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モーロ人は馬にのって―アンダルシアで舞い、耕し、生きる

2006-06-18 12:52:11 | 
モーロ人は馬にのって―アンダルシアで舞い、耕し、生きる

解放出版社

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かの野生のカンタオール、マヌエル・アグヘータが夫という日本人バイラオーラの本です。前から話は聞いていたのですが、借りて読んでみると、思ったよりもはるかに面白い本でした

アンダルシア地方カディス県の小さな町のはずれに住んでいる著者の生活をつづったものです。フラメンコだけの話題ではないです。

今どきスペインではこんな生活している人たちっているのと、正直カルチャーショックを受ける生活ぶり。電気はきているものの、上下水道がなくて生活水をすべて水に頼り、お風呂はまきをもやしてドラム缶でお湯をわかしてバケツで浴槽にあける畑を耕し、豚は自分たちで解体して腸詰も行うなどなど。

生活環境も厳しいですが、もっとたいへんそうと思われるのはスペインという国民性。正確に言うと、地方の人たちの性質なのかもしれませんが、他人が黙るまで大声で怒鳴りまくれば勝ち、隣の人を一瞬で敵か見方か判断して行動し、パジョ、ヒターノ、モーロ、ユダヤなど人種間の差別が厳しい。書いてあることを見ると、理性なんてどこにもないんじゃないかしらとさえ思えます。感情と直感ですべて動いているというか、動物的というか。とても閉鎖的。自分が正しい、世界の中心、と思うのが当たり前のよう。観客席から陰湿な嫌がらせをうけることもあるらしい。舞台に上がることの怖さを知っているアルティスタはさすがに謙虚らしいですが。

そんな中、スペインの大地に根を下ろして(としかいいようがない)たくましく、気が遠くなりそうな努力をしながら、奮闘するさまを描いたこの本は、したたかで、強くて、過激で、そして純粋な生き方っていうのを浮き彫りにしてくれます。それにマヌエル・アグヘータの歌が聞きたくなりました。人柄がすれてないというか、素朴というか、純粋というか。筆者の踊りもみてみたいです。

フラメンコに興味がなくても、まず情報がはいってこないスペインの地方の暮らしぶりをのぞくために、一度読んでみてもよいのでは。すらっと読めはしますが、濃い本です。


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