり、集合住宅の人々の
多くが川の氾濫に気付かなかった。市の広報車などは一帯の水没で立ち往
生となり、遠くでアナウンスしても聞こえない。一歩間違うと避難が遅れ
より大きな災害となった可能性もある。川が溢れたのは午前5時30分過
ぎ、広報車が廻ってきたのは水が引いた午後1時頃であった(笑)。

 福岡市民はずっと「水」との闘いを強いられてきた。市140万、周辺
250万の人口を支える一級河川を持たず、度々渇水に見舞われている。
さらに古来より水害が多く、特に御笠川流域の地名は「潟洲(かたす)」
「堅粕(潟洲の変形)」「上牟田(牟田は湿地)」など古来から水に関係
する災害が多かったことが伺えるものである。

 御笠川(博多部では石堂川)はもともと比恵川と呼ばれ、現博多駅と承
天禅寺の間から住吉神社と中洲の間の那珂川へ急カーブを描いて流れてい
た。戦国時代に今のように博多湾に直接流れるよう川の流れを人工的に変
えたものである。昔の比恵川の名残は、博多区役所前からキャナルシティ
博多周辺の道路。あのあたりの道路の多くは地下に未だ水路が流れ、その
上に蓋をして道路を拡張している。

 水害が起こる時期はいつも博多祗園山笠の活動期間である。そのため、
昭和28年の福岡大水害をはじめ、水害のたびに各流の参加者が水害地の
復興作業や築堤の復旧作業などに、数千人規模の応援を行ってきた。地域
が今に至るまで山笠を支援する、山笠を一番に考える理由のひとつがこの
奉仕の精神である。

 福岡市は全国でも集合住宅の居住率がトップだそうだ。一軒家住まいの
方の比率が最も低い市とのこと。そのため、地域住民も便利なマンション
暮らしで博多部に住む方も増加中。山笠を知らない新しい地域住民の中に
は、早朝に流の男衆が法被姿で集まって掛け声を出す様子に驚き、怪しい
集まりだと思って警察に通報する人もいるそうで、各流の参加者達は新し
いマンション等に説明チラシを配布する等、昔では考えられなかった新た
な対応に苦慮しているそうだ。

 山笠の歴史は様々な本にも詳しいが、地域との結びつきなどを知ると、
さらに山笠を楽しめると思う。ひとつ一つの行事、参加する男衆、そして
それを見守る地域。永い伝統の中で培われてきた絆が山笠である。

今日の写真は2003年7月19日早朝に氾濫した御笠川の写真。
百年橋通り比恵大橋付近。この下には地下鉄空港線が通り、橋の50m
東には地下鉄駅もある。東側は博多駅側。

東光地区の水害史は「東光おもしろマップ」でも紹介
御笠川と共存・水害史
http://www.asocie.jp/tokomap/fudoki/river.html

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