エバーゴールドが咲き始めた。
アイスバーグも花嫁衣装のような清楚なツボミをつけ始めた。
ツボミは可憐だが、
時おり中に小さな黒い虫が付いている事がある。
今朝、
「あの虫はなに?」
と夫にきいてみたが、
「知らん」
と、無関心な返事を残して出かけて行った。
虫は苦手だけれど
山に住む以上は虫ともある程度の共存は必要になる。
今しがた、夫が書斎に使っているサンデッキの窓のサッシに妙な物体を発見した。
よ〜く眼を凝らしてみると
“ヤツ”が、自分の身体と同じ大きさのエサを捕まえているところだった。
“ヤツ”は、虫の中でも私がもっとも苦手とする蜘蛛の仲間で、
一般的には、アシブトハエトリと呼ばれている体長9mmの小型のクモだ。
8つあるうちの4本の脚で、抱きしめるようにガッシとハエを掴んでいる。
掴まれたハエは最初のうち、たまに前脚をバタバタと動かしてはいたが
すでに諦めたのか1分もすると動かなくなった。
ハンティングに成功した“ヤツ”は得意そうにしている…
クモは益虫で、ハエは害虫だから
本来なら私は、ヤツに礼を言わねばならない…
が、
ハエを抱えたクモにウロウロされるのはイヤダ!
ここで、
普段は封印している、私の“意地悪”な性格がムクムクと頭をもたげてきた。
私は、サッシを開けて、
ヤツを2枚のサッシで挟み簡単に出られないようにした。
ヤツはハエを抱いたまま、其処彼処と脱出口を探していたが、
私の気配に気づいたのか、動くのをやめてサッシの隅でジッとしていた。
どうするのかな?
( ハエを掴んだままだと出られないよね?
でも大事なエサだから諦められないよね?)
ここはヤツの選択に任せよう。
意地悪な私は、
しばらく、そのままにしてその場を立ち去った。
( ヤツは、どっちを選んだか…)
30分後に同じ場所に行ってみると姿がない。
ヤツは、どこに行ったのだろうか…。
どこかにハエを落としてないか?
そう思って、
サッシの上や下を探してみたが、ハエもヤツも見当たらない。
そうだ、
…隙間を見つけて脱出したのだ。
後付けで造ったサンデッキのサッシには、隙間がある事をちゃんと知っていたのだ。
“一寸の虫にも五分の魂”
… 生きるための知恵が、ちゃんと備わっているという事だ。
意地悪して、ごめん…。💦