本日お話しさせていただくのは、私が参加したとある9月のイベントにて目撃した、衝撃的なモノのお話です。
この業界に居るとたしょうの衝撃では動じないメンタルが身について参ります。
なぜなら、この業界は基本的に質の良し悪しとかホンモノニセモノとかに関わり無く、誰でもどんなモノでも人前で踊る事が出来てしまうためです。
たとえばカラオケでしたら、天城越えの伴奏が流れ出したのにラップを始めたら聴衆ドン引きですよね。
あるいは社交ダンスでタンゴの曲が流れているところでどじょうすくいを踊ったら周囲が凍りつきますね。
しかしこれらがすべて可能になるのです。
そう、Hulaならね。
…いえいえ、本当に可能な訳ではないですよ。良い子は真似したらダメですからね(笑)。
本当はやっちゃいけない事だし、たしょうなりとも知識を持っている人が見たらもちろんすぐ分ります。
でも、この業界ではマジでこれをやってしまう人がいます。
しかも悪い事に、そういう人達に限って営業努力が過剰で、あらゆる所で自分達の出演を売り込みゴリ押しするもんですから、目撃してしまうおそれが非常に高いといえます。
今日は、そういう目撃談の一つをお話しようと思います。
当該イベントはハワイ、とりわけフラがメインテーマでしたので、多くの実力派ミュージシャンやクムフラ、ダンサーの皆さんをハワイから招聘して開催され、すべてのイベントでそのゲストの皆さんが出演しておられました。
しかし、そこに唯一の例外が出現したのです。
発覚したのは前夜に配られた新聞でした。
翌日に開催されるメインのショー紹介の欄を読むと、おなじみのハワイからのゲストの名前の後に、小さく「フラハラウ・××××・×××のステージも合わせてお楽しみ下さい」という、聞き捨てならん一文がさりげな~く載っていたのです…!
背中を伝う嫌な汗。腹の底から沸き上がってくる悪寒。
凄まじいまでの嫌な予感が私の全身を支配しました。
果たして、その予感は的中してしまったのです………!!!
しばらくして、今回のクルーz…いえイベントのディレクターであるT氏(仮名)とお会いした時、彼は何だか非常に申し訳無さそうに、「ボクは全然知らない団体なんだ」「ボクはあなたの方がベストダンサーだと思う」といった浮気の言い訳みたいな事を英語で色々まくしたてていらっしゃいました。
「???」と思いつつ彼の話を聞いていて、やはり翌日のスケジュールにあるのは日本のどこかの教室名であり、彼らが主催者側に何らかのゴリ押しを行い、ステージ出演の機会をゲットした事を知りました。
まあ、日本の団体が踊る事自体はどうでもいいよ。
でも、前もって主催団体に「そういう(=日本人が出演者としてステージで踊るような)事は無いのですか?」と何度も問い合わせた私としては、何よこのダブルスタンダードは、と驚き呆れたのは事実です。
T氏(仮名)の名誉のために申し上げておくと、問い合わせに応じた相手は彼ではなく一般のスタッフだったので、今回の件は専らその人の無責任な応対にこそ非があります。
ともかく、メインのハワイからのゲストのショーの前座ではなく中に組み込まれてしまっているようなので、そこだけスルーする訳にもいかず、諦め半分、恐いもの見たさ半分で客席で本番の時を迎えました。
期待通りの素晴らしいショー(もちろんハワイのゲストの)がしばらく和やかに進んだ所で、MCのローナさんがいよいよ件の団体の紹介をなさいました。
き、来た。遂に来た。
素早く隣の四代目を確認します。
あああ良かった寝ている。
私は彼女に、ものの美醜の区別がつくまでは上質なものだけを見せて育てようと思っているので、万一マズいものが目の前で展開された場合、起きてられると困ります。
念のため後ろ向きにさせておきました。
そうこうしているうちに前奏がスタート。
先生と思しきソロダンサーが仰々しく舞台に登場しました。
………って、本当にダンサーと呼んでいいのこの人!?
どう見ても天照大御神のコスプレなんですが!?!?
そう、見出し画像に載せたイラストのまんま、彼女は日本神話における太陽の女神にしか見えない装束をまとっておいでだったのです。
後頭部から後光のようにツンツンと放射線状に伸びる花。
そしてドレスの色はもちろん白一色。
振り袖と見紛うほど長い袖にまず驚愕した後、視線をだんだん下に移して行くと、裾(の終点)が見当たりません。衝撃の長さです。いや、笑撃か。
っつーか、あまりにも日本神話しか想起させない雰囲気だったので、ホロクーというハワイ語をしばらく失念しておりました。
そう、「ソレ」は確かにホロクーでした。
ところがホロクーとしての機能を全く果たしておりません。
ステップを踏む際にも全く捌かれなかったソレは、曲が進む間に彼女の足元にぐっちゃらぐちゃらと絡まり、ただの邪魔な白い布の様相を呈しています。
そもそも、ホロクーとは着こなすのが非常に難しい衣装です。
特に裾が長くなればなるほど、踊り手の高い技能を要します。
それが一流のダンサーならば、全く恐るるに足りません。
たしょうの長さなら、ステップに正しく腰がついている(※「正しく腰を振っている」ではない事に注意)ダンサーであればいつもどおりにステップをこなすだけで美しく捌けますし、たとえ1mを超える長さであっても、今まで多くのメリモ出場チームが練習次第で美しく捌けるようになるという事を華麗に証明しています。
しかし。しかしこのアマテラス先生(仮名)のホロクーと来たら。
なぜ、彼女は無謀にもカレオ・トリニダッドさんとこのワヒネがミカさん在籍時代にメリモで着たあのドレスよりもさらに長いホロクーなどを着てしまったのか。
長さの点で似たり寄ったりの、谷亮子さんが結婚式で着けたバカ長いヴェールとは異なり、介添人に端っこを持ってもらう訳にもいかず、直進か直立か着席のみで済む訳でもなく、一人踊り続けねばならぬというのに。
まあ「アチャーヤッチマッター」感はあのヤワラヴェールも良い勝負ではありましたが。
ともあれ、裾が思うようにいかないせいなのか、はたまた客席からの容赦ない視線に耐えかねたのか、アマテラス先生は明らかにガッチガチにアガっている状態でした。
蛭子能収画伯の描く人物のような細かい汗が見えてきそうです。
つ、つらい。これはまた別の意味でつらい。
趣味で踊ってるダンサーなら、舞台で緊張するのは当然であって恥ずかしい事でもなんでもないけれど、先生は…プロはあんなあからさまにアガっちゃいかんだろ。少なくとも顔に出しちゃダメだ。
アマテラスコスプレにしか見えない服装、どんどん足元に絡まってゆくホロクーの裾、アガリ切った表情、それらの衝撃が少し収まってくると、更なる事実に気づきました。
服装と曲の間に微塵の関連性も見出せないんですが。
…むう~~~、確かにコンペでなきゃ何着て何踊っても自由なのだが、それにしてもここまで仰々しい装束でありながら、曲と全くの無関係ってどういうことなの。
ポリアフの曲踊る時に謎のオーガンジー肩に乗っけちゃう人の方がまだしも共感できます(笑)。
あああそうか、アレか。
このショーの前々日に某所へ寄ったことに対するオマージュなのか。
それなら納得だ。……ん?ホントに納得していいの、それ???
私が客席で一人悶々としているうちにソロ曲が終わり、2曲目に入りました。
え、2曲あるの…?というショックは、ゾロゾロと出て来た人々の装いを見て更なる衝撃にかき消されてしまいました。
だ、団体でホロクーっすか!?!?
そうです。次に出て来た団体さん(アマテラス先生(仮名)傘下の生徒さんだかインストラクターだかと思われる人々、6人程度だったが舞台が狭いので満員状態)の1列目の人々も、これまたべらぼうに長いホロクーをお召しになっているのです。
いやいや、先生が一人で広々と踊っててもあんだけ絡まりまくってたんだから、団体じゃもっとダメだろ…。
あんのじょう、中央に先程の振り袖を外した(なんかガウン脱いだみたいな感じだった。袖ではなく裾を外せば良かったものを…)先生が加わり、団体で踊り出したんですが、人口密度および足元でとぐろを巻くホロクーのためにカホロの分だけ左右に動くことすらままならない状態と化しました。
先生以上に緊張し切った表情の皆さん。
身動きするたびに絡んでゆくホロクー。
フォーメーション皆無の振付。
もう見ている方まで蛭子画伯のキャラみたいな細かい汗をかいてきそうなシチュエーションでした。
極めつけは、そのようにカホロすら困難な状態だったことが災いしてか、1列目と2列目がカホロで逆方向に動いてしまうという悲劇です。
どうやらアマテラス先生(仮名)が派手に振りを間違えたのが端緒だったようで、一瞬フリースタイルのような様相を呈しました。
もうここまで来ると直視することがあまりにもつらく、「こういうときどんな顔をしたらいいかわからないの」という台詞が頭をよぎるなか、おもむろに眼鏡を外しました(※注:私は眼鏡を外すと舞台上の物はだいぶ大雑把にしか見えなくなる)。
こんだけ書いてきましたが、私には特定の個人及び団体を中傷する意図は一切ございませんので、ここはひとつ前向きに、この経験を糧にどのように我が振りを直すべきか、そこを考察しましょう。
まず、ホロクーで踊る前にステップの最低限の基本は身につけること。これ絶対条件です。
とりわけ完全に裾を引いている長さになりますと、到底初級レベルで太刀打ちできるものではなくなりますので、充分な基礎練習を積んでからにしましょう。
こう書くとホロクーを敬遠したくなるかもしれませんが、逆に言えば、ホロクーは上達への近道ツールです。
手でスカート持って操作しなくても、ステップを踏むだけで裾が思い通りの方へ綺麗に流れてくれるようになり、なおかつ上半身が逆方向に逃げなくなれば、もうあなたは何を着てどこに出ても恥ずかしくないダンサーです。
プロアマに関わらず、上達を目指すダンサーならぜひ、ホロクーを「飼い馴らす」心意気で取り組んでいただきたいですね。
次に、衣装選択の場合は長さに注意が必要です。
長~いホロクーに憧れる気持はわかりますが、前述のように長ければ長いほど技術を要するため、自分がそのレベルに達していないと思ったら、たしょう地面につく程度の短いホロクーにしておいた方が無難です。
まあ私に言わせれば、仮にも先生やプロダンサーを名乗る人なら長さ1m台程度のホロクーぐらい自在に捌けるようでなきゃどうしようもないんだけど、もちろん普通の人はそこまで出来なくても何ら問題ありません。
無理しないで、素敵に踊れる範囲の長さをお勧めします。
少し裾を引くだけでかなりスタイルがよく見えるので、何が何でも長くしなきゃ、と思う必要は無いですね。
あと、長いホロクーを着て舞台で踊る場合、どんどんフォーメーションをしたり、振付の時点でホロクーが綺麗に流れるように計算して作らないとダメですね。
そういう意味で、前述のカレオさんのワヒネ出場曲などはかなり勉強になります。って丸パクはしちゃダメだぞ(笑)。
どれほど上手なダンサーが踊っても、ホロクーに適した振付でなければ上手く行きません。
今回の舞台の人達も、狭いのはわかるけど、頑張ればもう少しフォーメーションが組めたはずです。
ウチなんてあの銀座TACTのステージでバンドの前で踊った時だって左右総取っ替えの移動をしましたよ。
練習すれば結構何とかなるものです。
「ホロクーを綺麗に流す」という目的がなくとも、人前で踊る時は、お客様に楽しんでいただくことを常に念頭に置いて、飽きないよう隊形に変化をつけることがとても大切です。
ずっと同じ場所で前だけ向いて平面的に踊っていた方がそりゃラクかもしれませんが、あんまりそういう団体が多いと「フラはつまんない踊り」ってレッテルを貼られてしまいますからね。
その点、今回のイベントに出演したハワイからのゲストの皆さんは、くだけたコンサートでさえも事前の打合せなのかぶっつけ本番なのかわかりませんが必ずしっかりフォーメーションを入れていて、その点でも見習わねばと思いました。
それから、最後にもうひと毒吐いておくならば、各方面へのゴリ押しや売り込みで出演の機会をゲットするのは勝手ですが、押し売りの手腕を磨く前に、自分達の実力を冷静に考えること、そしてゴリ押しした以上は責任を持って恥ずかしくないレベルのものを提供すること、これは常識として弁えていただきたいですね。
ちなみに私は、次回そのイベントに参加しても自分が出演したいとは思いません。
そんなことに神経を遣うより、一流のハワイからのゲストのパフォーマンスをしっかりと眼に焼き付けたいです。
他の人に自分の踊りを見てほしいならメレフラの機会はいくらでもあるし、そういうので軽く踊った程度でも、分る人にはちゃんと分ってもらえます。わざわざゴリ押しで自分を目立たせなくてもね。
というわけでTさん(仮名)、もう私達に浮気の言い訳みたいな事おっしゃらなくて大丈夫です。どうぞご安心くださいませ(笑)。
この業界に居るとたしょうの衝撃では動じないメンタルが身について参ります。
なぜなら、この業界は基本的に質の良し悪しとかホンモノニセモノとかに関わり無く、誰でもどんなモノでも人前で踊る事が出来てしまうためです。
たとえばカラオケでしたら、天城越えの伴奏が流れ出したのにラップを始めたら聴衆ドン引きですよね。
あるいは社交ダンスでタンゴの曲が流れているところでどじょうすくいを踊ったら周囲が凍りつきますね。
しかしこれらがすべて可能になるのです。
そう、Hulaならね。
…いえいえ、本当に可能な訳ではないですよ。良い子は真似したらダメですからね(笑)。
本当はやっちゃいけない事だし、たしょうなりとも知識を持っている人が見たらもちろんすぐ分ります。
でも、この業界ではマジでこれをやってしまう人がいます。
しかも悪い事に、そういう人達に限って営業努力が過剰で、あらゆる所で自分達の出演を売り込みゴリ押しするもんですから、目撃してしまうおそれが非常に高いといえます。
今日は、そういう目撃談の一つをお話しようと思います。
当該イベントはハワイ、とりわけフラがメインテーマでしたので、多くの実力派ミュージシャンやクムフラ、ダンサーの皆さんをハワイから招聘して開催され、すべてのイベントでそのゲストの皆さんが出演しておられました。
しかし、そこに唯一の例外が出現したのです。
発覚したのは前夜に配られた新聞でした。
翌日に開催されるメインのショー紹介の欄を読むと、おなじみのハワイからのゲストの名前の後に、小さく「フラハラウ・××××・×××のステージも合わせてお楽しみ下さい」という、聞き捨てならん一文がさりげな~く載っていたのです…!
背中を伝う嫌な汗。腹の底から沸き上がってくる悪寒。
凄まじいまでの嫌な予感が私の全身を支配しました。
果たして、その予感は的中してしまったのです………!!!
しばらくして、今回のクルーz…いえイベントのディレクターであるT氏(仮名)とお会いした時、彼は何だか非常に申し訳無さそうに、「ボクは全然知らない団体なんだ」「ボクはあなたの方がベストダンサーだと思う」といった浮気の言い訳みたいな事を英語で色々まくしたてていらっしゃいました。
「???」と思いつつ彼の話を聞いていて、やはり翌日のスケジュールにあるのは日本のどこかの教室名であり、彼らが主催者側に何らかのゴリ押しを行い、ステージ出演の機会をゲットした事を知りました。
まあ、日本の団体が踊る事自体はどうでもいいよ。
でも、前もって主催団体に「そういう(=日本人が出演者としてステージで踊るような)事は無いのですか?」と何度も問い合わせた私としては、何よこのダブルスタンダードは、と驚き呆れたのは事実です。
T氏(仮名)の名誉のために申し上げておくと、問い合わせに応じた相手は彼ではなく一般のスタッフだったので、今回の件は専らその人の無責任な応対にこそ非があります。
ともかく、メインのハワイからのゲストのショーの前座ではなく中に組み込まれてしまっているようなので、そこだけスルーする訳にもいかず、諦め半分、恐いもの見たさ半分で客席で本番の時を迎えました。
期待通りの素晴らしいショー(もちろんハワイのゲストの)がしばらく和やかに進んだ所で、MCのローナさんがいよいよ件の団体の紹介をなさいました。
き、来た。遂に来た。
素早く隣の四代目を確認します。
あああ良かった寝ている。
私は彼女に、ものの美醜の区別がつくまでは上質なものだけを見せて育てようと思っているので、万一マズいものが目の前で展開された場合、起きてられると困ります。
念のため後ろ向きにさせておきました。
そうこうしているうちに前奏がスタート。
先生と思しきソロダンサーが仰々しく舞台に登場しました。
………って、本当にダンサーと呼んでいいのこの人!?
どう見ても天照大御神のコスプレなんですが!?!?
そう、見出し画像に載せたイラストのまんま、彼女は日本神話における太陽の女神にしか見えない装束をまとっておいでだったのです。
後頭部から後光のようにツンツンと放射線状に伸びる花。
そしてドレスの色はもちろん白一色。
振り袖と見紛うほど長い袖にまず驚愕した後、視線をだんだん下に移して行くと、裾(の終点)が見当たりません。衝撃の長さです。いや、笑撃か。
っつーか、あまりにも日本神話しか想起させない雰囲気だったので、ホロクーというハワイ語をしばらく失念しておりました。
そう、「ソレ」は確かにホロクーでした。
ところがホロクーとしての機能を全く果たしておりません。
ステップを踏む際にも全く捌かれなかったソレは、曲が進む間に彼女の足元にぐっちゃらぐちゃらと絡まり、ただの邪魔な白い布の様相を呈しています。
そもそも、ホロクーとは着こなすのが非常に難しい衣装です。
特に裾が長くなればなるほど、踊り手の高い技能を要します。
それが一流のダンサーならば、全く恐るるに足りません。
たしょうの長さなら、ステップに正しく腰がついている(※「正しく腰を振っている」ではない事に注意)ダンサーであればいつもどおりにステップをこなすだけで美しく捌けますし、たとえ1mを超える長さであっても、今まで多くのメリモ出場チームが練習次第で美しく捌けるようになるという事を華麗に証明しています。
しかし。しかしこのアマテラス先生(仮名)のホロクーと来たら。
なぜ、彼女は無謀にもカレオ・トリニダッドさんとこのワヒネがミカさん在籍時代にメリモで着たあのドレスよりもさらに長いホロクーなどを着てしまったのか。
長さの点で似たり寄ったりの、谷亮子さんが結婚式で着けたバカ長いヴェールとは異なり、介添人に端っこを持ってもらう訳にもいかず、直進か直立か着席のみで済む訳でもなく、一人踊り続けねばならぬというのに。
まあ「アチャーヤッチマッター」感はあのヤワラヴェールも良い勝負ではありましたが。
ともあれ、裾が思うようにいかないせいなのか、はたまた客席からの容赦ない視線に耐えかねたのか、アマテラス先生は明らかにガッチガチにアガっている状態でした。
蛭子能収画伯の描く人物のような細かい汗が見えてきそうです。
つ、つらい。これはまた別の意味でつらい。
趣味で踊ってるダンサーなら、舞台で緊張するのは当然であって恥ずかしい事でもなんでもないけれど、先生は…プロはあんなあからさまにアガっちゃいかんだろ。少なくとも顔に出しちゃダメだ。
アマテラスコスプレにしか見えない服装、どんどん足元に絡まってゆくホロクーの裾、アガリ切った表情、それらの衝撃が少し収まってくると、更なる事実に気づきました。
服装と曲の間に微塵の関連性も見出せないんですが。
…むう~~~、確かにコンペでなきゃ何着て何踊っても自由なのだが、それにしてもここまで仰々しい装束でありながら、曲と全くの無関係ってどういうことなの。
ポリアフの曲踊る時に謎のオーガンジー肩に乗っけちゃう人の方がまだしも共感できます(笑)。
あああそうか、アレか。
このショーの前々日に某所へ寄ったことに対するオマージュなのか。
それなら納得だ。……ん?ホントに納得していいの、それ???
私が客席で一人悶々としているうちにソロ曲が終わり、2曲目に入りました。
え、2曲あるの…?というショックは、ゾロゾロと出て来た人々の装いを見て更なる衝撃にかき消されてしまいました。
だ、団体でホロクーっすか!?!?
そうです。次に出て来た団体さん(アマテラス先生(仮名)傘下の生徒さんだかインストラクターだかと思われる人々、6人程度だったが舞台が狭いので満員状態)の1列目の人々も、これまたべらぼうに長いホロクーをお召しになっているのです。
いやいや、先生が一人で広々と踊っててもあんだけ絡まりまくってたんだから、団体じゃもっとダメだろ…。
あんのじょう、中央に先程の振り袖を外した(なんかガウン脱いだみたいな感じだった。袖ではなく裾を外せば良かったものを…)先生が加わり、団体で踊り出したんですが、人口密度および足元でとぐろを巻くホロクーのためにカホロの分だけ左右に動くことすらままならない状態と化しました。
先生以上に緊張し切った表情の皆さん。
身動きするたびに絡んでゆくホロクー。
フォーメーション皆無の振付。
もう見ている方まで蛭子画伯のキャラみたいな細かい汗をかいてきそうなシチュエーションでした。
極めつけは、そのようにカホロすら困難な状態だったことが災いしてか、1列目と2列目がカホロで逆方向に動いてしまうという悲劇です。
どうやらアマテラス先生(仮名)が派手に振りを間違えたのが端緒だったようで、一瞬フリースタイルのような様相を呈しました。
もうここまで来ると直視することがあまりにもつらく、「こういうときどんな顔をしたらいいかわからないの」という台詞が頭をよぎるなか、おもむろに眼鏡を外しました(※注:私は眼鏡を外すと舞台上の物はだいぶ大雑把にしか見えなくなる)。
こんだけ書いてきましたが、私には特定の個人及び団体を中傷する意図は一切ございませんので、ここはひとつ前向きに、この経験を糧にどのように我が振りを直すべきか、そこを考察しましょう。
まず、ホロクーで踊る前にステップの最低限の基本は身につけること。これ絶対条件です。
とりわけ完全に裾を引いている長さになりますと、到底初級レベルで太刀打ちできるものではなくなりますので、充分な基礎練習を積んでからにしましょう。
こう書くとホロクーを敬遠したくなるかもしれませんが、逆に言えば、ホロクーは上達への近道ツールです。
手でスカート持って操作しなくても、ステップを踏むだけで裾が思い通りの方へ綺麗に流れてくれるようになり、なおかつ上半身が逆方向に逃げなくなれば、もうあなたは何を着てどこに出ても恥ずかしくないダンサーです。
プロアマに関わらず、上達を目指すダンサーならぜひ、ホロクーを「飼い馴らす」心意気で取り組んでいただきたいですね。
次に、衣装選択の場合は長さに注意が必要です。
長~いホロクーに憧れる気持はわかりますが、前述のように長ければ長いほど技術を要するため、自分がそのレベルに達していないと思ったら、たしょう地面につく程度の短いホロクーにしておいた方が無難です。
まあ私に言わせれば、仮にも先生やプロダンサーを名乗る人なら長さ1m台程度のホロクーぐらい自在に捌けるようでなきゃどうしようもないんだけど、もちろん普通の人はそこまで出来なくても何ら問題ありません。
無理しないで、素敵に踊れる範囲の長さをお勧めします。
少し裾を引くだけでかなりスタイルがよく見えるので、何が何でも長くしなきゃ、と思う必要は無いですね。
あと、長いホロクーを着て舞台で踊る場合、どんどんフォーメーションをしたり、振付の時点でホロクーが綺麗に流れるように計算して作らないとダメですね。
そういう意味で、前述のカレオさんのワヒネ出場曲などはかなり勉強になります。って丸パクはしちゃダメだぞ(笑)。
どれほど上手なダンサーが踊っても、ホロクーに適した振付でなければ上手く行きません。
今回の舞台の人達も、狭いのはわかるけど、頑張ればもう少しフォーメーションが組めたはずです。
ウチなんてあの銀座TACTのステージでバンドの前で踊った時だって左右総取っ替えの移動をしましたよ。
練習すれば結構何とかなるものです。
「ホロクーを綺麗に流す」という目的がなくとも、人前で踊る時は、お客様に楽しんでいただくことを常に念頭に置いて、飽きないよう隊形に変化をつけることがとても大切です。
ずっと同じ場所で前だけ向いて平面的に踊っていた方がそりゃラクかもしれませんが、あんまりそういう団体が多いと「フラはつまんない踊り」ってレッテルを貼られてしまいますからね。
その点、今回のイベントに出演したハワイからのゲストの皆さんは、くだけたコンサートでさえも事前の打合せなのかぶっつけ本番なのかわかりませんが必ずしっかりフォーメーションを入れていて、その点でも見習わねばと思いました。
それから、最後にもうひと毒吐いておくならば、各方面へのゴリ押しや売り込みで出演の機会をゲットするのは勝手ですが、押し売りの手腕を磨く前に、自分達の実力を冷静に考えること、そしてゴリ押しした以上は責任を持って恥ずかしくないレベルのものを提供すること、これは常識として弁えていただきたいですね。
ちなみに私は、次回そのイベントに参加しても自分が出演したいとは思いません。
そんなことに神経を遣うより、一流のハワイからのゲストのパフォーマンスをしっかりと眼に焼き付けたいです。
他の人に自分の踊りを見てほしいならメレフラの機会はいくらでもあるし、そういうので軽く踊った程度でも、分る人にはちゃんと分ってもらえます。わざわざゴリ押しで自分を目立たせなくてもね。
というわけでTさん(仮名)、もう私達に浮気の言い訳みたいな事おっしゃらなくて大丈夫です。どうぞご安心くださいませ(笑)。