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Riches I hold in light esteem

2007-04-07 07:24:15 | Quotes
話題にするタイミングを完全にはずしてしまったんですが、前から書こうと思っていたので...

3月までやっていたNHKのドラマ「ハゲタカ」のエンディング・テーマの歌詞は昔から好きな詩。りりしくてかっこいいじゃないですか。普通なら後生大事に考えられている富、愛、名声に目もくれず、勇敢なとらわれない魂だけを求めるなんて

作者は嵐が丘を書いたエミリー・ブロンテ。

esteemとdreamでは「イーム」、scornとmornでは「オーン」のようにかっちり韻を踏んでます。エミリーは、こんなふうに形式としてはオーソドックスなを結構かいてます。比較的お行儀のよい形式とはうらはらに、書かれているのは疾風怒涛のロマン派の世界。強い感情と意志、自然や超自然との一体感など、さすが嵐が丘の作者。

ドラマのホームページでは訳詩も紹介されています。

が、この訳詩、よくないんだわ...まず、原詩の簡潔な力強さがまったくありません。独自の解釈をいっぱいくわえていてニュアンスがかなりずれちゃっています。ドラマチックにしたかったんでしょうか。いや、これなら直訳のほうがはるかによいです。誤訳といいきってもいい。

たとえば一行目の「ハゲタカ」のエンディング・テーマの歌詞になったゆえんにちがいない部分。

Riches I hold in light esteem

「富なんてものは問題にならない」 
別にまちがってはおりません。全体の中では一番よく訳せているところでしょう。それでも、「なんてもの」って意味を加える必要などあるでしょうか。これがあるだけでかんじがだいぶんちがってくるっていうのに。詩の中でエミリーはいらない言葉を使ってないんです。ならば、「なんてもの」をつけて冗長にして、あとにくるものよりも軽視しているふうなニュアンスはつけなくてよいはずです。「富なんて問題にならない」あるいは「富は問題にならない」で十分。

二行目以降はフラストレーションがたまりまくります 

「恋だって考えただけで吹き出したくなる」
scorntが「吹き出す」などありえませんdisdainとか、contemptと同じ。軽蔑するというか、ふん、こんなもの、って見下すというか。今、浮かぶのは「愛は笑い飛ばそう」あたり。これも詩っぽくはないからすごくいいとは思わないけど。

3行目以降についてはもう書きますまい。詩の訳はむずかしいとはいえ、まったくいただけません。

この訳が掲載されている岩波文庫の「イギリス名詩選」って、詩の選出基準はなかなかです。アンソロジストとしては大いに評価したいです。ところが訳は...ほぼすべてひどい いや、この本だけではありません。岩波文庫の英語作品の訳は今イチが多いのはなぜなんでしょう。できない人をわざと選んでいるんでないかと思うぐらいです。

これじゃあ、読者がその作品がきらいになるんでなかろうか...

岩波の誤訳/イマイチ訳のとりえは、仕事の落ち込み脱出のきっかけになってくれることでしょうか。これよりはマシかもしれん...と思えることが多いので。

おっと...えらく話がそれてしまいました。原詩をのせておくので、よかったらどうぞ。

Riches I hold in light esteem,
And Love I laugh to scorn;
And lust of Fame was but a dream
That vanished with the morn ー

And if I pray, the only prayer
That moves my lips for me
Is ー‘Leave the heart that now I bear
And give me liberty.’

Yes, as my swift days near their goal,
‘Tis all that I implore ー

Through life and death, a chainless soul,
With courage to endure!


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