踊る小児科医のblog

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混合診療「実質解禁」へ

2004年12月16日 | こども・小児科
タイトルを「原則解禁」は見送られたが…としようかと思ったのですが、内容的にはかなり踏み込んだ「現行制度下の実質解禁」であり、さらに新たな「保険導入検討医療」(仮称)と「患者選択同意医療」(仮称)の導入なども含まれていて、今後も攻防戦は続くと考えて間違いなさそうです。とりあえず、未承認の抗がん剤使用時に全額自費診療になる問題など、現行制度化の矛盾が是正されることにはなり、民間保険会社の参入を認めるような事態にはならず(←だからオリックス宮内会長は怒っている)、厚労省のコントロール下で行われることにはなりましたので、落としどころとしてはこのあたりだろうとは思います。

議論を丸投げしたコイズミ首相が「画期的」と自画自賛しているのには腹が立ちますが、このラインを見込んでの「解禁指示」だとしたら恐ろしい気がします。(が、そんなこと何も考えていなかったことは途中での発言でも明らか)

日医の植松会長も「合意の内容については、一部満足とはいえない部分もありますが、総合的にみて、われわれの主張に沿っていると理解できます」とコメントしていますが、全国600万国民の署名もあって両院本会議で「混合診療導入反対請願」が全会一致で採択されたこともあり、最低限の防御ラインは守ったと言えるのでしょう。

ちなみに、今回の議論について5段階で、
 5 混合診療の全面解禁(アメリカ型医療)
 4 規制改革会議の主張(解禁)
 3 厚労省・日医の主張(特定療養費制度の拡充)
 2 現行制度(保険診療+特定療養費制度)
 1 全て保険で(混合診療の全面禁止)
と考えると、おおよその評価がしやすくなります。

いずれにせよ、今回の決着で、「混合診療解禁」に伴う弊害(なぜ混合診療はダメなのか?に書きました)が実質的に入り込んでくることになるので、きちんと対応していかないと大変なことになりかねません。

いわゆる「混合診療」問題について(厚労省)

混合診療問題、“実質的解禁”で決着へ 一定水準の要件満たした医療機関で併用可能に(日経BP)

 政府は12月15日、混合診療について「原則解禁」は認めず、特定療養費制度を改変することで「実質的に解禁」することを決めた。現在の特定療養費制度では認められていない「必ずしも高度でない先進技術」を用いた医療行為においても、一定水準の要求を満たした医療機関が届出を行うことで、保険診療と保険外診療の併用が可能になる。
 混合診療問題をめぐっては、規制改革・民間開放推進会議が「一定水準以上の医療機関であれば原則解禁」を求め、厚生労働省が「一定の要件を医療技術ごとに設けた上で、医療機関ごとの届出により認めるべき」とし、対立が続いてきた。今回の決着は、厚労省の主張に沿った形での決着となった。
 具体的には、厚労相のもとに設ける専門会議により、医療技術ごとに安全性などを確認して、医療機関に求められる一定水準の要件を設定。この要件を満たした医療機関が届け出により、当該技術の保険診療と保険外診療の併用を可能にする。一連の手続きを迅速化するために、要件は医療機関からの申請から最長でも3カ月以内に決定する。
 国内未承認薬の使用や制限回数を超える医療行為についても、「適切なルールの下に」保険診療との併用を認める。国内未承認薬については2004年度中に、必ずしも高度でない先進技術および制限回数を超える医療行為については、2005年夏までにできるものから順次実現する。
 また、特定療養費制度は2006年の医療保険制度改革の中で廃止し、保険導入の有無の視点で再構成する。具体的には、保険導入のための評価を行う「保険導入検討医療」(仮称)と、保険導入を前提としない「患者選択同意医療」(仮称)に再構成する。前者には高度先進医療、必ずしも高度でない先進技術、国内未承認薬が盛り込まれ、後者には回数制限のある医療行為や、快適性・利便性に関するものなどが含まれる。(川崎慎介、日経ヘルスケア21)