
「誕生月なのにチグハグ。金運は抜群の大吉」
新聞に今日の運勢が出ていた。お金が入る運はどう考えても大吉と喜べる可能性はない。それなら、「金運」もその使い道によって自分に返ってくるなら払い甲斐ありとしよう。そう決めて現金を用意して、「絵本で英会話」の講座に向かった。
戴き物のちゃっちい電子辞書では事足りずで、二度引きの手間を余儀なくさせられることが多くある。結局は「デイリーコンサイス英和和英辞典」の出番が増えるわけだ。これで十分なのだ。ちょっと指に唾つけて、なんてことは不要にページを繰れるだけ使い込んである。単語だって苦もなく引く。利用範囲を考えても自分には十分な辞書だった。
それでもだ、手持ちのお粗末な代物と比べても、電子辞書の手軽さには押され気味だ。なんと言っても小さな字を読みとるための眼鏡はいらない。長いこと我慢半分で来たが、「金運は抜群の大吉」に誘われた。こんな日はそうそう巡ってこないだろうと。
講座終了後、電子辞書を買いに京都駅へ向かう意思を持って別れた。が、なぜかふらっと入ってしまったいつもの書店。あるではないか。
女性随筆集がこの2月から刊行されているが、シリーズの第6巻目は「宇野千代・大庭みな子」さんで、小池真理子さんによって作品が精選されている。これまで食わず嫌いしていた宇野千代さんの作品を読む機会だと思っていたので、辞書よりも先に手が出てしまった。
用意した現金に手をつけるほどのこともない。なのに、今日はもうすっかりそこで気持ちが変わってしまった。あんなに「金運抜群の大吉」デーに買い時だと気持ちを固めていたにもかかわらず、いともたやすく心変わりだった。電気店に行くこともなく帰途についた。
楽しみを少し先延ばしにしただけで、十分この紙の辞書で用は足せる。そうは思ってみるが、せっかくの「金運大吉デー」も運勢どおりのチグハグさで終わってしまった。