伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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財政破綻後 どうしたらいいのか

2018-11-23 20:32:25 | 政治・政策・経済
2018.4 日経新聞出版社発行「財政破綻後」

日本で財政破綻が起きた場合、社会に何が起こるのか。
どう立て直せばよいのか。
大学教授らが分析した本。

ポイントをいくつかご紹介し、
あわせて私のコメントも書きます。

このままでは日本の財政はもたない、
と考えている方は必読です。

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日本の財政運営がこのまま永続できる可能性は低い。
財政破綻が起きる可能性はゼロではない。
破綻が起きたとき、日本に何が起きるのか。
そこからどう社会制度を立て直すのか。

 p80 日本国債のパラドックス
 1990年代以降(中略)財政赤字で生まれた国債を
 国内で安定的に消化できたのは、国内で投資がまったく
 盛り上がらなかったためである。
 (中略)
 貯蓄が積み重なり、それが結果として国債が吸収される
 余地を与えてきたということになる。

(多田コメント)
 私も独自の分析で、国民の貯蓄を原資に日銀が国債を買っている
 循環構造があるのではないかと2016年4月にブログで指摘しました




 p86 いつ破綻するのか
 (いろいろな突発的要因も考えられますが)構造的な破綻が
 いつ顕在化するのだろうか?
 一つは国内で国債を消化しきれなくなったときだ。
 これは、①日銀がこれ以上、国債を買い支えられなくなるとき、
 あるいは、②公的債務が国内金融資産を超過した時とされる。

 これから急速に高齢化が進展し、団塊世代が老後の生活費として
 貯蓄の取り崩しを本格化させるなか、これまでのように家計マネーが
 国債を安定的に吸収できるとは限らない。
 いずれ政府の借金が完全に家計貯蓄を食いつぶしてしまう時期が
 来るかもしれない。


 p88
 ここで財政の破綻確率について感えよう。
 具体的には国債を国内の金融資産で吸収しきれなくなる状況を
 破綻のトリガーとみなす。(中略)
 公的債務が家計金融資産に占める割合が90%に達する段階を
 「財政破綻」の閾値と仮定した。(中略)
 2025年の破綻確率はベースラインで9%弱である。
 他方、2035年の財政破綻確率は衝撃的だ。
 同年の確率は概ね100%に上る。

(多田コメント)
金利の上昇など、財政破綻のきっかけはいろいろありえますが、
何も突発的なことが起こらない場合でも、
物理的に国内で国債で消化できなくなるのが2035年です。
もちろん、それまで破綻しないという保障はありあせん。



 p90 破綻時に何が起きるのか?
 財政危機は「国債の未達」というかたちで始まるだろう。
 未達とは(理由はなんであれ)投資家や金融機関からの応募額が
 この発行額に満たずに国債が売れ残る状況である。
 その分、政府は資金を確保できなくなる。

 p91
 未達のショックで国債価格が下落(金利の上昇)するならば、
 国債を大量に保有する金融機関のバランスシートは大きく
 毀損してしまう。日銀の試算によれば1%の金利上昇で
 金融機関が被る損失は約6兆3000億円とされる。

(多田コメント)
 国が財政破綻しなくても、国債の金利が上昇するだけで
 銀行などは倒産の危機につながります。
 自分は国債を買っていないから関係ないと思っている方も
 いらっしゃるかもしれませんが、自分がお金を預けている
 銀行が倒産したら預金はどうなるでしょうか?
 あわてて下ろしに走るならば、とりつけさわぎとなり、
 預金封鎖になるかもしれません。



 p93 IMFは救済してくれるのか?
 IMF(国際通貨基金)は日本を救済できるのだろうか?
 現在、IMFが融資可能な総額は約100兆円とされる。
 とはいえ一国の救済に全額はあてられない。
 わが国の国債の発行額は借換債だけで年間120兆円
 を超えている。


 p100 次善の策
 財政危機は起きないに越したことはないが、
 いったん危機が生じたならば、問われてくるのは 
 危機への対応である。(中略)
 危機を防止するべく財政再建を講じることが
 プランA=最善ならば、
 危機後の対応策がプランB=善後策にあたる。

(多田コメント)
 政権与党の自由民主党はそのホームページで、
 財政破綻した時の対応策を掲載しています。
 「X-day プロジェクト報告書
 先進国の中で、自分の国が財政破綻した時の対応策を
 政権与党がホームページで掲げているのは
 極めて珍しいのではないでしょうか。
 準備がいいのか、それとも開き直っているのか。 



 p101 財政破綻後の対応(要約して書きます)

 第1段階 資金繰りが悪化した時の措置=時間稼ぎ
      積立金を取り崩す特別会計を決めておいたり、
      支払いを先送り、執行停止する科目を決めておく

 第2段階 増税と歳出カット=止血処置(トリアージ)
      防衛・警察費・生活保護等は残して他の公共サービスは削減
     〇公務員・議員の給与は3割減
     
 第3段階 p198 赤字体質の改善・構造改革 

(多田コメント)
公務員給与や退職金カットについては、
国会でも取り上げられたネバダレポートがあります
給与の3割カットは、物価が変わらなくても厳しいですが、
きっとその時は物価は急上昇しています。
地方を含めた公務員については給与カットだけでなく、
人員削減が大幅に行われると思います。
公務員になりさえすれば、一生安泰と思っている方も多いかもしれませんが、
現在でも、予算が減少すれば意に反して免職されることもあり得ます。
  地方公務員法
  第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、
   これを降任し、または免職することができる。
  四 職制もしくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合




 p250 経済成長と新しい社会契約
 世代間協調問題(現世代が政策実務コストを支払うと、
 将来世代がターンを受け取るような政策課題)を
 通常の民主主義の政策システムでは解決できない

 世代間協調問題を解決するため、
 将来世代の利益を代表する行政機関などの組織、
 すなわち「仮想将来世代」を創設すべき

 p272 世代を超えた時間:民主主義の弱点
 現在の財政再建コストと、将来の財政破綻のコストとを、
 政治の場で比較しようとしても、現在世代と将来世代とは
 同じ時間を生きていないのだから、議論の席に着く
 ことも物理的にできない。

 民主主義は、超長期の「時間」の扱いがきわめて不得手
 である、ということを端的に示している。
 さまざまな利害対立について関係者が熟議して
 最後は多数決によって政治決定を行うという
 民主主義の仕組みは、本質的に「全ての関係者が
 同時点において存在している」ということが前提

(多田コメント)
昨日のブログでご紹介した
財政制度等審議会の建議書のことばを思い出しました。
 「将来の納税者の代理人でありたい」 
きっと会長の榊原さんは、この「財政破綻後」の本を
読まれているのでしょう。


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