八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

Redoing Love6

2024-04-17 23:42:09 | Redoing Love

 

 

急いで乗り込んだ電車は、満員電車だった。

扉が閉まる。

 

ぼんやり窓の外の景色を眺めていたら─────。

扉の窓ガラスに写っている自分の顔に驚いた。

 

酷い顔。

あたしって、こんなに酷い顔をしていたんだ…。

 

まだ高校生なのに、こんなに疲れた顔だったんだ。

天真爛漫の海ちゃんと比べると…。

道明寺じゃなくても、男の人なら誰でも、あたしじゃなく海ちゃんを選ぶ。

 

道明寺の香りを思い出した瞬間─────。

窓ガラスに写っているあたしの頬に、涙が伝いだした。

周りの人に気付かれないように、そっと涙を拭った。

 

無意識のうちに電車を降り、家まで歩いていた。

気付くと、あたしは家の前にいた。

 

深く深呼吸して、鍵を開ける。

そして、いつものように

「ただいまっ。」

って、元気に玄関のドアを開けた。

 

「姉ちゃん、おかえり。ご飯だけセットしといたよ。」

進の声に、ホッとした。

 

いつものように夜ご飯を用意して、どうでもいい会話をしながら進と2人で食べる。

進の声と笑顔、あたしの目の前にいるってことが、

今のあたしのささくれた心を、少しだけ癒してくれた。

 

食べ終わった後、あたしは自分の部屋に入った。

入った途端、出てしまう大きな溜息。

心が疲れている時は、体もすごく疲れるんだ。

 

それでも、あたしは、タンスの中からあるものを取りだした。

土星のネックレス、初めてのデートの時のホームランボール。

魔女から預かったウサギのぬいぐるみ。

 

これらの道明寺との思い出の品を、小さな紙袋にまとめた。

 

翌朝。

1時間目のホームルームをサボったあたしは、類に紙袋を託した。

 

類は、一瞬、納得してなさそうな顔をしたけど、何も言わず受け取ってくれた。

 

でも、受け取ってくれた後で、

「司に伝言は?」

って、類は聞いていた。

 

この類の言葉に、あたしは手紙すら書いてないことに気が付いた。

でも…、それでいい。

その方が良い。

 

終わった恋の相手からの手紙なんて、重いはず。

それに、道明寺には海ちゃんがいるんだ。

 

「ううん。何もない。」

「わかった。」

 

これだけの会話で、道明寺とあたしの思い出は、あたしの手許から離れていった。

 

そう…。

こうして忘れていくんだ。

 

時間に癒してもらえなくても…。

乗り越えられなくても、いつか、きっと懐かしいと思う日が来る。



それから、しばらくして─────。

道明寺が、再び学校に登校するようになった。

 

道明寺と付き合っていたことを、オープンにはしていなかったけど…。

いつの間にか、あたしは

『道明寺司に捨てられた女。』

『道明寺様に捨てられた庶民。』

なんて、呼ばれるようになって、好奇な目線で見られるようになっていた。

 

このことを心配してくれたからなのか─────。

あたしのそばには、桜子かF3の誰かがいるようになった。

 

休み時間、昼休み、登下校時は、常に誰かが付いていてくれた。

何度も「あたしは大丈夫。」って言ったんだけど、受け入れてもらえなかった。

 

あたしは知らないけど…。

道明寺は毎日、登校しているらしい。

 

ある日、美作さんに、

「あたしは一人でも大丈夫だから、道明寺といてあげて…。あいつ、友達なんて、美作さん達しかいないしさっ。」

って、軽く言ってみたんだけど…。

 

優しく笑った美作さんは、

「そんなこと、牧野が気にしなくていい。たまには、牧野も甘えるくらいしろよ。」

あたしの髪をクシャってしながら言ってきた。

 

美作さんの大きな手が、あたしの髪に触れた時─────。

道明寺も大きな手で、あたしの髪をクシャってしてきたのを思い出した。

クシャクシャって何度もするから、鳥巣みたいになって…。

 

って!!

なんで、道明寺のことなんて思い出しているの?

 

ストップ!

道明寺のことは考えない。

 

終わってしまった恋に、いつまでもしがみつきたくない。

それに、道明寺には海ちゃんがいる。

何度も願った奇跡は、起こらなかったでしょ。

こんなことを、呪文のように心で唱えた。

 

傷付いたあたしの心が、元の状態に戻ることは無いけど…。

なんとかあたしは、それなりに日々の生活を送れていた。

 

そんな、金曜日の下校時。

いつものように、桜子と校門まで歩いていると─────。

 

「スッゲー。」

「似ているわっ。キャー!こっち見た。」

「ご親戚の方かしら?」

 

校門前が、やけに騒がしい。

完全に人混みが出来上がっている。

 

よく見ると、西門さんや美作さんまでいる。

何があったの?

 

こんなに騒ぐなんて、道明寺でもいるの?

ギュッて、鷲掴みにされたようになるあたしの心臓。

 

いやだ。

会いたくない。

 

「牧野、指名だ。」

この西門さんの一言で

校門前の人たちが、一斉にあたしを振り返った。

 

西門さんっ!

時と場合を考えてよっ。

 

人混みをかき分けるように、桜子と校門の外に出ると─────。

そこには、道明寺そっくりな亜門がいた。




お読みいただきありがとうございます。

 

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (きな粉)
2024-04-18 14:11:40
いよいよ、亜門君登場ですか・・・
二人での会話は、とても悲しい気持ちになったのを覚えています。
つくしちゃんの心の悲鳴と限界に達した諦めを感じて、私もとても切なくなったのを記憶しています。亜門君の言葉も沁みました(笑)
更新有り難うございます

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。