前に「慣性の法則」について述べたが、実はごくまれに異状な事態が起きることがある。
地震、津波、台風などの自然災害とか、務めていた会社が突然倒産したとかそんな時だ。
巨大なエネルギーによって、慣性の法則が打ち破られてしまう。
昨日とは全く異なる今日の現実が、我々を襲うのだ。
流れの中に身を委ねていると、そういった突然の変化に対応できないことになる。
先日、仙台地裁で一つの判決が出た。
東日本大震災で幼稚園バスが津波に飲み込まれ、5人の園児が亡くなった事例の裁判だ。
幼稚園側は津波は予測し得ない災害で不可抗力だったと主張した。
だが、判決では幼稚園側の過失を認め、遺族側への賠償を命じた。
バスはいつもと同じように海側のルートを通って園児たちを親元に送り届けようとしていた。
もし山側のルートを走っていたら津波には巻き込まれなかったはずだった。
園長らは巨大地震があったにも関わらず、いつものように行動したわけだ。
この「いつもどおり」という流れを、打ち破る知恵も努力も意思も持ち合わせていなかったことになる。
振り返って、自分自身はそんな時にちゃんとした判断ができるのだろうか。
長い人生を生きてきた分、ある程度対応はできそうだ。
同じ3.11の地震の時、千葉でも震度5強という激しい揺れを感じた。
これまでに経験したことのない揺れだったが、すぐに家の中で一番安全そうな廊下に移動した。
ピアノの横でうろうろとしていた奥方とお友達には、ピアノから離れるように指示した。
揺れが収まった後もエレベーターは使わないように助言したし、自動的に止まったガスの安全弁も開けた。
自分でも不思議なくらい落ち着いていたと思う。
東京直下型地震や東南海地震は、明日起きてもおかしくないと言われている。
自分の身や家族に大きな厄災が降りかかった時に、ちゃんと対応できる心構えと、折れてしまわない強い精神を養っておきたい。
今日は昨日の続きではないし、明日は今日と同じとは限らない。