八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚112

2022-01-31 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

絹のような手触りの黒髪と、お互いに際立たせる為にあるような白い首筋。

呼吸のたびに微かに上下する胸。

ジャケットを着ていてもわかる、ウエストの細さ。

白くて細い脚。

 

俺は無防備にソファーで横になっている牧野の姿を目で楽しんだ。

そして、俺は牧野に覆いかぶさった。

 

「イヤ!」

「ちょっと!どいてよっ!」

「なによっ!バカっ!」

「もう、なに考えてるの?」

こんなことを言うバカでかい牧野の声が、直ぐに聞こえてくるのを予測していた。

 

いや、牧野のことだからスゲー力で殴ってくるか?

足蹴りも覚悟しておいた方が良いかもしんねー。

 

滋の報道以来、俺の中で燻っていた思い。

俺を見ろ!少しくらい妬けよ!

俺の気持ちに気付け!!

 

いつまでも出会えるかどうかわからねー、教師を追い求めんじゃねーよ。

こんなに俺が想っているのに、なんで全く気付かねーんだよ?

どこまで鈍感なんだよ?

 

俺が覆いかぶさったのに全く無抵抗な牧野。

不思議に思うと…。

 

牧野は小さい寝息を立てて、幸せそうに寝ていた。

俺が覆いかぶさっているとも知らねーでスヤスヤ寝ていた。

 

俺が初めて見る、牧野の寝顔。

すげー可愛い。

学生くらいに見える顔が、ますます幼く見える。

 

鈍感、依然の問題だ。

男と住んでいるんだぞ!

無防備すぎねーか?

 

・・・・・。

それとも、こいつは俺のことを男として意識すらしてねーのか?

俺はお前が好きだから、大切だから我慢しているんだぞ!

これがどれだけ大変なことかわかっているのか?

 

この時、牧野は俺の腕に頬を寄せてきた。

俺の全身がカッとなる。

そんなことも全く知らねーで、少しだけ笑っているかのような寝顔。

 

俺の腕に、牧野は甘えるかのように頬ずりしてきた。

牧野の柔らかい頬が、サラサラな髪が俺の腕をくすぐった。

そして、もっと柔らかい牧野の唇が俺の腕に触れた。

 

おいっ!

いくら寝てるからってそれはねーだろっ!

牧野が寝ていることも、無意識でしているってことも嫌なほど理解している。

 

我慢だ、俺。

我慢、我慢、がまん。

がまん、がまんがまんがまんがマンガ!?

 

我慢じゃだダメだ。

理性だ、俺。

理性、理性、りせい。

りせい、りせいりせいりせいりせいり、整理!?

 

何考えてんだ?俺は…。

我慢と理性はどこに行ったんだ?

 

俺は大きく息を吐き出し、牧野を抱きかかえた。

あの日も思ったが、こいつって軽いよな。

あんなに食っているのに、なんでこんなに軽いんだ?

 

牧野に覆いかぶさった時─────。

あの時の俺は、嫉妬からこいつを無茶苦茶にしたかった。

 

正直あの一瞬は、学生時代に荒れていた時の俺が戻ってきたような感覚になった。

でも、こいつが俺の腕に頬ずりしてきた瞬間にそれが静まった。

薄まったと同時に、愛おしいとか大切にしてーって思いが出てきた。

 

守ってやりてーとか、俺より大切にしたいって思い。

誰にも渡さねー。

天草にも織部にも、他の誰にも絶対に渡さねー。

 

静かに大切に、軽すぎる牧野を俺のベッドに下した。

俺は牧野が気になって、空調なんて全く気にしていなかった。

 

が、アルコールで温まった牧野の体に肌寒く感じたのか、ベッドで小さくなった。

その牧野の隣に、俺は素早く潜りこんだ。

 

俺の体温が良かったのか?掛けたシーツに安心したのか、牧野は小さくしていた体を元に戻した。

俺は牧野の頭の下に、自分の腕を通す。

俺の人生初の腕枕。

そして、もう片方の腕を牧野の腰に回した。

 

俺はこいつの部屋に勝手に入るのは禁止されているから、仕方なく俺の部屋のベッドに運んだんだ。

あのままソファーで寝てしまったら、こいつが風邪を引いてしまうだろ。

こんなことを頭の片隅で思いながらも…だな。

 

健全な成人男性としては、好きな女と同じベッドにいるんだ。

イロイロしてーって思う。

 

でも、それは思いが通じた時だ。

俺はスゲー我慢してんだから、一緒に寝るくらい許せよ。

 

これが、スゲー難しいことだった。

牧野は時々「ぅん…。」って言いながら、吐息をはく。

 

これが俺の胸元をくすぐる。

ここまでは、下半身に緊張が走ったが耐えることが出来た。

理性だ、俺。

 

しばらくすると、俺と牧野の間にあったはずの牧野の腕が動き出した。

無意識だろーが、牧野は俺の背中に腕を回してきた。

これにより、俺と牧野の距離が縮まる。

 

!!

牧野の柔らかい胸が、俺の胸に押し当てられる。

 

と、同時に

ズンっ!!

俺の下半身にますますの緊張が走る。

 

理性、理性だぞ、俺。

生理でも整理でも無いぞ、俺。

 

好きな女を抱き締めて寝るって、こんなに大変なことなのか?

どうやって寝るんだよ?

寝る自信がねー。

 

俺の思いとは裏腹に、俺の胸の中で牧野は安心したように眠っている。

そんな牧野に俺は、触れるか触ねーかくらいのキスをした。

 

俺がこいつの─────。

未来の本当の旦那になることを祈りながら。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。


本日18時に昨年のお話ですが、司くんの誕生日の話をアップします。

お暇な時にでもお読みください。