踊る小児科医のblog

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使用済みの針で予防接種/弘前

2004年11月30日 | こども・小児科
東奥日報のサイトを見ていたらこのようなニュースがあって驚きました。3つの点から、本来ならあり得ない事故と言えます。
1)使い捨て(ディスポ)の注射器を使って、使用済みは足下の注射器入れの容器に捨てるようにする。
2)なんだって今どき弘前市のような都市で二種混合が集団のままだったのか?
3)うっかりしていた、注意してやるようにする、というレベルは事故防止の観点からは意味がないコメント。うっかりしたり、注意力散漫になった瞬間でもミスが起きない(あるいは事前に発見できる)システムをつくることが必要。

使用済みの針で予防接種/弘前
 弘前市の城西小学校で行われた二種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)の集団予防接種で、男性医師が誤って、一度使った注射器をそのまま次の男子児童に使う事故があったことが三十日までに分かった。
 感染症の疑いもあるため、男子児童は市立病院で血液検査を受けたが、異常はなかった。
 集団予防接種は市の事業で、医師は弘前市医師会の協力で派遣されている。今回の二重混合ワクチンは六年生が対象。市内三十八校のうち、二十九日までに十八校で行われた。
 城西小の事故は十八日に起こった。市によると、通常は一人に一本の注射を使うが、男性医師は、前の児童に刺した注射器をそのまま次の男子児童に使ってしまった。医師は「うっかりしていた」と説明しているという。
 事故を受け、市と医師会は児童の保護者に対し謝罪。医師会は、男性医師を予防接種の担当から外した。市健康推進課の藤本裕彦課長は「あってはならない事故で、重く受け止めている。何がミスを誘発したのか作業を検証したい」と話した。

大相撲の座布団投げにみるモラルの喪失

2004年11月29日 | SPORTS
いつからか記憶にないほど朝青龍の一人横綱が続き、結びの一番をとり続けているわけですが、何度か気になったのは取り組み後に座布団が乱れ飛ぶこと。白鵬に敗れた一番のような「番狂わせ」や、千秋楽の魁皇戦のような場合はわかるとしても、14日目に千代大海を破って優勝を決めた一番。確かに私も若の里と千代大海に頑張ってもらって千秋楽まで優勝決定を持ち越して欲しかったが、少なくとも優勝8回(今回で9回目)の大横綱が実力を出し切って優勝を決めた場面で、自分が応援していないからといって横綱や土俵に向かって座布団を投げ込むという行為はいかがなものか。
誰も問題にしていないようなのですが、それとも「これでいいのか?」疑問です。

大相撲:朝青龍、2場所ぶり9度目の優勝

現在と将来の世代をたばこの害から守るためのアピール

2004年11月28日 | 禁煙・防煙
11/27に、たばこ規制枠組条約(FCTC)発効記念の催しが開催されました。私は出席できませんでしたが、FCTCに沿った国内での対策に向けて現状と今後本格化する活動などについて話し合われたようです。特記すべきこととしては、警察庁が「国民的合意を得て、未成年が買えるタバコ自販機は撤廃すべきと考えている」と初めて公の場で明言したことなどがあり、「現在と将来の世代をたばこの害から守るためのアピール」が採択されました。今後は、これまでのナマクラ対策ではなく、国際条約にのっとったタバコ抑制政策への転換が現実化します。八戸市のようなエセ対策は糾弾されることになるでしょう。

たばこ規制枠組条約・発効記念の催し   
-現在と将来の世代をタバコの害から守るために-


■現在と将来の世代をたばこの害から守るためのアピール

 紙巻たばこが、肺がんをはじめとする多くのがんや虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患などの原因であることは、多くの科学的証拠によって明らかである。しかし、日本では、たばこ規制の取り組みが遅れたため、成人男性の喫煙率はいまだに欧米の約2倍の高さにとどまっており、2000年には日本全国で11.4万人が喫煙によって死亡したと推定されている。
 最近になって、ようやく日本においても変化が見られ始めた。2003年5月の健康増進法の施行以降、第25条の受動喫煙防止の規定を受けて、公共の場所や職場の禁煙が進みつつある。また、衆議院、参議院での全会一致の承認を得て、本年6月、日本政府は「たばこ規制枠組条約」を批准した。条約は40カ国が批准して90日で発効するが、11月27日現在168カ国が署名、36カ国が批准しているので、発効は間近である。これに備えて、政府は6月に「たばこ対策関係省庁連絡会議」を設置した。また、成人男性の喫煙率が2002年に49.1%となって以降50%を割り、2004年には男女合わせての成人の喫煙率が初めて30%以下の29.4%となった。いまや、「たばこを吸わないのが当たり前の社会」へと人々の意識が変わる節目にある。
 「たばこ規制枠組条約」の目的は、「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康、社会、経済に及ぼす破壊的な影響から現在および将来の世代を保護する」ため、各国が国内外で実施すべき規制の枠組みを提供することにある。条約には、たばこ価格・税の引き上げ(第6条)、たばこの煙にさらされることからの保護(第8条)、たばこ製品の包装及びラベルでの警告表示の強化(第11条)、たばこの広告、販売促進及び後援の包括的禁止(第13条)、禁煙治療の普及(第14条)、未成年者への販売の禁止(第16条)、経済的に実行可能な転業への政府による支援の提供(第17条)などの規定があるが、これらの対策を誠実に実行することは「現在と将来の世代をたばこの害から守るために」必須の要件であり、国際的な約束でもある。
 以上の認識に立ち、本日の催しに集まった私たちは以下のことを行うことを表明する。

1. 枠組条約に盛り込まれたたばこ規制の諸対策の一日も早い実現を政府等に求めること。
2. たばこと健康に関わるNGO・NPOは、多くの人々や関係組織と協力して、枠組条約の各種の法的規制や環境整備を最大限に実現し、たばこ消費を減らすために、それぞれの専門性を生かし、いっそうの力を尽くすこと。
3. 今後さらに相互の連携を深め、政府や議会、報道機関をはじめ、関係組織に対し、たばこの害のない社会の実現に向けて積極的な提言や働きかけを行うこと。

2004年(平成16年)11月27日
「たばこ規制枠組条約発効記念の催し」出席者一同
(連絡先:実行委員長 大島 明(日本禁煙医師歯科医師連盟会長))

【主催】子どもに無煙環境を推進協議会,日本禁煙推進医師歯科医師連盟,全国禁煙・分煙推進協議会,日本医師会,日本歯科医師会,日本看護協会,日本薬剤師会,日本対がん協会,日本学校保健会,たばこと健康問題NGO協議会<がん研究振興財団,結核予防会,健康・体力づくり事業財団,日本食生活協会,日本対がん協会,母子衛生研究会,日本公衆衛生協会,日本心臓財団>,国際対がん連合(UICC)日本国内委員会
【後援】内閣府,警察庁,法務省,外務省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省,日本医学会,日本歯科医学会,日本PTA全国協議会,禁煙推進議員連盟,日本学校保健学会,「喫煙と健康」WHO指定研究協力センター,NHK

バンド・エイドふたたび

2004年11月26日 | ART / CULTURE
バンド・エイド20年ぶりにレコーディング。ライブ・エイドはDVDで発売。
ポール・マッカートニーは歳を理由に歌うことを拒否されたとのこと。(前も出てなかったよね)
ポールはNFLスーパーボールにも出演予定。(たしかに胸ポロリの心配はない)

ボノとかボブ・ゲルドフとか、懐かしの20年前ではありますが、例によって批判もまた出ているようです。まあ、今回は買わないでしょうね。前のはCDではなくアナログレコードで持ってますけど。(一時的なチャリティではなく継続的に毎月ユニセフに寄付しています)

「バンド・エイド」再始動 スーダン・ダルフール地方救済で
 【ロンドン26日共同】紛争が続くアフリカのスーダン・ダルフール地方の飢餓救済のため、元ビートルズのポール・マッカートニーさんのほか英国を代表する若手ミュージシャンら約40人が集まり、1984年の大ヒット曲「ドゥー・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」を再レコーディング、英国などで29日にシングル盤が発売される。
 84年に英ロックスターらが同曲を歌い、英国だけで350万枚を売り上げたチャリティー・プロジェクト「バンド・エイド」から20年を記念し「バンド・エイド20」と名付けた。アフリカ問題を重要課題とする意向のブレア政権もCDなどの付加価値税分を還元して協力する。
 ロックバンド「コールドプレイ」のクリス・マーティンさんが歌い出し、ほかのミュージシャンが次々続く。マッカートニーさんはベースを担当した。

麻疹・風疹(MR)2回接種は2006年度から

2004年11月25日 | こども・小児科
以前から院内報でお伝えしていたMRワクチン2回接種ですが、報道によると、2006年度(あと1年半)で導入される見込みのようです。現在青森県でも検討が進められている予防接種の全県広域化とあわせて、やっと麻疹制圧に向けた準備が整うことになります。WHOでこのほど定めた西太平洋地域の麻疹排除目標は、2012年。ギリギリで間に合うかどうかですね。

予防接種:はしか・風疹、生後90カ月以内に2回 患者減り免疫低下--厚労省検討(毎日)
 厚生労働省の「予防接種に関する検討会」(座長、加藤達夫・聖マリアンナ医大教授)は24日、はしか(麻疹(ましん))や風疹の予防接種を現在の1回から2回に増やす方針で合意した。大人になってからも免疫を維持し、国内から病原体を排除して散発的な流行を防ぐには、生後90カ月以内に2度の接種が必要と判断した。早ければ06年度から実施する。
 はしかや風疹は予防接種法に基づく省令で、子どもの間に1回の定期接種が推奨されており、はしかの場合、現在は1歳児に接種するケースが多いという。
 以前は1回接種すれば、感染しても症状の出ない不顕性感染を繰り返して体内の抗体が増え、大人になっても免疫が維持されると考えられてきた。しかし現在は、予防接種が普及し患者数が減少したため不顕性感染の機会が減り、徐々に体内の免疫がなくなっているとみられている。このため、散発的な流行を抑制できないでいることが、専門家の間で問題視されていた。
 検討会では、2回接種に変更することで、大人になっても発症を防ぐのに十分な免疫を維持することが、散発的な流行を抑えるには不可欠との認識で合意。生後90カ月以内に2回接種することを基本に、具体的な接種年齢は今後、検討していく。また承認申請中のはしか・風疹混合ワクチン(MRワクチン)が認可された場合、接種が効率的にできるとして導入を検討することとした。

小学生誘拐殺人~湊高台も注意報から警報へ

2004年11月19日 | こども・小児科
またしてもあってはならない事件が起きてしまいました。このような犯人は断じて許すことはできませんが、今の日本では同じような事件が起きることを想定して生きていかなくてはならないのでしょう。遺体が発見された平群町のお隣の三郷町というところに、中学生のとき住んでいたので、全く他人事とは思えません。実を言うと、数年前に大きな事件のあった池田市にも住んでいたことがあり、その小学校は通学路の途中にありました。こんな形で思い出の地が悲しいニュースの場になることは、もうお仕舞いにして欲しいと心から願います。

ところで、他人事ではないと書いたのは、八戸でも白山台などで変質者・不審者が続出していると伝えられていますが、当院のある湊高台でも数年前からそういう話をきくようになり、今年は何件も不審者だけでなく手を引っぱられるなどの未遂事件が発生しているのです。

季節的にも、夕方日が暮れる時間が早くなっているし、住宅街ですが外の人通りはほとんどないので、学校や子どもへの注意だけでなく、地域を上げた取り組みが必要なのですが。。

なぜ混合診療はダメなのか?

2004年11月16日 | こども・小児科
一つ前の市民公開講座のところに書いた「混合診療」ですが、なかなか理解していただくのが難しい問題で、国民が知らないうちに、気がつかないうちに話を進めてしまおうという魂胆のように思われます。院内報に2カ月続けて書いて患者さんに配布しているもので(HPにも掲載していますが)、こちらにも引用させていただきます。市民公開講座の石原先生の抄録も、それほど長いものではありませんので、是非お読み下さい。

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● なぜ混合診療はダメなのか? (院内報2004年11月号より)

 皆さまにご協力いただき、多数の署名をいただきました。これは全国の医療機関から日本医師会に集められ、おそらく一千万人レベルの署名になるはずですが、これだけではまだ力不足で、混合診療導入の本当の目的を国民すべてが熟知し、反対の世論をもっと盛り上げなければいけません。

 「混合診療」といっても、かなりわかりにくい話です。誰が儲かって、誰の負担が増えて、誰の負担が減るのかを、箇条書きにしてみます。

1)医療費全体のパイは増える(医療費抑制策にはならない)
2)医療費は保険診療と保険自費外診療にわかれる(=混合診療)
3)保険診療の枠は増えないだけでなく、縮小する(政府と企業の負担減)
4)国民の社会保険料は減らない(減らないだけでなく、必ず増える)
5)結果的に、保険で受けられる医療は限定されるのに、負担は増える
5)国民は自費診療分をまかなうために、民間保険に入る(さらに負担増)
6)民間保険は、加入者ではなく保険会社が必ず儲かる仕組みになっている(保険会社が新たに参入して、医療費のかなりの部分を会社の利益とする)
7)民間保険に入れるのは、家計に余裕のある人だけ(命の沙汰も金次第)
8)病気で治療中だったり先天的な疾患がある人は、民間保険に入れなかったり、保険料が高くなる(弱肉強食)
9)保険外診療は、安全性や有効性の面で問題が大きくなる

 これが「規制緩和」という名のもとに行われようとしてる「コイズミ医療改革」の本当の姿です。しかも、その審議をしている委員会の委員長であるオリックスの宮内氏は、新たに参入しようとしている保険会社の会長であり(我田引水)、こういう重大事(実質大幅増税+皆保険制度の崩壊)が選挙で選ばれた国会議員などと全く関係なく決められようとしているのです。

 医療に株式会社が参入すれば、国民のニーズに合った医療が提供されるようになるなどとおっしゃってますが、最近のプロ野球球団合併・再編成の動きの中で、民意とはかけ離れた前時代的な不透明な動きをしていたオーナー達の張本人が、この委員長本人であったことは記憶に新しいところです。

☆八戸市医師会では下記のような市民公開講座を開催いたします。
 日時:11月21日 16:00~18:00  場所:八戸市総合健診センター3階
 表題:日本の医療を守りましょう
 内容:1)ビデオ鑑賞 2)講演会 3)討論会 (下記URL参照)
 http://www.orth.or.jp/Isikai/hachinohe/h16/igakukai/index.html

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● もし混合診療が導入されたらどんなことになるのか?(院内報2004年11月号より)

 以前から何度もこの院内報で現政権が進めている「医療改革」なるものの実態についてお知らせして警笛を鳴らしてきましたが、いよいよ最終局面に追いつめられてきました。本来であれば昨年来の衆参の国政選挙で審判を受けるべきところが、医療問題は年金の陰に隠されて争点にならず、選挙結果も「負けたはずのカラスがより一層強くなった」という摩訶不思議な結果に終わっています。

 また、医師会や歯科医師会は政治献金問題で「国民の敵・悪玉」となり、本来医療を守るために連携すべき国民と医療者が解離してしまい、支持を得られにくい最悪の状況になっています。私たちは、医師会の政治資金のあり方などを改めるべきと内部から声をあげてきて、透明性も高くなり国民の理解を得られるような態勢になってきましたが、マスコミでは頭から「利権団体」と決めつけられて国民に声が届かない状況にあります。

 そして、選挙後すぐに小泉首相は医療への「混合診療の導入」を強く指示しました。混合診療の推進論者は、格安のパックツアーにオプショナルツアーを追加するようなもので、現在のやり方(全て割高の料金=保険外診療)よりも混合(パック+オプション=保険+自費診療)の方が良いじゃないか、と言います。

 しかし、医療にはこんなたとえがあてはまらないことは、誰にでもわかることです。料理であれば高級レストランではなく大衆食堂でも美味しくてお腹いっぱいになることはできますが、もし皆さんの家族が命に関わるような病気にかかったときに、ここから先は「松・竹・梅」の治療コースがあり金額の順に助かる可能性が高くなります、と言われてお金がないから梅を選ぶということはあり得ません。これが大げさではないことは、実際に世界で唯一医療に市場経済がとりいれられているアメリカにおいて証明されています。TVドラマの“ER”やBSなどでも放映された“ジョンQ”という映画をご覧になった方は、ご存じだと思います。

 政府は、医療の質を高めて医療費を抑制するためだと言いますが、この「人体実験」が失敗して医療の質は低下したが医療費は高騰したというのでは目も当てられません。実際に、アメリカの医療費は世界一高く、4000万人もの人が保険に加入できず「具合が悪くても我慢している」のです。

 日本医師会は国民皆保険制度を守るために国民各界各層の団体に幅広く呼びかけ、国民医療推進協議会を結成しました。以前にも署名をお願いしたことがありましたが、今回は世界に誇るべき日本の医療保険を骨抜きにされるかどうかの正念場であり、何としても国民の皆さんの力が必要です。

「人の命は平等です。生命と個人の尊厳を守るべき医療の世界に、経済的な弱肉強食(市場原理)の論理を持ち込むことは極めて危険であります。裕福な一部の人のみが優遇され、弱者を切り捨てる政策は容認できません。誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険制度を守るために、いまこそ国民が結束する必要があります」(日医会長植松治雄)
 大変お手数ですが、署名にご協力の程、よろしくお願いいたします。

市民公開講座「日本の医療を守りましょう」

2004年11月13日 | こども・小児科
八戸市医師会市民公開講座
日時;平成16年(2004年)11月21日16:00-18:00
場所:八戸市健診センター3階
表題:日本の医療を守りましょう
内容:
1)ビデオ鑑賞
2)講演会
3)討論会
 多くの市民の方の参加をお待ち申し上げます。
なお市民公開講座の前に、第40回八戸医学会が開催されます。
第30回八戸医学会
http://www.orth.or.jp/Isikai/hachinohe/h16/igakukai/index.html
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●「もしも、『混合診療』が解禁になったら…」ビデオ鑑賞
http://www.med.or.jp/kaihoken/video.html
頼近美津子氏のナビゲーターで始まり、約13分間。
もしも混合診療が解禁になった場合の事例が、3つのミニドラマ
 1.お金のあるなしで治療に差がつく
 2.安全性・有効性に疑義が生じることが多い
 3.民間保険での保障が必要となり、結果的にお金の有無に影響される
で収録されています。

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●第30回八戸医学会特別講演
「医師が日本の医療の真実を知らねば国民を守れない」
日本医師会総合政策研究機構研究部長
愛媛大学医学部附属病院医療情報部教授
石原謙

 「日本の医療は、亡国論があるように高価で、医療ミスの頻発が示すとおりレベルが低く、情報も開示せず、効率も悪い」だから「医療レベルを米国並みに上げるために、競争を持ち込み、無駄を省かせよう。株式会社による医療機関経営の方が患者サービスが良くなる」と、一部の企業人が主張し、多くのマスコミもこれに同調しています。

 その論拠の一つに、「高齢米国人の医療への満足度は8割で、日本での同満足度は、3割しか無い。」(内閣府2001年8月調べ:高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果)などの調査結果があります。おそらく皆様もご自身やご家族の体験から日本の医療はこのままではダメだ。とお感じになることもあるでしょう。それでは、本当に日本の医療はお粗末なのでしょうか?そしてそのお粗末は医師や看護師がさぼっているからなのでしょうか?

 実際には今の日本の医療は、制度としては世界的に評価の高いのです。WHOのWorld Health Report 2000では、全世界の191カ国の医療制度を5つの指標から評価し、日本は仏、伊などともに、最高水準の評価を受けています。日本人は欧米諸国の人々の3倍から5倍もの多い回数で医療機関を受診していますが、それでも日本は総医療費のGDP比(国内総生産額の何%かというマクロ指標)が6%という先進国で最も安いのが事実なのです。よく引き合いに出される米国はGDP比14%という高額の医療費を使いながら、37位という厳しい評価がWHOから下されています。民間保険会社の厳しい制約によるお粗末な医療と、その保険にも入れない5千万人の人々の存在がこの評価結果となりました。
 WHOのWorld Health Report 2003では、なんと巻頭の概要Overviewから、日本の医療の元に生まれた女性の幸いを最高の例として言祝いでいます。

 WHOのレポートが指摘するように、利潤追求を至上命題とする民間医療保険会社が主導権を握ると、公的医療は崩壊します。公的医療がお粗末であればあるほど民間医療保険はよく売れますので、販売会社は公的医療保険制度に様々な圧力をかけるわけです。医療関係者の間で話題になっている映画「ジョンQ」は、民間医療保険の問題点をよく分かる形で、しかも感動的に表現しております。機会があれば、ぜひ御覧ください。

 さて、日本の医療制度が素晴らしいと申し上げても、実際には医療機関で待たされたり、入院しても総室に入れられて不愉快な思いをしたりした方々は、「日本の医療が素晴らしいなどとは思えない。治療をする現場の環境が自宅以下ではおかしい。」とお感じになるかもしれません。残念ながら、日本の医療機関での治療環境が多くのご自宅と比べて必ずしもよくないのは事実です。それはなぜでしょう。実は欧米と比べてベッドあたりの医師や看護師の人数が著しく少ないので手が回らないのです。要は診療にコストをかけられない医療保険制度なのです。

 それは、誰しも一度は必ずお世話になる出産にかかる費用を日米比較すると一目瞭然です。日本では全国どこでもおよそ30万円から40万円程度の費用で、約1週間の入院ですね。一日あたり、約5万円で母児ともに、検査から治療まで保障され、3度の食事まで上げ膳下げ膳で運ばれ、医師と看護師のケアが24時間ついております。シティホテルの室料やサービスと比べてこれで高いでしょうか?一方、米国では一泊二日か二泊三日での出産が普通ですが、まともな医療機関では約150万円から200万円の支払いが相場です。一日当たり、控えめに見積もっても50万円になります。米国では、医師も看護師も日本の数倍の頻度と滞在時間でケアのためにベッドサイドに訪れてくれます。説明の時間も長いことも確かです。無痛分娩は言うに及ばず、本当に患者の希望をほとんど何でも聞いてくれます。それに引き替え、日本での医療機関では患者様に我慢を強いることの多いこと、、、 実は医師も我慢の限界に達しています。一人一人の患者様に充分な時間をかけ診療ができる米国の医師が羨ましい、と思う日本の医師は私だけではありません。多くの現場の医師が皆様方の想像を絶する緊張下での長時間労働に耐えています。このままでは過労死だ、と感じている医師やご家族が大半でしょう。

 さて、この両国を比較して、皆さんは、どうお感じになりますか?日本の医療へのご不満は、行きすぎたコスト抑制のために医療スタッフの手間と時間をかけられない現状をご理解いただけたでしょうか。詳しくは記しませんが、日米の出産時の品質の指標である周産期死亡率などは、日本の方が米国の倍近く良いデータであることをお伝えしておきたいと思います。

 日本は何よりの証拠に、世界一の長寿と健康余命を確保しています。我が国の医療は国際的に誇れる希有な制度を確立しているのです。一方、日本の企業に君臨してきた銀行は、国際的な格付け機構によると、ほとんどが最低のEランク(外部の支援を必要とする状況との認定)、やDランクです。他の民間企業も国際標準である連結企業会計や時価会計制度への対応に四苦八苦していらっしゃるようで、決して国際競争力が高いという国際評価はありません。このような状況のなかで、我が国の医療のみは、WHOから素晴らしい高評価を得ているのです。

 世界的にみて異常とも言われる日本の医療費の過度な抑制政策は、しばしば日本政府の予算が無いからだ、と貧乏日本を根拠に説明されます。しかし、これは諸外国と比べるととんでもない大嘘です。日本政府は高齢者もすべて含めた医療のために毎年およそ10兆円を出していますが、公共事業には50兆円とも70兆円ともいわれる巨額を毎年毎年支出しています。医療費のGDP比は先進国中最低ですが、公共事業のGDP比はダントツに先進国中最高です。なんと、先進7カ国G7の日本以外の全ての国の公共事業費の合計よりも、日本一国での公共事業費の方が多いのです。

 公共事業に関した職種の方々も大勢いらっしゃることでしょうから、申し上げにくいのですが、政府予算の中でこのように異常な高い割合を占めている公共事業を1割削減するだけで、今、議論されている医療や年金の問題など雲散霧消するほどの巨額です。既に経済学者の研究から、医療福祉への投資は公共事業への投資と同等かそれ以上の経済波及効果と雇用創出効果があることも指摘されています。

 株式会社による医療機関経営についても一言申し上げておきたいと思います。「株式会社による経営の方が患者サービスが良くなる。だから株式会社に医療機関を経営させろ。」と主張する方々やそれに賛同する方々がいらっしゃいますが、それは将来大変困ったことになる間違いです。そう主張される方が、自らの経営する球団の利益のために、実に不透明で中世のギルドのような行動に走ったことは記憶に新しいところです。行動と言説の乖離は詐欺師のすることではないでしょうか。要注意です。

 株式会社組織での医療機関経営の方が本当に良い、と信じるならば、既存の医療機関のトップに経営形態を株式会社に変更せよと指示すれば済む話です。そうではなく、「医師免許を持たない経営者」が病院を運営したいとおっしゃっているのが、いわゆる「株式会社参入」問題です。ここで「株式会社参入」という言葉に騙されてはなりません、その主張の本質は「医師免許無しで病院経営をしたい」という「医師免許の問題」なのです。日本の医療は巷間の誤解とは異なり、民間組織主体の完全な自由競争で、医学部への入学の段階から全く何の制約もありません。すでに大学を卒業している方なら、学士入学制度を利用して、わずか四年間で医師免許を取得できます。にもかかわらず、医師免許を取るのが大変だから無免許で医療機関を経営させろ、というのでは医療の質やサービス以前の問題であり、何をか言わんや、ではないでしょうか。

 混合診療の問題もよく考えると全く単純な話しです。大方の方々が望む医療は公的保険医療に速やかに組み込む制度と運用をすれば、全ての国民が等しく安心できます。先進医療の導入についても医学的にコンセンサスの取れているものに限れば、国民医療費を脅かすような金額にはなりません。むしろ、国民医療費を脅かす原因は他にいくつもあることを皆様方はよくご存じと思います。混合診療の問題は既に10年以上も前から二木立先生が随所で実に明瞭に指摘しておられるところでもあります。

 健康な人々は、公平な社会において健全な経済活動の中で存分に競争をすればよいでしょう。しかし、病気になった方々や、もともとハンディキャップのある方々に対しては、安心して治療や介護を受けることに専念できる社会の仕組みを作ることこそが、国家や政府の役割ではないでしょうか。そしてその財源や国家体力は充分に日本にあるのです。これからの日本の進むべき道はどちらでしょう。

せんべい汁ボランティア、新潟の被災地へ - 2

2004年11月12日 | NEWS / TOPICS
前回の記事(11/7)に引き続き、こちらは戻ったあと市長に報告したときの新聞記事です。

せんべい汁炊き出しで市長に報告(2004年11月12日 東奥日報)
 新潟県中越地震の被災地でせんべい汁の炊き出しを行った八戸市職員や八戸ボランティア会のメンバーらが十二日、中村寿文市長に現地での活動を報告した。
 八戸市は、地震被災地に計一万食分のせんべい汁を提供した。市職員や市民団体・八戸せんべい汁研究所のメンバーら六人と、現地で合流した八戸ボランティア会のメンバー三人が八日から十日まで小千谷市と川口町の避難所などで計千人分の炊き出しを行った。
 また、せんべい汁のレトルト六千食分を配布したほか、長岡市の災害対策本部にも三千食分を郵送した。トラック輸送などでは三八五グループのドライバー三人が協力した。
 団長を務めた獅子内善美生活福祉課長は「せんべい汁はさっぱりしておいしいと好評で、レシピを教えてほしいという人もあった。家屋の清掃や引っ越し、支援物資の配布などでまだまだ人手が必要と感じた」と報告。中村市長は「今回の尊い経験を今後に生かしてほしい」とねぎらった。
 八戸ボランティア会の一員で参加した八戸東中二年の久芳草佑君(13)は「車中泊なども経験し大変だったが、現地の方々はもっと困難な状況で暮らしていた」と話し、元自衛官の岩崎幸雄さん(64)=八戸市=は「かつて豪雪災害の派遣要請で長岡市などを訪れたことがあったが、これから寒さが厳しくなるので早く仮設住宅に移れるようになれば」と、被災者を気遣っていた。
※写真=川口町でせんべい汁の炊き出しを行うメンバーら(9日夜、八戸市提供)

せんべい汁ボランティア、新潟の被災地へ

2004年11月07日 | NEWS / TOPICS
11月6日~10日の5日間、小千谷・川口の被災地に八戸からボランティアがせんべい汁炊き出しに行ってきました。前週に引き続き第二陣としてのもので、実はうちの息子も学校に無理を言って参加させていただいたので、新聞記事をここに引用しておきます。

八戸のボランティア被災地でせんべい汁提供(2004/11/07 デーリー東北)

【新潟県小千谷市から本社・金澤朋哉】十月二十三日の発生から丸二週間が経過した新潟県中越地震。被災地の支援にと六日、八戸市の民間ボランティア団体が、大きな被害を受けた小千谷市に入り、避難所生活の人たちらに温かいせんべい汁を提供した。全国的な支援の輪が広がる被災地。ライフラインが徐々に回復し、復興に向け着実に動いているように見えるが、現地の人たちはいまだ続く余震におびえ、今後の生活など現実的問題に頭を悩ませる。依然、不安を抱えたままの避難所生活が続いている。
 「八戸ボランティア会」の支援活動は先月三十日に続き二度目。今回はメンバー十九人が車二台で同日早朝に八戸市を出発。高速道を乗り継ぎ、約九時間かけ目的地の小千谷小学校に到着した。
 メンバーに緊張が走ったのは高速道から市総合体育館が見えた瞬間だった。路上駐車の車の列、倒壊した家屋…。惨状を前に「うゎー」と、ため息にも似た声が漏れた。
 市内に百カ所以上ある避難所の中でも規模の大きい同校。ピーク時に二千人以上いた被災者は、ようやく四分の一まで減ったという。日中はお年寄りや子供がまばらにいる程度。
 市の担当者は「家の片付けに行っているが、暗くなれば戻ってくる」と説明してくれた。
 一週間ほど前から、自宅と避難所の両方で生活している開業医の横山隆一さん(44)は「いつ余震が来るかと考えると、建物の中にいることが不安だ」と言う。そして「今は今後の生活の問題が重くのしかかっている」と表情を硬くした。
 せんべい汁作りは午後四時前から始まった。テントの中で、メンバーたちが、あらかじめ下ごしらえした材料にせんべいを割り入れる。列をつくった人たちは、湯気の立ち上る鍋の前に長い列をつくった。
 辺りは次第に暗くなり、冷えてきた体には何よりの贈り物。用意した約五百食分のせんべい汁は、あっという間になくなった。初めてせんべい汁を食べた会社員久保田常夫さん(29)は「温かい食べ物はやはりうれしい」。そして「青森から来てくれた気持ちにも、感謝したい」と笑顔だった。
 ボランティアに参加した八戸市立東中学校二年の久芳草佑君(13)は「決して大きなことはできないが、自分の力が何人かの役に立ったのなら、来た意義があると思う」と話した。
 同会は七日も、せんべい汁を被災者に提供することにしている。
【写真説明】
被災者に温かいせんべい汁を提供する八戸ボランティア会のメンバー=6日午後6時ごろ、小千谷市立小千谷小学校グラウンド

21世紀の予防接種

2004年11月06日 | こども・小児科
休眠状態にある「くば小児科BBS」と「あおもりタバコWatching」を合体して、くば小児科HPの新たなBBSとしてスタートすることにします。詳しくは、また時間があったら書きたいと思います。

本日、八戸で北海道から新潟までの8道県の小児科医が集まって、東北北海道小児科医会連合会が開催されます。私も準備委員の一人として、抄録やホームページをつくったり、発表用ファイルの取りまとめや連絡作業などの裏方を務めてきました。予防接種に関しては、麻疹(はしか)ゼロ作戦と予防接種の全県広域化という大きな課題があり、今回大きな進展をみせようとしています。このへんも、また報告します。