(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)
さて、Grand Strokeも今回で4回目……ようやく舞台がイギリスに移動になりました♪(^^)
といっても、コートドール城は架空の場所ですし(当たり前☆)、ウィンブルドン入りする若手選手を招待して、コートを提供する――なんていうことが、実際ほんとに許されるものなのかどーかと思ったり
まあ、結局のところただの二次小説ですんで、そういうことについてはほんと何ひとつ考えてないってことで、よろしくお願いします(逃☆)
んーと、あとは今回、オリキャラが約2名登場してて、他にもひろみと戦うことになるテニスプレイヤーがのちほど出てくるんですけど、全員架空の人物です(^^;)
そんでもって今回登場するのが、コートニー・エバハート夫人と、その娘のクリスティン・エバハートのふたりで、Mrs.エバハートは宗方コーチのコーチをその昔してたという設定。。。
あの、わたし原作読んでて時々思ったんですよね。宗方コーチって現役時代、どんなテニスの監督にコーチしてもらってたのかな、なんて
自分と同じように「低温で燃える男」(※某サイト様の表現より・笑)系なコーチだったのか、それともやっぱり同じようにスパルタ系の血も涙もない鬼だったのか……でもわたし的に、自分で書く分においてはそれじゃつまんないな~と思ったっていうのがあって、宗方コーチのコーチは実は女性で外人だった☆ということにしてみた、というかww
うん、だって宗方コーチってば、英語ペラペラだし、あれは日本の英語教育の賜物では絶対ありえへん!って思うし(笑)
あと、「一気に燃え上がり、燃え尽きるような恋は決してするな」とか、誰に教わったんだろうっていう疑問もありますよね(^^;)
まあ、一般論としてそう語ったっていうのでも全然いいんですけど、でも読者としてはちょっと「宗方コーチも過去に何かあったんだろうな☆」って想像してしまうところなので。。。
そんなわけで、大体のところそんなよーな設定になったというか
次回でてくる宗方コーチの過去エピソードは、まあわたし個人の勝手な捏造ですので(汗)、このあたりもあまり深く突っこまないでおいていただけると幸いです的なww
ではでは、次回は宗方コーチの語りで、エバハート夫人との会話っていうことになります♪(^^)
それではまた~!!
Grand Stroke-4-
Side:ひろみ
イギリス、ロンドン南西部――ウィンブルドン。
その、テニスの聖地として知られるウィンブルドンと同じ市中に、コートニー・エバハート夫人が所有するというコートドール城はあった。
入り口の門扉が自動で開くと同時に、ヒースロー空港まで迎えに着ていたベンツは、舗装された道路をどこまでも真っ直ぐに石造りの城目指して進んでいった。
道路の両脇には綺麗に手入れされた芝生と、その先に六月の花が咲き乱れる花壇とがあって――まるで中世貴族の世界に迷いこんでしまったみたいだと、あたしはうっとりしながら感じていた。
そして途中、どこかから、スパーンスパーンという、テニスの球を打ち合う音が聞こえてくる。
何分、あまりに遠くからその音が聞こえてくるため、一体どこにコートがあるのか、窓の外をじっと眺めて見ても、まるでわからない。
「今日は飛行機による移動で疲れたろうから、練習はしなくていい。エバハート夫人と挨拶したあと、晩餐に備えて部屋で休め。明日からは気が向かなければ、みんなが集まる食堂へは来ず、自分の部屋で食事をしてもいいそうだ。だがまあ、おまえは合宿馴れしてるから、そういうのはあまり気にならんか?」
「えっと、美味しいものさえ食べられれば場所はどこでもっていうのは冗談で、コーチ、あたし今めちゃめちゃ緊張してますっ!短い間とはいえ、あんな薔薇色の石造りのお屋敷で暮らせるのも夢みたいですし、ウィンブルドンで試合がはじまったらはじまったで、ここから毎日車で送り迎えしてもらえるだなんて……なんだか、自分が中世のお姫さまにでもなったような気がするっていうか」
「それにしては随分、陽焼けして色の黒いプリンセスだな。俺は去年、松葉杖をつきながらホテルとウィンブルドンを往復していた時のことがなんだか懐かしいぞ。今年は無事、五体満足でここまで来れて、本当に良かった」
コーチがまた、以前も見せたことのある優しく深い眼差しをするのを見て――なんだかあたしは一瞬、胸が切なくなった。毎日松葉杖をついてでもウィンブルドンへ来てくださるコーチのことを思い、何がなんでも勝ってやる!!と闘志を燃やした時のことが、懐かしく思いだされる。
あれが去年あったことだなんて、一年という時が流れるのは、なんて早いのだろう。
運転手の方が、百室以上も部屋があるという城の前で車を止めると、どこか恭しくドアを開けてくださる……そしてあたしがどこお嬢さま風に車を下りた途端、目の前の庭から駆け出してくる女性の姿があった。
「ああ、あなたがヒロミ・オカ選手ね!!」
テレビの中継などで、観戦者の席に座る彼女の姿は、何度となく見たことがあった――まるでファッション雑誌から抜けだしてきたような美貌の持ち主、それがあたしのコートニー・エバハート夫人に対する第一印象だった。
「本当に嬉しいわ。娘のクリスティンがあなたの大ファンですの。どうかよろしかったら、一度コートで相手をしてやってくださいましね」
「えっと、あの……お会いできて光栄です」
あたしはたどたどしい英語でそう答えるのがやっとだった。
そして、宗方コーチが車から下りてくる姿を見た途端に――彼女の両の瞳から涙が盛り上がってくるのを、当然あたしは見逃さなかった。
「仁!!」
エバハート夫人はコーチの名前を呼ぶと同時に、感極まったように彼に抱きついていた。この時、あたしは胸の奥がズキリと痛むあまり、頭に被っていた麦藁帽子が飛んでいったことにも気づかなくて……その帽子を誰かが拾い上げて、再び頭にのせてくれた時に、ようやくそのことに気づいたのだった。
「初めまして、Miss.オカ。わたし、クリスティン・エバハートです」
はにかんだように微笑みながら、クリスティンがあたしに対して手を差しだす。
「こちらこそ初めまして。えっと、Miss.エバハート?」
微妙に語尾が上がり気味なことに対し、クリスティンがくすりと笑う。
「クリスと呼んでください、Miss.オカ。そしてわたしもあなたのこと、ヒロミってファーストネームでお呼びしてもよろしい?」
「ええ、もちろん」
運転手がトランクを開けると、屋敷の使用人(という呼び方はどうかと思うのだけど)が玄関前の石段を下りてきて、それを運んでいこうとする。
「ああ、いいのよ。気になさらないで。彼らはあれが仕事なのですもの。ヒロミの部屋はコーチのミスター・ムナカタと同じ棟にしておいたから、あとでわたしが案内してあげるわ」
ぐいっと手を引っ張られ、庭にある薔薇のアーチ門まで半ば強引に連れていかれる――あたしはエバハート夫人と宗方コーチのことが気になって、そちらのほうにばかり最後まで視線を送っていたのだけれど……。
「ふふっ。ママったらまるで、少女みたいな顔しちゃって。とりあえずは気を利かせて、暫くの間はママとミスター・ムナカタをふたりきりにしておいてあげましょ」
「えっと、あの、Mrs.エバハートとコーチって一体……?」
どういう関係、という英語が出てこなくて、あたしはしどろもどろになった。
「あら、聞いてないの?ママはその昔、ミスター・ムナカタのテニスのコーチをしてたのよ。で、ミスター・ムナカタが再起不能になった時、ママは自分が交通事故に遭った時のことなんかを手紙に書いてね、彼のことを励まし続けたんだそうよ。そして自分が育てたテニスプレイヤーであるあたしと、ミスター・ムナカタの育てた選手――つまりヒロミ、あなたね――が、テニスの聖地であるここウィンブルドンで、同じ桧舞台へ立つことになった……ママはそのことに激しく感動を覚えてるってわけ」
(ああ、そうか。それで、なんだ……)
あたしはコーチが、何故あんなにも優しく深い眼差しで自分を見てきたのか、その理由が初めてわかったような気がした。でも、あんなに綺麗な人がコーチのコーチ……えっと、変な言い方かもしれないけど、宗方コーチのコーチだったなんて。
「ママがミスター・ムナカタのコーチをしてたのは、大体2年くらいだったらしいけど、さっきのふたりの様子を見てて、わたし確信しちゃったわ。たぶん、その間に何かあったのよ。ミスター・ムナカタとあなたがうちへ来るって聞いて以来――ママったら毎日そわそわしちゃって、まるで恋でもしてるみたいなんだもの。で、さっきのふたりの再会の場面を見てて、思ったわ……ただの師弟以上にきっと、絶対何かあったんだって」
「そんな……第一、コーチとMrs.エバハートの間には歳の差が……」
指を折りながら数えはじめるあたしに対し、クリスティンがくすりと笑ってそれをやめさせる。
「そうね。ママは今年四十七歳で、ミスター・ムナカタは三十歳。つまり、十七歳も離れてるってことになるわ。そして、ママがミスター・ムナカタのコーチをしてたのが十七歳から十九歳の間らしいから……その時ママは三十五とか、そのくらいかしらね。でも、ヒロミ、どう思う?うちのママはわたしが小さい時からそりゃ綺麗だったのよ。たぶん、三十五歳の時にも二十九とか、そのくらいにしか見えなかったと思う。そして今はパパも亡くなって、ママは未亡人だし、三十歳の男と四十七歳の女が結婚したって、世間では何も言わないでしょ?」
「……………!!」
あたしはクリスティンのその言葉に、ショックを受けた。確かに、彼女の言うとおりだと思う。何より、宗方コーチのMrs.エバハートを見る眼差し……あんな顔をしているコーチのことは、あたしも見たことがなかった。
「えっ?もしかしてヒロミって……」
あたしの顔が青ざめ、一瞬にしてあまりにも態度が豹変したそのせいだろうか。クリスティンはその変化に目敏く気づいてしまったみたいだった。
ああ、なんでこうあたしは、人前で感情を隠すのが下手なんだろう。本当に、嫌になる。
「ご、ごめんね、ヒロミ!!わたし、今物凄く無神経なこと言っちゃった!!あのね、ヒロミ。つまりわたしが言いたかったのはこういうことなのっ!!最近、あんまりママがそわそわしてばかりいるから――わたし、もしかしたらミスター・ムナカタが自分の義理の父になるかもしれないって思ってたの。それで、そんなことばっかりしかここのところ頭になかったもんだから……そう、そうなのね。そこのところはわたしの口からそれとなくママに伝えておくわ。大丈夫、うちのママはそのあたりのことについては、かなりデリカシーのあるほうだからっ!!」
どこかオロオロしたように両手を握り返され、あたしはどうしていいかわからなくなった。
というか、マスコミが色々と書き立てているとおり――本当にこの子はいい子なんだな、なんて急に思った。父親が元外交官で、伯爵の位を持っていて、親戚にはケント公がいて……なんていう、まさにテニス界のサラブレッド。
その上、母親譲りの美貌まで所有している彼女と、あたしは果たして仲良くなれるだろうか……なんて、ここへ来るまでの間、少しばかり危惧していたのだけれど、クリスティン・エバハートという少女は、そのプレイスタイルと同じく、性格も真っ直ぐで素直なようだった。
「宗方コーチは、あたしの気持ちを知りません」
何分、話せる語彙があまりに少ないために(えーん!)――あたしは素直にそう白状せざるをえなくなってしまった。
「ううん。気づいているけど、気づいていない振りをするのがコーチとしての務めだと思ってるのかも。昔、こう言われたことがあって……『一気に燃え上がり、燃え尽きるような恋は決してするな』って。あたしは自分がテニスに恋してるみたいに、コーチとの関係もこの先ずっと続いてくものだと確信してるけど、コーチにとってあたしはきっといつまでも、弟子で可愛い子供みたいなものなんだろうなあって思うんです」
「あら、それは違うわよ、ヒロミ」
ブロンズの三美神が立つ噴水の縁に、クリスティンは座りながらそう言った。あたしもまた彼女の隣に、自然腰掛ける形になる。
「わたしのコーチってずっと、ママが選んだ優秀な男の人ばっかりなんだけど……その裏に時々、ちょっとした思惑が見え隠れしてるのを見ることがあるのね。Mrs.エバハートは魅力的、娘のわたしもすごく可愛い……まあ、自分で言うな!って感じだけどね」
ここでクリスティンはまた、くすくすと笑った。
「さて、自分はどっちを選ぶべきかっていうのかなあ。もちろん、相手はコーチとして優れた人だし、男の人としても立派で紳士的な人ばかりよ。でも一応、わたしももう十七歳だし、そういう対象として一応含まれてるっていうのはわかる。変な自惚れとかじゃなくね。だから、たぶんミスター・ムナカタも……そういう部分は間違いなくあると思う。簡単に言うとしたらまあ、わたしが自分のコーチにそういう気があるってアピールしたら、向こうも応えてくれるだろうっていう、これはそういう話なんだけど」
「それは、あなたは綺麗だから……」
ここでもあたしは語彙不足で、自分の言いたいことを十分、相手に伝えられなかった。でも、クリスティンにはあたしの言いたいことがはっきり伝わったらしい。
「ヒロミ!!あなたったら、なんて可愛いの!!」
再び、ぎゅっと両手を握りしめられ、あたしは少しばかり面食らった。
「わたし、絶対にあなたの応援をするわ!!最初は東洋人のパパも悪くないかなって思ってたけど、よく考えたらあんな格好いいパパ、目の毒だもの!!そのうちママとの間でミスター・ムナカタの取りあいになっても困るし……ああ、ごめんなさいね、ヒロミ。実はわたし、そんなことまで考えてたのよ。でもこれでほんと、色んなことがスッキリハッキリしちゃった――ミスター・ムナカタは誰がなんと言ってもあなたのものよ。わたし、精一杯応援しちゃう!!」
「……………!!」
初対面の相手と、いきなりここまで打ち解けられるとは、あたしも思ってもみなかった。
それからあたしとクリスティンは、テニスのこと、差し迫ったウィンブルドン大会のこと、それにプライヴェートなことについてまで――メイドの女性が呼びにくるまで、二時間ばかりも話しあっていただろうか。
時刻は現在午後の六時。でも、この時期のイギリスでは日本と違い、まだ真昼のように太陽が空に明るく輝いていた。
「そろそろ、晩餐会に出席する仕度をしなくちゃね。今日はヒロミとミスター・ムナカタがやって来るっていうことで――お庭でバーベキューする予定なのよ。執事のトマスはステーキを焼く達人でね、絶妙な焼き加減で美味しいお肉を提供してくれるの。ヒロミはミディアムとウェルダン、どっち派?」
「えっと、どっちかっていうとミディアムかも……」
「もう、ヒロミったら可愛いんだから!!」
この場合のミディアムのどこが可愛いのか、もちろんあたしにはわからない。でもこのあともクリスティンは口癖のようにしょっちゅう、「ヒロミったら可愛いんだから!!」と、なんの脈絡もない場面で繰り返し言っていたっけ。
とはいえ、一見まるで屈託のない十七歳に見えるクリスティンだったけれど――コートに入ると突如別人のようになり、自分より三つも年下だなんて思えぬほどの気迫を漲らせる。その上、なんの感情も窺わせないようなポーカーフェイスをも備えている彼女は、やはり当初から想像していたとおり、かなりの強敵だった。
>>続く。
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