八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚82

2022-01-01 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

〜総二郎side〜

 

俺たちは、牧野つくしって女に出会う。

第一印象は、どこにでもいるような女。

 

人妻の雰囲気は全くなく、まだ学生って言っても納得できるような幼さのある女。

つくしちゃんは、残念なことに胸と尻が無かった。

俺的には、出るところが出ている女の方がタイプだ。

 

そんなつくしちゃんは、司の嫁だってことを一切認めなかった。

つくしちゃんが司の嫁ってことを否定しているのかは、俺たちには全く分からなかった。

フツーで考えると、司の嫁にステータスを感じそうだろ。

 

つくしちゃんは完全に隠しているのに、ある日、司が花嫁修業に付いてきた。

いや、ついてきたんじゃなく、司はつくしちゃんを待ち伏せした。

 

お蔭で、俺たちは腹の底から笑えた。

俺がつくしちゃんに指導していると、司がスゲー顔をして睨んでくるんだ。

 

『近寄るなー』オーラ全開。

初めて見る司の独占欲に、俺たちはひたすら笑うのを我慢することになった。

俺たちが笑うのを我慢しているのに気付いている司は、バツが悪そうだった。

 

一番驚いたのが、司がつくしちゃんを見る目がスゲー優しいところだ。。

恋をしたことなかった男が、恋をして結婚したんだからスゲーだろ。

 

俺がこんなことを考えていると、あきらと類が同時にラウンジの個室へ入ってきた。

俺たち三人が集まると、おのずと司とつくしちゃんの話になる。

結婚願望が無かった司が、結婚という名の墓場に自ら入ったんだぞ!

 

俺は、笑いながらこいつらにこう言った。

「司とつくしちゃん。どこで出会って、どんな風にプロポーズしたんだろうな?」

 

「気になるよな。」

エアゴルフをしていたあきらが答えた。

 

「司、変わってきたよ。」

窓からの景色を楽しんでいた類が俺たちを見て言ってきた。

 

類の言葉に、俺とあきらは頷いた。

あのどうしようもなかった司が、マジで変わってきていた。

 

仕事なんて全くしていなかった司が、急に仕事をするようになった。

週休2日制+祝祭日を貫いていた司が休日出勤をするようになった。

あんなにのめり込んでいたゴルフですら、来ねーようになった。

今日の月例杯も無理に来るようにさせたくらいだ。

 

「俺、高校の事なんて忘れてた。」

コーヒーを飲みながら類が言ってきた。

 

類の言葉に頷く。

俺も忘れていた。

 

「ビビったよ。俺も、完全に忘れてた。」

俺より悪いって気持ちを持っているらしいあきらが、すまなさそうにこう言った。

 

俺たちが完全に忘れていたこと。

それをある日、仕事で集まった時に司が言ってきたんだ。

「俺、高校の時に赤札を貼った奴らに謝罪する。」

司のこの言葉を聞いた時、俺たちは頭が真っ白になった。

 

俺たちは学生時代、赤札っつーのを貼ってイジメのターゲットにしていた。

全身打撲は当り前。骨折させた奴も、救急搬送にした奴もいた。

俺たちは、赤札を貼った奴らを退学するまで追い込んだ。

あの当時は、そんなバカげたことをして鬱憤を晴らしていたんだ。

 

俺たちの家は、金持ちで世間一般的には恵まれた家だったんだろう。

でも、それは経済的な面だけで────。

高校生の時には、親の用意したレールが見え出した。

 

いや、ガキの頃からか?

産まれた時点で就職先が決まっているなんて異常だろ。

そして、大学を卒業してしばらくすると待っている…。

少しでも条件の良い家との結婚。

 

俺たちは、そんな決められたレールを進むのが嫌でムシャクシャしていた。

年の変わらねー奴が自由にしているのにイライラした。

 

ムカついていたんだ。

自由にできる奴らを。

 

俺たちの表面上の自由じゃなく、本当の意味での自由。

叶う、叶わないを別にして、夢や好きな事に挑戦できる奴らを…。

 

司が高校を卒業と同時にニューヨークへ行き、俺たちも英徳の大学部へ入学した頃にはスッカリ忘れてしまっていた。

その俺たちが忘れたことを、司が急に謝罪するって言いだしたんだ。

 

「司、マジで変わったな。仕事をするようになるとかな。」

エアゴルフの動きをやめ、ソファーに座りながらあきらが言った。

 

「つくしちゃんのお蔭か?」

「あいつ、花嫁修業にまで付いてくるくらいだからな。べた惚れ?」

あきらの言葉に、俺も笑いながら話した。

 

「司でも、あんな顔するんだな。」

あきらが時計を気にしながら、言ってきた。

 

「優しい顔であの子を見てたよ。」

類の言葉に、俺とあきらは無言で頷いた。

ここで、終わったら大人になった俺たちの会話だった。

 

が、成人しても俺たちは変わらねー。

「でも、俺、睨まれたんだよね。」

類の言葉。

 

俺とあきらの声が重なる。

「「それなっ!!」」

 

「司、『近づくなー!』って顔してたよな。威嚇だよな。」

あきらがふき出しながら言ってきた。

 

「あの日、俺が教える日だったからか?司の目からビームだったぞ!」

「わかる!背中からビリビリ来たよな。」

俺の言葉に、あきらが同意した。

 

「「じゃ、今日は司で楽しみますか?」」

俺とあきらの声が重なった。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。


あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い致します。