白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

いっさい過ぎた

2018-12-24 | 日常、思うこと
忙しくて、昼休みがおやつの時間にまでずれ込んだ日に、仕事場の裏の休憩室で、この秋から同僚になったひとと一緒になったことがあった。彼女は最近、他の部署で働く男性と結婚したばかりだから、話題も自然と、新しい生活や、結婚のことになった。彼女に、いつまであそんでるんですか?と問われたから、あそんでるつもりはないんだけどなあ、と、苦笑した。膝の上に載せる子どもも、肩を寄せる相手も、果てさていったい、どこにいるんだろうね、と。



休日のイオンは、家族連れでごった返していて、大柄の男が一人で歩くには肩身がせまい。少し贅沢な食材が入ったカゴを携えてレジに並んだとき、目の先、少し離れたところに、知っている顔が見えた。あまりいい顔はしていなかったから、気づかれぬように視線を背けた。顔の主は、どうやら、ずっと思い続けていた相手が、別の男性と結婚したばかりか、仕事柄、その婚姻届を受け付けて、新しい戸籍をつくらなければならなかったらしい、と、風の噂に聞いていた。



想像するだけでも地獄のようだから、想像したくもない。嫌な奴に会ってしまった。何だか呪わしいモノを見てしまった気がしたから、勘定を終えたら、早くその場を立ち去ろうと思った。ふ、と、顔を上げると、その知っている顔がこちらを見た。目が合った。うわ、と思って、あわてて品物を袋に詰め、足早にその場を離れた。



車に戻り、荷物を後部座席に置こうとして窓越しに中をのぞくと、その知った顔が、嫌な顔で、正対して窓に映っていた。驚いてドアを開け、急いで荷物を放り込んでから車に乗り込み、エンジンを掛け、前に出そうとバックミラーを見ると、その右端に、またしても、知った顔が、不吉に、こちらを向いて映っている。喫驚して、無我夢中で車を走らせた。



帰宅して、洗面台で幾度も顔を、赤くなるまで洗ったが、目の前には、知った顔が、びしょ濡れで映っていて、拭っても拭っても、ぐしゃぐしゃで、映り続けているのだった。


明石家サンタは何時からだったっけな。

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