legno-Diario-自閉症児は不思議生命体-

~自閉症のすーさん(小学1年生)といい婆さんのなんでもかんでも~

釣り下げられた正義の味方

2004-11-09 12:00:31 | すーさん
 昨日、無事に孫娘の七五三のお宮参りと記念撮影が完了。

 お宮参りは閑散とした仏滅の水天宮ですんなり終り、帰り道にすでに2回通っている写真館へ寄った。

 カメラマンは最初、3人の様相を見ながら

「まさか、今日撮影されるつもりでいらしたんじゃないですよね?」

 と、言った。

 確かに今日で3回目であるが、前回までの孫娘の様子では写真など撮れる状態ではなかった。

 「練習でいいんですよ」と爺婆は声を揃えて返事した。

 初回に孫娘の恐怖心をあおったのがストロボの光だったので、2回目まではストロボはたかずに練習をした。

 しかし、今日は午睡をしていないためにハイテンションな孫娘の様子を見てカメラマンは野心を燃やした。

 爺婆も赤鼻の孫娘の反応がいやにすんなりしたものだったので全てカメラマンとその奥様に一任した。

 やはり、固定カメラでのストロボ撮影になると得意の耳ふさぎをし始めた。

 「嫌ならいいんだよ・・・」と爺婆は孫娘の手を取りスタジオを後にする気持ちになっていた時、秘密兵器が登場した。

 ジャ~ン、本物の釣竿にブル下がっている正義の味方アンパンマン。

 見るからに情けない・・お姿・・・。

 しかし、そのアンパンマンを餌につけた釣竿はよくしなり、餌は孫娘の顔面3cm前まで来て、綺麗にUターンする。

 要するに「ほ~れほれ・・君の好きなアンパンマンをつかんでごらんよ」状態。

 最初は「アンパンマン」とあっさり言っただけで、決して耳ふさぎを止めなかった孫娘が、思い切りの良いカメラマンと奥さんの演出に釣られ始めてきた。

 これを爺婆はきっと鳩が豆鉄砲・・状態で見ていたに違いない。

 「爺さんと婆さんはす~さんのことを気にせずにずっと笑顔でいてくださ~い!!」とカメラマンに絶叫されて我に返った。

 す~さんがやっと釣リ下げられた正義の味方を片手を耳から離しつかもうとし始めた。

 容赦なくその瞬間にストロボがたかれシャッター音がスタジオに響く。

 何十枚ものシャッターが切られ、ストロボの閃光で爺婆の目の前が青白く麻痺した時、す~さんは両手を耳から離しアンパンマンをつかんだのだ。

 見事にその瞬間を撮影できた・・と思ったら、フィルムの巻き上がり音がした。

 ううぅ・・ダメか??

 「爺さん婆さん、笑顔ぉ~~!!」とカメラマンの絶叫は続く。

 フィルム交換をしている間にカメラマンと一緒に絶叫していた奥さんが間髪入れずに大きなカゴに入ったぬいぐるみを出してきた。

 カメラマンはそのぬいぐるみを1つ1つ取り出し、す~さんに

 「これは何ィ~?」と叫ぶ。
 「ドキンちゃん」とす~さんが答える。
 「そうだね、ドキンちゃんだねぇ~、じゃ、これは何ィ~?」
 と言って、ドキンちゃんを放り投げてプーさんを掲げる。
 「プーしゃん、プーしゃん」とす~さんが耳をふさぎながらもすぐさま答える。
  
 どのくらいの数の愛らしいぬいぐるみが投げられたことか?(笑)

 「す~さん、じゃこれは???」
 「・・・・・・・・」す~さん無言。
 「やばい」

 「ピノキオ!!」とつい婆さんは言ってしまった。

 す~さんはまだピノキオを覚えていない。

 「これで今日は終了だな」と爺婆が同時に表情筋の力を抜いた時、秘技が再登場した。

 そう、あの釣り下げられた正義の味方「アンパンマン」である。

 物凄い量のぬいぐるみの名前の正解で気を許していたす~さんは、釣り下げられたアンパンマンを満面の笑顔とカメラマンに負けない絶叫で追いかけ始めた。

 
 釣り下げられたアンパンマンが更に釣りあげたのが・・す~さんだったのである。

 職人技・・・拍手。

 久々に無口になった婆さんはとっとと支払いを済ませ、2人の職人に深深と頭を下げ帰路に着いた。


追伸:釣リ下げられていたのがアンパンマンではなく「ノンタン様」だったら、もう少し早く撮影が終了しただろう。
   いや、待て。釣り下げられていたのが「ノンタン様」だったら逆に「やめろ~」とす~さんは泣き叫んだだろうか?

   あのカゴの中に「ノンタン様」が入っていたらもっと早くに歓喜の声を張り上げただろうか?
   いや、待て。す~さんが「ノンタン!!」とよだれを垂らして叫んだ後に放り投げられる「ノンタン様」を見たら、もう二度と職人に心を開くことはなかったかもしれない。(笑)
 

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