白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

R.I.P.

2007-01-14 | 日常、思うこと
マイケル・ブレッカーとアリス・コルトレーンが
同じ日になくなるというのは、何かの奇縁だろうか。




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ぼくは、コルトレーンの最高の伴奏者は
マッコイでもモンクでもなく、アリスだと思っている。
コルトレーンの音を最も深く理解していたのは
間違いなく彼女だろう。




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ブレッカーの命を奪った白血病という病の恐ろしさは、
父からよく聴かされた。
33年前の夏、27歳で亡くなった父の親友の死因が
白血病だったからだ。
当時は骨髄移植や臍帯血移植といった治療法もなく、
まさしく不治の病だった。
山形から上京し、大学の夜間部に苦学して通い、
昼も夜も休みもなく働いていたそのひとは、
これからというときに、病に倒れたそうだ。
白血病は、過労が遠因となる場合が少なくないという。
親友の朽ちていく姿を見るのは、耐え難かったのだろう。
今も父は彼の話をすると、一節ごとに細かな沈黙を添える。




山田風太郎の人間臨終図鑑を読んでいてもわかるように、
ひとの死は若ければ若いほど悔しいもので、無念であり、
それを記述する人の筆も、鎮めきれぬ熱量を内蔵する。




ブレッカーは決して若くはない。
しかしそれは、コルトレーンが40歳、ドルフィーが36歳、
パーカーが34歳で亡くなっていることを考えれば、の話だ。
ロリンズの最新作におけるブロウの凄みを知っているだけに、
あと10年後の音を聴いてみたかった、と思う。

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