歩き日記

登山道情報・ウォーキングコース情報・愛犬とのウォーキング・生き物・植物・音楽など

テレビドラマ剣客(けんかく)商売を見て

2012年08月28日 | Weblog

 フジテレビで剣客商売新シリーズが、北大路欣也が主人公小兵衛役で始まった。池波正太郎ファンの一人として楽しみにしていた番組である。今回はテレビを見ての感想を述べたい。

◆今、時代劇は

 テレビ時代劇の長寿番組のTBS水戸黄門は、昨年12月、40年の歴史の幕を閉じた。今、テレビは若者向けのドラマやバラエティー番組が花盛りで、時代劇は衰退の一途をたどっている。

 そんな中、時代劇にあえて挑戦するフジテレビの姿勢に敬意を表し、他局でも時代劇に挑戦してもらいたいと思っている。時代劇が衰退することは、伝統的な日本映像文化の危機と思う。

 聞くところによると、韓国は時代劇を支援していると聞いた。日本もそうあってほしいと思う。でないと時代劇に携わってきた職人がいなくなってしまう。

◆剣客商売を見て

 ズバリ、ミスキャストである。池波正太郎ファンの私としては残念である。原作では次のように登場人物が紹介されている。

☆剣客商売「女武芸者より・・・・・・

秋山小兵衛(こへい)

 寝そべってる小兵衛のあたまをひざに乗せ、耳の垢をとってやっている若い女は、・・・・別に大女ではない。だがおはるのひざに寝そべっている小兵衛を見ると、まるで母親が子供をあやしているようである。[小兵衛]とは、よくも名づけたものである。

秋山大治郎(だいじろう)

 まるで巌のようにたくましく体躯のもちぬし・・・ ならんで立つと、大治郎の胸あたりへ、小兵衛の白髪頭がようやくとどく。大治郎の体躯が特別にすぐれているからではない。

佐々木三冬(みふゆ)

  髪は若衆髷にぬれぬれとゆいあげ、すらりと引きしまった肉体を薄むらさきの小袖と袴につつみ、黒縮緬の羽織へ四ツ目結いの紋をつけ、細身の大小を腰へ横たえ、素足に絹緒の草履といういでたちであった。さわやかなうごきは、どう見ても男のものといってよいが、それでいて「えもいわれるに・・・」優美さがにおいたつのは、やはり三冬が十九の処女(おとめ)だからであろう。

☆剣客商売(御家老毒殺より)・・・・・・・

粂太郎(くめたろう)

 健康そうな、以下にも童顔の愛らしさを残した前髪の少年なのであった。

◆ミスキャスト

 北大路欣也(小兵衛):ま、いいだろう。藤田まことの人間味のある小兵衛のイメージとはほど遠いが、そのうち北大路欣也小兵衛の味が出てくるだろうと期待している。

 貫地田しほり(おはる):ほっぺたの赤い化粧など、田舎芝居か、貫地田が可愛そう。

 齋藤工(大治郎):体の線が細い、小兵衛と身長差がない。原作と程遠い体型で迫力がない。剣客としての重みがない。

 杏(三冬):演技力がない。原作の三冬にはほど遠い。

 俳優名不明(粂太郎):はっきりいって粂太郎おじさん。前髪の可愛い少年のイメージゼロ。

◆脚色がひどい

 全て原作とおりとは言わないが、過度の脚色は原作ファンとしては許せない。特に小兵衛と小川宗哲(そうてつ)の友達感覚の会話にはショックを受けた。

☆剣客商売(御家老毒殺より)

  小兵衛と宋哲の親交はすでに十五年におよんでいる。身分の上下にかかわらず、その行きとどいた診察と治療に変わりなかった。・・・・・「これ小兵衛さん。急用かいの?」七十をこえなていがら宋哲の老顔は血色があざやかに浮出し。声音が澄通ってきこえるのである。

 「宋哲先生。今日はひとつ、何もきかずに、私のねがいをおきき下さぬか」小兵衛がそういうと、言下に宋哲は「あ、いいよ」とこたえた。・・・「この薬を御鑑定ねがいたい」「どれどれ」かの散薬を受け取った小川宗哲が、しきりに匂いを嗅いでいる。ややあって、「これは毒薬じゃ」・・・・

◆脚色

 この時、小兵衛は58歳である。宋哲に対しては敬語を使っている。小兵衛は、義理とか人情とか、世間の常識を重んじる人間である。そんな小兵衛が年上の医者に友達感覚の言葉を使うはずがない。

 宋哲は、上品な老医師で細やかな心の人間である。ドラマの宋哲(古谷一行)は上品さも細やかさもない。それに澄みきった声でもない。薬品を使い薬の鑑定をしている。名医の宋哲は匂いで分かるのである。

◆まとめ

  と、いろいろ批判したが、これは、あくまでも私個人の意見であり、視聴者によって受け取り方が違うのは至極当然である。何れにしても、時代劇ファンとしては、この番組の視聴率が上がり、時代劇ドラマが増えることを願うのである。そういう意味で今回の剣客商売の俳優は、視聴率を第一に考えた配役かも知れない。

 それぞれの俳優が、どのような剣客商売を作り育てるか楽しみでもある。そういう意味で今回の剣客商売は、テレビドラマとしてとらえ、どのような剣客商売に作り上げられて行くか、楽しみである。

 期待を込めて応援したい。それに主演者の殺陣も注目したい。そういえば殺陣のうまい時代劇俳優は歳をとりだんだんと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・若い齋藤工君に頑張ってほしい。

 


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
厳しすぎ? (通りすがりの者です)
2012-09-10 23:41:04
そんなに時代劇詳しくはありませんが、剣客商売や必殺など好きでよく見ていました。今回、私はとにかく斎藤エがだめでした。冒頭の御前試合から脱力してしまいました。あれは朴念仁というより、ただの大根です。(杏もですが)山口馬木也さんに戻して欲しいです。また仰るように毒薬を見極める場面は酷いですね。安いサスペンス劇場を見ているようでした。二人の交流も何か現代風?な軽さばかりが鼻につき、見てて苛っとしました。とにかく全体的に軽さと雑さが目につき、悲しい剣客商売でした。役者だけでなく、もしかしたらスタッフも絶滅寸前なのではないでしょうか?頑張って欲しいものですね。見終わった後、少しばかりのしみじみとした感傷とすっきり感が、私が時代劇に求めるものなのかも。どうもお邪魔いたしました。
返信する
そのとおりと思います。 (won)
2012-09-11 17:59:41
池波先生が見たら激昂すると思います。
三流役者が多いと剣客商売で寂しい限りです。

おっしゃるとおり、軽さと雑さが目立ちます。重厚さと品があっての時代劇。原因は役者と脚本にあると思います。

殺陣のうまい若手の俳優育成のために、我慢して見るしかないですね。あんまり見たいとは思いませんが。

貴重なご意見ありがとうございます。





返信する
池波さんは激昂などされませんよ (ERIRE)
2014-02-24 21:25:27
池波さんはこれをご覧になっても激昂などされませんよ。

池波さんは元々が新国劇の劇作家で名優、辰巳柳太郎・島田正吾の芝居を書いていた方ですし、書くだけではなく歌舞伎や狂言、能などの伝統演劇や新国劇以外の現代演劇、世界中の映画を数多く見てこられました。

その方からすれば、テレビシリーズのどの役者も最初から合格点などついたはずがありませんし、演出にしてもおなじこと。数々の不満をもちつつも、彼らの可能性にかけてじっと我慢して見てこられたはず。

今回の北大路板も、ご存命ならばいろいろ注文はつけられたでしょうが、激昂などはされるはずがありませんね。

返信する
激昂はしないけど (won)
2014-02-25 15:50:35
オール讀物1990年2月鬼兵犯科帳のプロデューサー市る。川久夫氏の話

 池波先生は、小説と映像作品は表現方法が違うので
 シナリオの構成は尊重する。

 但し
 原作のテーマと主な要素はとり入れるよう希望していた。
 とくにせりふのニュアンスには神経をつかって
 職業、身分、環境による微妙な違いに手を加えるのが
常だった。

1994-2太陽、香川圭子氏の話

 池波先生が新国劇の脚本を手がけたとき
 島田先生と激論をしていた。
 池波先生は、一本気な方なので
 激論に折れることはなかった。

よって、激昂はしなかったかもしれないが
怒っただろうと推測した次第です。
返信する

コメントを投稿