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A Right to Die わずか45年前には

2009-01-22 04:54:20 | 
A Right to Die

Bantam Books (Mm)

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さて、昨日、圧倒的な支援を受けて、アメリカ初の黒人大統領が誕生しました。パウエル前国務長官が、黒人で暗殺の危険性があるとして大統領選への立候補を断念したのが1996年だったということを考えると嘘のようです。

ましてやこの本が出版された1964年、黒人が白人となると...

前年にキング牧師が例の有名な"I have a dream..."が連呼される演説を行い、その年に公民権法が制定されて、人種や宗教、性、出身国による差別が禁止されたわけです。が、「禁止」されるってことは差別が存在している、というわけです。

このネロ・ウルフ・シリーズのうちの一冊で、だいぶん前に買っていて、なにげなく読み始めたところ、なかなかタイムリーな一冊なのがわかりました。

なにせ、公民権運動を繰り広げる団体に所属し、黒人男性(将来はニューヨーク市長になれそう、という人物)と結婚しようとしている白人女性が殺害される、というお話です。当時のことなので、何の証拠もなく相手の男性が疑われ、その父親が古いウルフとアーチーの知人だったことから、ウルフたちは捜査に乗り出すことになります。そして最後にわかったのが、殺人のきっかけとなったのが、白人が黒人と結婚しようとしていたから。"She has a right to die,"と犯人が最後のほうで繰り返すのでした。ジャングル・フィーバーって映画もありましたけど、この話のほうが古いだけに、事態はいっそう深刻です。

作者のレックス・スタウトがかなりユニークでリベラルな人物でして、1930年代にははやくも黒人の権利を擁護するウルフの演説が含まれている小説を書いていました。この小説でも黒人の平等を求める公民権運動にウルフは賛同をしめしていますし、アーチーにしても、ふざけながらも、「肌の色をみて、自分のほうがえらいとは思わない」と書いてみたり、黒人の女性に惹かれたり...一方、犯人のようなスタンスをとるのもいるわけで。また、今では差別用語として回避される表現も結構使われています。全体としては、いかにもウルフらしい軽やかで陽気なエンタテイメントなのですが、その時代の雰囲気もうかがうことができる作品でした。

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