白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

東北の中心で

2009-10-03 | 日常、思うこと
いったい仕事なのか、湯治なのかがわからない出張で、
東北の山深い温泉郷に4日程留め置かれた。
どれほど山が深いかは、下の写真をご覧いただければ
お分かりいただけるかと思う。




   





この山奥で一体どうしようか、と考えていた矢先に
地元の人に紹介されて、野菜ソムリエなる女性の作る
創作料理を初日の晩餐とした。
地産品の無農薬野菜を用いたサラダ、焼き玉蜀黍入り
ポタージュ、三元豚のしゃぶしゃぶ、手造り豆腐、
渡り蟹のリングイネ、旬の茸の土鍋炊き込みごはん、
ブルーベリーアイス、レモンと梨のジュレ、クリーム
ブリュレ、地酒を2合、しめて4000円程である。
決して洗練されてはいないのだが、どれをとっても
手作り感、手のぬくもりを感じさせる優しい味付けで
至極堪能、ほっこりとした。





無論、別の夜には気仙沼や宮古から直送される海の幸、
例えばエビの天ぷら、マグロ、ハマチ、ウニの刺身は
絶品だったし、
また、旬のキノコや里芋、牛蒡、人参がたっぷり入った
芋煮のようなキノコ汁も素晴らしい味だった。
土地の農家の女性が特産の米、梅干で握ったおにぎり、
蕨やゼンマイなどの山菜の煮物、漬物も実においしい。
どぶろくもおいしい。水道水すらおいしい。
しかし、かの創作料理を超える味には出会わなかった。
安心感を与える味といっても、それはお袋の味ではない。
その絶妙なバランスに、思わずうなってしまった。





東北のひとびとの純朴でありながら粘り強い人柄も
大変に魅力的だった。
また、芸術選奨を受賞したひとと語らう機会もあった。
その迫力のある、血の通った言葉の源泉を探るうちに、
柳田国男ではなく、宮本常一の名が出たところで、
得心した。
かくして、第三新東京市に近いカルデラ・火口湖を有する
地形の土地の中心で、気がつけば残酷な天使のテーゼを
絶唱することとなってしまったのであった。





翌日、宿への帰途、スナックからは平均年齢75歳程と
思しき集団の嬌声、歌うは長渕剛のとんぼ、
冒頭のコーラスはまるで嘔吐寸前の様相を呈しており、
その翌日の宿への帰途、スナックからは

「齢73、孫は欲しいが孫はない、だからせめて」

という切実な願い、重い重い念のこもった大泉逸郎の
「孫」が聞こえてきた。
日本の老人は元気で、金も持っている。
活力ある長寿社会とは言わないが、若者に無理ならば
少子高齢化対策や景気回復のため、彼らにもうひと肌
脱いでもらい、頑張ってもらうのも一手かもしれない。





それにしても、じんじんと効いてくる、湯冷めしない
温泉につかり、何だか身体が楽になった気がする。
今月は仕事で大阪と、沖縄へ赴く予定。





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