白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

緋の庵にて

2009-01-04 | 純粋創作
手指を凍らせてしまいまして あんまり愚かなことと途方にくれてしまいました けれど ひとたび焦ったり思い余ったりして 鉄瓶のなかの熱湯にでも差しいれてしまおうものならば おそらくは瞬時に黒く砕けてしまうことでしょうから 包帯でぐるぐる巻きにでもして 炭鉢の淵にかざしているより他にありませぬ *************************** いったいどうして凍らせてしまったも . . . 本文を読む

扉が開かない

2006-09-26 | 純粋創作
扉が開かない そのむこうがわの がらんどうの部屋に 食い散らかした小骨を 片付けにいきたいのに どうにも開かないのです いま ぼくは湿気た土埃を 壁から吸い込むので 胸が重くてつかえて びっしりとかびているようで とても苦しいのです この部屋の向こうの 緑色の空気だって 錆付いた銅の粉なのですから 大した違いはないのです けれど あちらに水盤を残してきたのです きらきらしている . . . 本文を読む

煉獄のなかで

2006-08-26 | 純粋創作
鋼鉄の橋が捻じれ曲がり 焔立つ祈りから崩れ落ちるのを守るために 狂おしく僕の骨が燃える 地底湖から血液が渦を巻いて飛龍のごとく上昇し この脊髄を洗い 叫び 口から噴出し ちりちりと 燐粉が 漆黒の闇に明滅する ああ、たったいま死を超える速度で破壊される僕を見てくれ 巨樹の樹皮のような疱瘡に覆われて 化身を引き伸ばしながら その内側へと巻き込まれる 僕の顔 仮面  この裂け目から覗い . . . 本文を読む

糸水銀の針の雨

2006-02-22 | 純粋創作
糸水銀の針の雨 降りしきる 糸水銀の針の雨 降りしきる 大宇宙の銅盤へ 糸水銀の針の雨 降りしきる 捲れあがる天蓋の傘へ 緋色の羅針が 剥がれ落ちる 糸水銀の針の雨 降りしきる 墜落するアンドロメダへ 碧玉の十字架上から 花火するペルセウスへ あの忌まわしき 破裂した朝 結界の化粧を 破るように 落下する 大星雲 . . . 本文を読む