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お気に入りのものあれこれ

花に嵐のたとえもあるさ

2007-03-29 23:01:38 | Quotes
気の早いやつはもう咲き始めていますが、本格的に桜の花が楽しめるのは、今週末あたりからになりそうですね。会社の帰り道でも、ずらっとならんだ桜のつぼみがふくらんでいくのを楽しみにしてます。フェイントをかけて咲いているやつには、せっかちだねえ、とにやにや笑ってみてしまう。これからしばらくは、いつもならため息をついて歩いていく通勤が、楽しみになります。一年で一番幸せな季節

たぶん、もともとは梅をうたっているんだろうけど、どうも桜だと思ってしまう詩で、この時期になると思い出すのが、「歓酒」。井伏鱒二の訳で有名なあれです。

この杯を受けてくれ どうぞなみなみ注がしておくれ 花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ

どうも最後の二行の訳が印象的すぎて、最初の二行は吹き飛んじゃいまして、ず~っと、しょせん人生はさよならだけで、いいときはあっても最後は終わっちゃうむなしいものなのさ、みたいなちょっとニヒリズム風の人生観をみせている詩だと思い込んでました。が、最近はころっと変わりました。訳でも全体でみるとどうもそうでなさげ。

それで原文の漢詩をまじまじとみると、印象はさらにちがってきたのです。

勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離

一、二行目は、酒を注ぐから、遠慮して断ったりするなよ、ってことですもんね。それで、三行目で、断るのなんてよくないぞ、なぜって、今を盛りの花だって、嵐がきたらあっさり散っちゃうんだ。それと同じで、君ともわかれないといけないのはわかってるとも。そして二度と会えなくなってしまうかもしれないってことも。でも、だからこそ、今は思い切り飲んで、存分に楽しんじゃおうじゃないか。こんな調子のCARPE DIEM (今を楽しめ!)の感覚に近い詩じゃないのかなあ、と思ってます。


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