白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

戸籍をつくる

2018-05-06 | こころについて、思うこと
もし、自分の願いを叶える戸籍を、自分の手で作れたら、 それはどんなに、幸せなことだろう。 大切に思ってきたひととの戸籍を作れるとしたら。 そのひとが幸せになれるように、これからずっと、 チカラを尽くしていけるなら。 でも、自分の手で、そうした自分の願いを永遠に叶わなくする戸籍を、 自分の手で作らなければならないなら、 僕はどうやって、自分を保てばいいのだろう。 . . . 本文を読む

Alternative: Keith Jarrett Solo etc...

2011-05-29 | こころについて、思うこと
5/26 近鉄特急アーバンライナーには、 デラックスシートという1+2列の席がある。 1人掛けの方に腰をおろして、 内田百「阿房列車」を読んでいるうちに 三重ははやくもうしろの遠くへ過ぎた。 青山トンネルの長い闇を過ぎて 伊賀路に入ったところで車窓の外を初めて眺めると、 空から地へと、灰暗の雲が垂れ込めていた。 銅の錆びたような色の新緑が、 瘤のように、 山々の総身を内側から突き伸ば . . . 本文を読む

予報では明日、数億の天使が降る

2009-06-14 | こころについて、思うこと
やっぱり僕は薔薇を届けたいのだと思う、 と、喉の底の水琴窟に、滴り落ちて、響く。 埋もれていく、埋もれていく、埋もれていく。 瑠璃光の寺の沈めるフィギュールの、 列柱回廊の、笑みを浮かべて銀傘を差す象眼猫。 埋もれていく、埋もれていく、埋もれていく。 床一面に散りかかった華の髪の死を一瞥もせず、 釉薬がかった肌をして、鏡のなかの女になる。 糸水銀、 . . . 本文を読む

おぼろ月に輪舞する子供達

2009-02-15 | こころについて、思うこと
学生時代のことだから、もう7年も前のことになる。 京都・東山の国立博物館では、レンブラントの展覧会が 大々的に開催されていた。 卒業論文の提出を控えた時期ではあったものの、 折角の機会を逸するのも口惜しくて、観にいこうと思い立って ある日、阪急石橋駅から十三駅まで出た。 しかし、京阪電車に乗るためにわざわざ淀屋橋まで出るのが 何とも億劫で、そのまま阪急京都線に乗り換えてしまった。 普段なら、予め決 . . . 本文を読む

くるぶし

2008-09-07 | こころについて、思うこと
祖父は、今生きていれば、今日でちょうど90歳。 21年も前に死んだから、もう殆ど覚えていない。 黄疸でからだは真っ黄色、黄河で泳いだようなふうになり、 歩くこともできないくらいに衰え弱って、 座敷を這いずって、病院からの迎えの車に乗るために 玄関のほうへそろそろ進んで消えていった、 その痩せたくるぶしを見たのが、僕の見た最後の姿だった。 おじいちゃん、よくなるよ、と、話しかけた覚えがある . . . 本文を読む

wing

2008-06-29 | こころについて、思うこと
心拍が刻む時間を標準時が追い越していった。 ************************** 高原にあって、薄明、霧を身にからめ取りながら 歩いていた。 濡れ草の匂い、深く、 斑点状に乾きはじめた土の道の端に残っている 青銅色をした水盤の面を翅虫が漂った。 ぼくはどうにも生まれ間違えたような気がした。 このあとを躓かずに歩くことがどうにも出来る 気がしなかった。 . . . 本文を読む

神戸にて

2008-06-01 | こころについて、思うこと
5月31日、6月1日、神戸に滞在した。 大学時代に所属していたサークルの同期のひとの 結婚披露パーティに招待されたためだった。 宿をホテルオークラに定め、 この二日間、神戸の街、三宮、元町、旧居留地、 メリケン波止場、ハーバーランド、北野を歩いた。 ロビンソン神戸での昼食、フォリフォリの贈り物、 メリケン波止場の散策、遊覧船での神戸港周遊、 モザイクから眺め見たコンチェルトウェ . . . 本文を読む

音の雲

2008-03-09 | こころについて、思うこと
空一面の音の雲 圧殺するような 鈍重な 鉛の 原爆の霞のような雲 それは午睡する漆黒の森を捻じ曲げる風渡りの鬼の腕 灰暗の雲 「光が群れ群れて重なり合い そのために暗くさえ感じられる 純粋な 自己矛盾 昏さ」              (リルケ) 掴み取ろうにも 指はすでにちりちりと風化してしまっているではないか 遮光 射光 地表を穿つその巨大な錐が この皮膚と心の 分厚い外殻を割 . . . 本文を読む