白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

華厳海頌

2007-03-18 | 純粋創作
車折に千切れ網張られて
血脈を 指弾き 選り好み
断裂、無窮の水の盤を
過誤の歴史が響きわたる
怒りの寄せ返す岸辺
大河の河口
葦 ささらと強く
向う脛を切り裂かれて
蒼空に鉄の味沁みると言う
泣きながら罪は言う
気象上辺の等圧の痛みに絶叫する
がんじがらめの雪
羅針盤
踏査今だならぬこのマニラの骸骨
枝上の琵琶を
しめやかに呪詛する
かろやかに呪詛する
この罪を泣きながら
誰が壕墓の骸じゃと晴れて歌う
轍が溶ける
十字が解ける
ぱらぱらと
限りない黄金の落葉のように
稀人の白髪の灯下を
踏みしめる者よ
下剤の効果あって
がらくたの水琴窟を
流れ降る下痢の氷雨
九千の列柱に串刺される静脈を
不具の処女が這い進む
襤褸を着て不具の
処女が這い進む蛞蝓の壁
施行不具者不落の壁
華厳瀑布の調節弁は閉じていて
不具者は断崖を這い登る
その螺鈿極彩の血液
悲田院の床に染み込んだ膿と吐寫物
落涙する椎茸よ
綺羅星と飛散する胞子よ
お前は傷にくちづけたか
膨れ上がる臓物を這いずって歩く原爆者の
爛れる眼の潤みのように
失明したハンセン病者の摘出された眼球の
食い破られた翼のように
我蛇 愚呪と軋む
ホルモン屋で焼かれる臓物を喰らうその口で
愛撫する口で
裂創にしゃぶりつく
日干し蛙のように
磔にされた四肢
灼熱に沸騰せしめられた
網膜に蒸着された宇宙の内壁
炎天 砂塵へと砕ききるような鮮烈な光度で
眼を透過して 伸び上がりつつ
陥落していく砂色の煉瓦壁を
砂糖のように舐め上げる
ダブリンの肥満児よ航海せよ
可逆の欺瞞が
レンジアップする亡霊のサラダボールよ
沈まぬ鉄格子を盗む骸骨は
マニラの泥に足を取られた僕を走り去って
あばら骨をしゃぶりつくしているぞ
下痢する氷雨降る灯台のなかの
硝子ウィンドウの売り子の太腿をねぶる
ベセルデュギャーシュ
ああ 華奢な新宿の移動日
京王線 橋本行き準急から
永山を過ぎ 多摩センターを過ぎると
飛田給に焔陥落するのを横目に
漆黒の海のなかに燦然たる瑠璃光の珊瑚が眠っている
八重山の岸辺に寄せ返す血球の果てに
孕まれる渚が血みどろに輝く
被虐の絵売れ
水杯に永訣して
母に眠り
世に眠れど
俺はここには死なぬ
伽視 ペテルギュース
空絶に燃ゆる
俺の骨をしゃぶるな
お前の星雲の中では
俺は永遠に産まれやしない
航海せよ
ろくすっぽ見当たらぬ人間を見ずに





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