八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚91

2022-01-10 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

2021.08

俺たちの契約も半年が過ぎた。

ヤバイ。マジでやべーだろ。

 

あいつ、スゲー鈍感だから仕方ねーのかもしれねーけど。

俺の気持ちに全く気付かない。

 

あいつの同窓会の日に一瞬、俺たち二人は今までにない雰囲気になった。

が、それも一瞬だけで終わってしまった。

不思議そうな顔をしていただけって、どうなんだよっ!

 

そんな時に、総二郎からメールが届く。

【つくしちゃんに着物の勉強を教えるぞ!】

【今は基礎知識詰め込んでいる。】

こんな文章で、ホッとしていると…。

 

【今度の土曜に初めて実技。最初は浴衣からの予定。女の和装姿っていいよな。お前も来るか?】

俺は西田に予定を聞きもしないで行くと決定した。

 

その間にも総二郎からどんどん送られてくるメッセージ。

【衣紋から見える白い首筋ってたまんねーよな。】

 

あ?なんだと。

俺の頭の中で、牧野の着物姿が浮かんでくる。

 

【つくしちゃんも色が白いから、大きく衿抜きしてもいいよな。】

俺の頭は、牧野の首筋でいっぱいになる。

 

【あの子、きめ細かそうな肌してっから楽しみ。】

俺の頭ん中は、牧野の白くてきめ細かそうな肌に支配される。

 

牧野の肌は俺のものだと判断思した俺は、総二郎に返信しようとする。

が、

【絶対に衿を抜くな。見るな。触るな。】

このたった20文字弱が打てねー。

怒りで指が定まらねー。

 

イライラしている時に届く総二郎からのメッセージ。

【浴衣って衿抜きしてもチョットなんだわ。残念。】

だった。

 

クソっ!

衿抜きの具合なんて俺には関係ねー。

総二郎が牧野の体を触ることが許されねー。

 

 

 

毎週土曜日、恒例のあの3人による勉強会。

今日は、西門さんが先生だけど美作さんの家に行くことになっている。

 

先週、美作さんが帰り際に

「珍獣が暴れると危険だろ。俺の家の方が良いんだよ。双子や母親がいるからな。わかるだろ?」

なんて言っていた。

 

なに、珍獣って。なんのこと?

西門さんは美作さんの話に大きく頷いて、その隣の花沢さんは笑っていた。

珍獣がなんのことだかわからないまま美作さんのお家に着く。

 

その時に、西門さんから言われたこと。

「これから着物の実技に入る。俺もある程度なら出来る。が、女の帯は難しい。」

こんなことを難しそうに言いだすから、私は筆記の勉強の時と同じようにメモを取り出した。

 

それなのに、「着物は脱がすのは簡単だ。」なんて言いだしたんだ。

私は思わず、道明寺が言っていた『悪徳代官』と『あっれー』を思い出した。

 

やばい。

私の思考が道明寺になってきたかも…。

 

「問題は脱がした後だ。スルことして、帰る時に着物や浴衣を着て帰れないだと困るだろ?」

西門さんは真面目くさって言っているけど。

 

スルことして?着て帰れないと困る?

って。あ、あ、あ、あれだよね。

なんで私の前でそんな話をするの?恥ずかしいっ。

 

「ホテルには着付け師もいる。」

へー、そうなんだ。

 

「でも、ここからが問題だ。」

なにが問題なの?着付け師さんがいたら安心じゃない。

 

それなのに、美作さんが横から同意した。

「わかる。帯な!」

帯?なんで帯?

 

西門さんは低い声で、同調したの。

「そうだ!帯が問題だ。」

 

「なにが問題なの?今さっきから、帯って。」

私の疑問に、西門さんと美作さんが話し出した。

 

「俺たちが盛っていた頃の話だ。」

「俺たちは、ヤルことしか頭になかった。」

西門さんと美作さんが話し出した。

 

「帯は、解いたら最後。どんな風に結んでいたかが問題だ。」

何の話?

 

「自分で結べる女ならいい。」

「一人暮らしの女も大丈夫だ。」

私の着付けの勉強にこの知識も必要なの?

 

「最悪なのが、母親に着付けてもらった女な。」

「それな!帰って母親に『帯の結び方が違うってバレて怒られてしまった。』とか言い出す奴な。」

えっ。なに、それ。

 

「俺、高校生の頃『真剣に付き合っています!』なんて謝りに行ったぜ。」

「俺も謝りに行ったらさ、そこの家。親が再婚とかで義理の母親がスゲー若くて綺麗だったから、義母の着物も脱がすようになったわ。」

なんて、こんな会話を始めた。

 

えっと。私の着付けのお勉強は?

メモ、必要ないじゃん!

この後も私はこの二人の会話に付き合わされた。

 

最後に西門さんが真面目くさった顔をしながら言ってきたの

「つくしちゃんも、着付けは最低限、覚えておくといい。将来、司との間に女の子が産まれた時。その子が年頃になった時に役立つ!《不純異性交遊》防止策に良いぞ。」

 

道明寺と私に女の子は産まれない。

って、問題はそこじゃなくって…。

 

将来、私の子供の帯が変わっていたらどうしたらいいの?

帯が変わっていた時点で疑わないといけないじゃないっ。

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。