2021.12.25
朝ご飯を道明寺と二人で、ダイニングで食べていると、西田さんが道明寺を迎えに来てくれた。
わざわざ西田さんがお迎えに来てくれたっていうのに、道明寺は悪態つき放題。
「西田!お前、今日が何の日が知っているのか?」
「今日は、2021年12月25日土曜日ですね。」
いつものような二人の会話が始まった。
「クリスマスだぞっ!しかも、それも土曜だっつーのに、なんで俺だけ仕事なんだよ。」
すごく嫌そうな道明寺の声に、なんとなく可哀想だなって思ってしまう。
でも、西田さんは、そんな道明寺に慣れているみたい。
「お言葉ですが、司様の仕事の為に、私まで出勤となっているのです。クリスマスで土曜日と言うのは、私が言いたい台詞です。」
なんて言い返されて────。
「しかも、道明寺家はクリスチャンではありません。お寺のような名字をして、なにがクリスマスですか?バカなことばかり言うのは、仕事中だけにして下さい。今は勤務時間外なので、私もそこまで付き合いきれません。」
なんてバッサリ言われてしまったの。
ププっ。
お寺のような名字だって(笑)
しかも、バカなことばかり言うのは、仕事中だけにしてって。
西田さんって、なんであんなことをいつもの表情で言えるんだろ?
スゴすぎっ。
「あ?お寺のような名前?名字に《寺》が付いてるだけだろっ!そんな奴、日本にどれだけいると思ってんだー!しかも、バカなことばかり言うのは、仕事中だけってなんだ?あ?どういうことだ?」
道明寺が叫んだけど、西田さんは無視して玄関に向かって歩き出した。
そんな西田さんを追いかけている、道明寺の叫び声がダイニングまで聞こえてくる。
「西田っ、無視するんじゃねー!俺の言うことを聞けっ!服従しろっ!!」
道明寺と西田さんが出て行った瞬間、急に静かになったダイニング。
あの二人って、いつもあんな感じなのかな?
しかも、道明寺、西田さんに『服従しろ』なんて言ってたけど。
あの西田さんに、あんなこと言えるのって道明寺くらいじゃないのかな。
私は、メイドさん達にお礼を伝えてお邸を出た。
会長や社長、お姉さんはそれぞれ朝早くから用事で、お礼は言えなかった。
道明寺にとって、それは普通のことみたいだったけど…。
家族なのに、誰がいつ家にいるかどうかがわからないっていうのは少し寂しいんじゃないのかな…なんて思ってしまった。
運転手さんが、何度も
「お送りします。」
なんて言ってくれたんだけど、それは断った。
私は今から…。
延び延びになっていたことを、今日中にしようと決めていたから。
本当はしたくないし、避けて通れるならそうしたい。
でも、それは人としてしてはいけないことだ。
スマホをタップして電話を掛ける。
trrrr…
緊張してきた。
「はい。」
いつもより少し強張っているように聞こえる、天草主任の声。
そして、私の声も緊張で強張っているはず。
「牧野です。急で申し訳ないのですが、今日、大丈夫ならお時間を少しいただけませんか?」
晴れて牧野と夫婦になれたっつーのに、なんで俺は西田と仕事なんだ?
ジト目で睨んでも、悪態ついても、西田には全く効かねー。
「さ、今日の仕事です。帰宅したくてたまらない司様なら、このくらい一瞬ですかね。」
こんなことを言いながら、仕事の指示をしてくる西田。
なにが、一瞬なんだよっ!
いつもの倍近くあるじゃねーかっ!
っつーか…。
今、西田はなんつった?
帰宅してたまらないって言わなかったか?
「西田、気付いたのか?」
「何がでしょう?」
「俺と…。だな。」
俺は言葉に詰まった。
『俺とつくし』と言いたいところだが…。
まだ一度も、牧野のことを名前で呼んだことがねー俺。
想いが通じた今もお互い名字呼びっつーのも、問題だ。
「司様と牧野さんのことですね。牧野様と呼ばせてもらった方がよろしいですか?つくし様の方がよろしいですか?」
「・・・・・。」
俺は、西田の質問に即答できなかった。
嫌なことを聞いてくる奴だ。
道明寺つくしのあいつを、牧野様呼びなんて絶対にダメだ。
だからと言って、俺がつくし呼びをしてねーのに、西田につくし様なんて呼ばせるなんて以ての外だろ?
俺がこんなことを考えていると────。
「どうなるのかと思っていましたが…。あと一カ月ありますし、どうなるかはわかりませんね。」
なんてことを西田が言い出した。
あ?
あと一カ月ある?
どうなるかはわかんねーって!?
どういう意味だ?
「さぁ!牧野さんに見捨てられないように必死になって仕事をしてください!司様のスケジュールを管理しているのは、私です!お分りですか?」
西田は、こんな恐ろしいことを言い出した。
だから、お前は鬼なんだよっ!
「いつも、いつも、司様の心の中で、私は『鬼』と呼ばれているようなので、正真正銘の鬼になってみるのも良いかと思っています。」
こんなことを気持ちわりぃ笑顔で言ってくる西田。
なんで俺が鬼って呼んでるのを知ってんだよっ!
これからは鬼以外で呼ぶと心に決め、悪党の目を掠め執務室から脱出し、久しぶりに社内をウロウロと歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
いつも応援をありがとうございます。
長い間、お休みしてしまいすみません。
まだ、最終話までは書けていませんが(書くのが遅くてすみません)
8月最終日より再開させてもらいたいなと思っています。
よろしくお願い致します。