(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)
え~と、今回は少しテニスに関する真面目(?)な話でもと思います(^^;)
う゛~んまあわたし、テニスについて何か語れるほど詳しくもなんともないんですけど、今回の本文で宗方コーチが言ってる「相手の調子が悪いと、こっちの調子も崩れる」っていうのは、試合見てると実際にありますよね。
わたしの場合、ウィンブルドン限定テニスファンという、なんともけしからん感じとはいえ、確かフェデラー対ツォンガの試合の時にそんなことがあったように記憶してます(間違ってたらすみませんww)
え~と、相手がツォンガだったのは間違いないんですけど、対戦相手が本当にフェデラーだったかどうかっていうのが、ちょっと記憶あやふや(殴☆)……でも、フェデラーの調子が本当に悪いというか、上がってこなくて、全然本来のプレイじゃなかったんですよね。
見てても、「あ、どっか故障してるんだな☆」っていうのが、素人目にもはっきりわかるようなプレイで。。。
そんでもって確か、休憩の時にトレーナーの方を呼んで、体をマッサージしてもらったりとか、そういう場面があって――その次のセットで、べつにわざと負けてあげてるってわけじゃないんだけど、ツォンガが結構ミスしちゃうんですよね。
つまり、フェデラーの調子があんまり悪くて、相手が心配なあまり、ツォンガ自身も本来のプレイに徹しきれない感じというか。
まあ、プロなんだから、そこはそれ、相手が怪我してようとなんだろうと、非情に徹して勝ちをとりにいくべき……ではあるのかもしれません。
でもやっぱりここでもフェデラーは紳士でした。
自分の調子が上がらないと、ツォンガも戸惑ってミスをする、そこでそんなことじゃいけないとばかり、いつも通りのプレイに戻っていった、というか。
もちろん、休憩の時にトレーナーさんにマッサージしてもらったりとか、そういうのが効いてきたっていうのもあったのかもしれません。
そしてフェデラーが本調子に戻ると、ツォンガもまたいつも通りのプレイに戻って、再び真剣勝負が再開された……といったような試合展開だったと思います。
ん~と、やっぱりあのメディカル・タイムアウトというか、休憩の時にトレーナーさんに来てもらったりっていうのは、対戦選手にとって、精神的ダメージがあるらしいんですよね(^^;)
つまり、そういう状態の相手に全力でぶつかって勝っても本当には喜べない、というか。
もしかしたら、場合によっては(やった!チャンスだわ!!)っていうこともあるかもしれないんですけど――なんといってもこの場合は、性格いい同士、紳士同士のフェデラー対ツォンガということで、そんな試合運びになったのかな~なんて(^^;)
なんていうか、ツォンガもわざと負けてあげてるってわけじゃないんだけど、見てる側の印象としてはフェデラーが本調子になるまで「待ってあげてる」っていうようにしか見えないんですよね
まあ、そんなわけで、前回のコナーvsオカ戦っていうのは、そういう戦いだった、みたいに思っていただると嬉しいです♪(^^)
次回は宗方コーチの語りで、ひろみにとっての事実上の決勝戦である対モアランド戦は、その次の次あたりからはじまるといったところかな~なんて。。。
それではまた~!!
Grand Stroke-10-
Side:ひろみ
「何故、真剣勝負の試合の最中に手を抜いた、などとは、おまえに聞かないほうがいいのだろうな」
勝てば漢軍――などという諺の通じない鬼コーチに対し、あたしはどう弁明したらいいのか、わからなかった。宗方コーチは何より、勝つにしろ負けるにしても、<試合内容がどうだったのか>をもっとも重視する人だったからだ。
「手を抜いた、というわけではないんです、コーチ。コーチがおっしゃりたいのはたぶん、第2セットの第3ゲーム以降のことですよね?あたしのほうが2ゲーム連取してるんですから、当然優位――という精神的油断があったわけでもありませんし、あれはなんていうか……あのまま畳みかけるようにあたしが勝ったとしても、意味のない試合でした。あの、もちろんあたしだってプロなんですから、そんな気持ちがあって負けた日には目も当てられないってこと、わかってるつもりです。怪我をした彼女に同情したっていうわけでもありません。だから、なんていうか……」
あたしがしどろもどろに、なんとかコーチに納得してもらえる言葉を探そうとしていると、不意にコーチはなんとも言えない笑みを浮かべて、あたしの頭をがしがしと撫でて寄こした。
「まあ、いいだろう。結局のところ勝ったわけだしな。相手の調子が悪い時には、何故かこちらの調子も崩れるというのは、試合中にはよくあることだ。だが、あの試合を見ていた観客はこう思ったろうな――気の優しいヤマトナデシコのヒロミ・オカは、不幸にも芝ですべったコナーに同情し、メディカル・タイムアウトの取られたのちは、寛大にも彼女の調子が戻るまで待ってやった……といったようにな」
「ち、違います!あれは本当にそんなんじゃないんです。前にもコーチがおっしゃっていたことがあったでしょう?コナー選手は、怪我をしている時にこそ、むしろいいプレイをする稀有な選手だって……あの時の彼女がコートに漲らせた気迫って、あたしにしか見えないものだったんでしょうか。それであたしは次の2ゲームを逆に連取されることになって――エリザベスが再び元の呼吸を取り戻してからのち、あたしもまた本調子になれたんです。あの瞬間は本当に、あたしのほうが彼女に崩されました。だから、正真正銘のフェアプレイだったっていうこと、コーチもどうか信じてください!!」
「ああ、わかった。それよりも問題は明日のモアランド戦だな。どうだ、岡。勝つ自信はあるか?」
「え、えーっと……」
自信はありませんが、最善を尽くしますっ!!というのが、この時のあたしの本音だったけれど――「馬鹿者っ!勝てると思ってなくて、おまえはどうやって勝つつもりなんだ!?」と怒鳴られそうな気がして、あたしは黙りこんだ。
すると、コーチは今度は、あたしの頭をさっきとは違って、優しく撫でてよこした。なんだか、少しおかしな気分。だって、こんなのは初めてだったから……。
「おまえの言いたいことはわかる。普通に考えたとしても、去年に続き今年のモアランドもまた憎たらしいくらいに絶好調だからな。ここまで勝ち上がってくる試合のすべてにおいて、ストレート勝ちだ。見ている観客もおそらく、モアランドがあまりに強すぎて、試合内容が面白くもなんともないほどだったろう。俺は去年、彼女と対戦する前日、こう言ったな。『勝てなくてもいい。とにかくモアランドのことを苦しめる試合をしてやれ』と……だが、今年はそんなことを言うつもりはない。おまえなら、彼女に絶対に勝てる。観客が見ていて唖然とするような、面白い試合をしてやれ」
「はい!!」
――どうしてなのだろう。宗方コーチにそう言われると、本当にそんな奇跡を自分が起こせそうな気がしてくる。
もちろん、コーチ自身わかっているはずだった。バーバラ・モアランドは最高時速200km級のサーブを武器にしており、そんな彼女のサービスを破ることは容易でないこと、またそれだけでなくモアランドのプレイスタイルはオールラウンダーのそれであり、ほとんど欠点や弱いところがないのだ。
彼女の試合は大体のところいつも、型が決まっている。高速サーブで相手を釘付けにし、自分のサービスは滅多なことでは絶対落とさない。また得意のドライブでガンガンに攻め、相手のサービスを次々と情け容赦なく奪っていく……まさしく血も涙もない、コート上の鉄の女、というのが、あたしのバーバラ・モアランド選手に対する印象だった。
「どうした?何故こんなところで泣く?」
「だってあたし……きっと、コーチに叱られると思って。今日の試合のこともそうだけど、そんな中途半端な気持ちで次のモアランド戦に勝てるとでも思ってるのかって、そう言われるとばかり思ってたものだから……」
「やれやれ。そんなことまで予測してたのか。だったらむしろ逆に、俺のほうで言うことは何もないな」
あたしはベッドの上に腰かけたまま、宗方コーチの胸に寄りかかった。
単に、そうした形になったのは、ベッドの上に座ったままのほうが試合のビデオを見やすいという理由によってではあるのだけれど……考えてみると自分でも少しだけ不思議だった。
これまであたしは、試合で向かった先の、世界中の色々なホテルで、今のような状態を宗方コーチと経験している。いくらコーチといっても、一応は宗方コーチも大人の男の人なのに、今と同じように何度抱きあっても、それ以上どうこうという雰囲気になったことは、ただの一度としてない。
「おまえは最近、プレイの最中に一体何を考えている?」
あたしが縋りつくように宗方コーチの背に手を回したままでいると、不意にコーチがそんなことを聞いてきた。
「えっと、それはつまりどういう……」
「俺も具体的には説明できんが、おまえはコートの中で何かをしようとしているだろう?何かを試そうとしているというかな。今日のコナー戦もまた、その一環という印象を、俺は漠然と受けた。何か俺が今言ったことに、心当たりはないか、岡」
「ああ、そのことですか。えっと、それはあたしも、それこそコーチと同じく、自分でもうまく説明できません」
にゃはっと笑ってから、あたしはなんとなくコーチの体から自分の身を離した。
「んーと、なんていうか……前にも似た話をコーチにした記憶があるんですけど、ランニングってキツイしツライし、基礎トレーニングは地味で面倒でイライラするっていう側面がどこかにありますよね?でも、それを越えて越えて超えていった時に――とても見晴らしのいい丘から、美しい景色を眺め渡せるような、素晴らしい快楽の一点があると思うって。その一瞬のことを思えば、どんな過酷な練習も苦ではないと感じるようになってから、苦しみが苦しみでなく、つらいことが単につらいというだけで終わらなくなった、みたいなこと……あの、それ以来あたしずっと、考えてきたんです。いつもその丘の上に立っているにはどうしたらいいのかなって。ううん、そこまで行くにはやっぱり、一歩一歩地道に毎日坂道を登っていく必要があるんだけれど、精神的な意味において――試合の時にいつでもスッとその高いところに自分を置くにはどうしたらいいかって、考え続けていたんです。以前までは、こんな感じでした……時々調子のいい時にそうなれるっていうだけで、それは自分から向こうへ行くんじゃなくて、気まぐれに向こうが時々こっちに来てくれる、みたいな感覚。でも最近、自分でもわかるんです。『あれ?以前は自分が考えてもみない時にしか<それ>は来なかったけど、なんか今は自分の手の届くところにあって、引き寄せることが出来るみたいだ』って……それで、第一対戦相手だったアルバトロスにも勝て、次にクラリッサとも戦って勝ちました。そして今日のコナー戦でも。だけど、明日は果たして一体どんなことになるのかは、あたしにもわかりません。世間の人々の下馬評なんて、新聞を読まなくてもわかってるつもりです。みんな、絶好調のモアランドにヒロミ・オカもまた太刀打ち出来ないだろうっていう予測ですよね。でもあたし、本当に勝つか負けるかよりも、<あれ>というか、あの感覚が来るか来ないかのほうが気になっていて……」
あたしは試合の疲れもあってか、話の途中で呂律がまわらなくなり、ムニャムニャと強烈な眠気が襲ってくるのを感じた。
「わかった、岡。もういいから、今日は自分の部屋へ戻って休め」
「はい、コーチ。では、おやすみなさいませ……」
あたしはどこかふらふらとした足どりで、目を擦りながら宗方コーチの部屋を出ていった。
あたしの部屋はコーチの部屋から廊下を歩いていって、突き当たりの一番端に位置している。コートドール城へ来たばかりの頃は、その間にある部屋のうちのすべてが、人で埋まっていたけれど――若手選手ばかりが多いせいか、みな緒戦で敗退し、その翌日か翌々日には、荷物をまとめて他のホテルなどに移っていくことがほとんどだった。
今年もまた初戦で敗退した尾崎さんも、二回戦でワイルドカードのペトロビッチと当たって負けた藤堂さんも、敗北した翌日には、コートドール城から去っていった。
「もちろん、エバハート夫人はあのとおりの人だから、負けたからといって出ていく必要はない、少なくともウィンブルドンが閉幕になるまではいてくれていいって言ってくれるけどね、でもまあ、僕に言わせるなら、敗者はただ黙って去るべしといったところだよ」
そう言って笑ってから、藤堂さんは最後にこうあたしに言い残してくださっていた。
「僕は尾崎と一緒に他のホテルに移るけど……岡さんはがんばりなね。最後まで諦めずに――この最後までっていうのは、ウィンブルドンが閉幕になるその時までっていう意味だけど。そしたらきっと、恋のほうもうまくいくんじゃないかな」
観客席には他に、お蝶夫人や千葉さんやお蘭、それに両親の姿もあって……他にもわざわざあたしのことを応援するためだけにはるばる日本から来てくださったファンの方たちがいる。
その人たちの声援に答えるためにも――あたしは明日のモアランド戦で、絶対にいい試合をしてみせようと、そんなふうに自分を勇気づけながら深い眠りへ落ちていった。
>>続く。。。
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