小さな日記

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憂い

2010年01月18日 | 音楽
Scott Walker interview


2007年にイギリスで製作発売されていたスコット・ウォーカー「30世紀の男」。スコットを賛美する人々のコメント、スコット自身のインタビューなどによるドキュメンタリーだ。ようやく、日本版DVDが1月15日発売となり、予約していたわたしにも届いた。

アメリカ人のスコットがブレイクしたのは、ロンドンに渡ってからだった。それをこのDVDでは、スコットの声の憂いと、イギリスの街、風土とマッチしていたからと分析する。子どものころ、何の予備知識もなく、登校直前にテレビから放出された「in my room」という低い声は、わたしに突き刺さり、半世紀近くも共にいる。理屈をこねても意味はないけれど、「憂い」という言葉は、わたしが惹かれた理由にぴったりすると思った。

他の少年少女合唱団の声や、子どもの歌を歌う大人の声が嫌いなのに、西六郷少年合唱団だけ好きだったのも、「憂い」を含んでいたからだ。

今は、なるべく、嫌いと認識するものは減らそうとしているけれど、「憂い」のある声、音が好きなのに変わりない。近頃は、長唄もすごくときめく。
なぜかというと、憂いがない音、声には、嘘を感じるからだと思う。どんなに明るい歌、音楽にも、「憂い」の影があってこそ、真実を感じてしまう。

「憂い」は、悲しみではなく、根源的哀しみであって、静けさだ。ひとの奥深くある静けさが聞こえる音楽が好きなのだ。

スコットは、この1月9日で67歳になった。ちょっと頬が赤らんでいるので、高血圧なのかしらと心配だけれど、自分の道を進んで、自信に満ちているのが見れて、とても嬉しい。彼を好きになってよかった。

『スコット・ウォーカー 30世紀の男』予告編