踊る小児科医のblog

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『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』:ボルダルールを青森3区に当てはめると大島<田名部に

2015年07月29日 | 政治・行政
『多数決を疑う』(酒井豊貴)を借りて読み終わったところだが、1章「多数決からの脱却」2章「代替案を絞り込む」までの暫定的結論で、筆者が勧めるのは「ボルダルール」。

ボルダは18世紀後半、フランス革命前の才人。1位3点、2位2点、3位1点という配点で「順位をつけた投票」を行なった場合、単純な多数決よりも民意をより反映する。

わかりやすいように2014年の青森3区の候補者を使ってシミュレーションしてみる。数字は仮定のものです。もう一つ、田名部または松橋を1位にした人は全員大島を最下位にすると仮定。(以下、敬称略)



例1の場合、青森3区候補者のうち、大島(X)49、田名部(Y)43、松橋(Z)8人とすると(これは実際とは異なる数字です)、ボルダルールでは大島は田名部または松橋に決して勝てない。

例1で、大島に投票した49人のうち8人以上が田名部を2位にすれば田名部が当選、田名部2位が6人以下のときは松橋が当選。(グレーの部分の数字)

個別の候補者間の比較で、大島49<田名部51、大島49<松橋51となる。個別にジャンケンすれば負ける。これを「ペア敗者」と定義する。ペア敗者が当選しないようにするのが大きな目的。

その前段階で、2000年の米大統領選ブッシュ対ゴアで、優位に立っていたゴアがネーダー立候補により票が割れ、ブッシュが当選して歴史が大きく変わったことについて言及。

実際の2014年衆院選の得票率は例2に近く、ここでは大島は「ペア敗者」ではないが、大島に投票した51人のうち12人以上が田名部を2位にすると田名部が当選、4人以下だと松橋が当選。田名部2位が6~10人だと大島が当選、という結果になる。

もし大島陣営が田名部を2位に書かないようネガティブキャンペーンを張ると、1位の人数ではビリの松橋が当選してしまう。大島陣営側で「田名部2位の割合」を調整するのは不可能で、田名部当選の可能性が高かった。

(以上、わかりやすいように具体名で例示しましたが、あくまで仮定の話です)

確かに1位の3点と2位3位の2+1=3点が同点なので、このくらいの票差だと2位をどれくらいとるかが大きく、他の候補支持者から必ず3位にされてしまう大島は1位で大きく差をつけないと勝てない。

「ボルダルール」が「ペア敗者」を当選させることは決してないということは数学的に証明されているのだという。

同書の後半では、政策(法案)と対案をペアで比較してX→Y→Z→Xというジャンケンの力関係のような「サイクル」を生み出さないためには、64%の得票が必要だということも紹介(これも数学的に証明されている)。

64%という数字は、憲法改正発議に必要な3分の2と整合性があるように見えるが、実際には小選挙区制導入により過半数の得票で3分の2の議席数が得られる仕組みになったため、憲法は過半数で発議できる。

憲法96条は下位の法律によって実質的に変えられてしまっている。決して3分の2のハードルが高すぎるのではなく、現実は逆であり、国民投票の得票率を64%まで引き上げることが必要と筆者は主張。

しかし、現実に政府・与党がわざわざハードルを高くする憲法改正を発議する可能性はゼロ。1994年の「政治改革」による小選挙区制導入が、戻すことが不可能な「改憲」だったということ。

集団的自衛権、安倍安保法案、違憲論、貴方はこの13段階のどこにいて議論していますか?

2015年07月25日 | 政治・行政

(表を見やすいように変更しましたが、見にくい場合は右クリック=Macではcontrol+クリック=で別ウインドウに拡大してください)

あまりにも議論が整理されないまま非論理的な応報になっているように感じられたので、思いつくまま表を作ってみました。この表は私の頭の中から出てきたもので、学術的な根拠はありませんが、メディアもアカデミズムも、もちろん政界も、こういった提起をしてくれないので試作してみたものです。解釈改憲の段階ももっと何段階もあるのかもしれませんが、とりあえず議論のたたき台として提示してみました。

自分自身や議論の相手がどの段階にいて、何を守るべき、あるいは何を変えるべきと言っているのか、それをきちんと示さないと議論が空回りして何も生み出しません。

その前段階として、全く異なるレベルの議論が混乱・混同(Confusion)されているのは、
1)集団的自衛権の行使認定・安保法制の必要性という問題と、
2)この法案が憲法違反かどうかという議論
 (無論憲法違反は間違いないのですが)
がごちゃごちゃに議論されており、その中で「解釈改憲反対と叫んでいる人達は自衛隊合憲という(より大きな)解釈改憲を認めているではないか、それより今回の解釈改憲の幅は小さい」という詭弁に反論できないでいることに憂慮している。(というより呆れている)

一番右の解釈の欄で最も重要なのは、いわゆる「九条護憲派」(憲法を守れ、九条を守れ、解釈改憲反対と叫んでいる人達)が、実は憲法を遵守せず、解釈改憲を認めているのだという点。

だから「解釈改憲反対」という言葉には説得力がない。

九条護憲派と立憲主義派という二分類にしたのは暫定的な表現で、この2つに簡単に分けられないということは自分自身で重々承知しているが、

私はいわゆる九条護憲派ではないし、本来なら自衛隊の存在と活動に合法性を持たせるためにも改憲は必要なのだとは思うけれども、現実問題としては九条を変えるべきではないという、論理的には矛盾した立場に立っている。しかし、現在の日本の歴史的経緯と社会状況を見渡してみれば、これが多数派で、改憲派×護憲派という<二項対立>はここでこそ「意味をなさない」と言いたい。

(以下時間切れにて明日追記予定)

三沢商×光星戦 最後の一球のドラマ

2015年07月23日 | SPORTS
決勝の三沢商×光星戦。最後のサヨナラの「一球」。
あれが暴投だったのか捕逸だったのか判定には興味はないが、何を投げてもリスクのある中での選択とその結果だから、本人が悔しいのは当然としても、スポーツとしては見応えのある素晴らしいプレーだった。

打者には投げ勝ったが勝負には負けた。残酷だが、勝ち負けどちらかしかない。しかし敗者にも物語があり、一人一人が積み重ねてきた価値の構築があるはず。

三沢商の主将(三振振り逃げの選手)も結果的に相手のミスで勝てて良かったと答えていたが、それまで投手力と守備力で光星の打線を封じ込めてきたことが結果につながったのであり、「エラーによるあっけない幕切れ」などでは決してない。

あの場面までに大きかったのはセカンドゴロによる三塁進塁。当然、ピッチャーには大きなプレッシャーになったはず。
光星の投手はかなり疲れていたようで、前に打ち返されれば点が入る可能性が高く、何としても三振がとりたかった。
ストレートを投げるのはリスクが高い。
捕手のサインに首を振ってプレートを外したのも、自分で落ちる球による勝負を要求したのではないか。

投げた球は絶妙のコース。
この練習は何度も繰り返していたはずで、捕手はとれなくても前に落とすことができると判断したのだろう。
実際にグラブに当てているのだが、球が内角の厳しいコースに来たため、横に転がしてしまう。
その後のカバーとタッチプレーも高校生離れした素晴らしいプレー。
送球が高めになった分、僅かの差でセーフ。

この三塁ランナーもあらかじめ予測していて突っ込んだのだという。
その僅かなスタートの差がなければアウトになっていたかもしれない。
最後は見ていて思わず声を上げてしまったが、密度の濃い、決勝の幕切れにふさわしい一瞬のドラマだった。

光星のバッテリーは最後の一球の選択を悔いてはいないはずだ。

号外PDF
http://www.toonippo.co.jp/gougai/gou2015/0722.pdf

「禁煙治療+運動」で脳内ドーパミン回復(下) 禁煙には運動が特効薬・ストレス解消・アンチエイジング

2015年07月17日 | 禁煙・防煙
#後半は禁煙に運動を併用することで悪循環を脱して一石三鳥以上の効果が期待できるということの説明です。
→PDFファイル

●「禁煙治療+運動」が特効薬 生理的ドーパミン回復 ストレス解消 アンチエイジング



a. ただ普通に禁煙すればドーパミン欠乏のため失敗する可能性が高い。依存症という病気のためで、意志とは無関係。

b. 禁煙補助薬によってドーパミン欠乏を補いながら禁煙すれば、楽に禁煙できて成功率も高くなります。失敗しやすいのは「ストレス解消神話」から解放されていない人です。

c. 12週間の禁煙治療の期間の間に、タバコのニコチンにより失われていた「自分でドーパミンを出す能力」が回復してきます。ニコチンがなくても安定したドーパミンのレベルが維持され、イライラやストレスを感じなくなり、最後に薬を中止してもリバウンドはありません。

d. 禁煙のスタートと一緒に運動を始めるようにすると、禁煙初期の喫煙欲求を運動によるドーパミン分泌で解消することができます。運動はニコチン依存症だけでなく、ほとんどの依存症の特効薬なのです。

e. 依存症患者は一般に自己肯定感が低く、何かあるとタバコや酒などに頼ろうとする傾向がありますが、運動による達成感の積み重ねにより、自信と自己肯定感が高まり、再び喫煙する可能性が減少します。

f. 結果的に、禁煙補助薬と運動を併用することにより、禁煙の成功率も高くなることが期待できます。

g. 禁煙すると、一時的な口寂しさから食べる量が増えて、体重が 3kg 程度増えることがありますが、禁煙と一緒に運動を始めることで、この一時的な体重増加を防ぐことができます。

h. 禁煙で味覚が回復し、薄味やだしの味がわかるようになり、塩分や糖分の摂取が減ります。運動が習慣化するとライフスタイルも自然に改善し、ヘルシーな食べ物を好むようになり、肥満も減少します。

i. うつ病や抑うつ傾向の人は、ストレスへの対処能力が低く、身体活動も低下しています。タバコを吸いながら薬を飲んだりストレス対処法を学んでも良くなりません。「禁煙+運動」により悪循環から脱出して、ストレス対処能力も高まり、うつ病の程度を軽くしたり薬を少なくすることも可能になります。

j. 産後の再喫煙の予防にも運動が有効です。産科や育児サークルなどの教室への参加もお勧めできます。

k. 運動の種類は何でも構いません。短時間の喫煙欲求を解消するためなら、体操や運動器具による軽い運動でも効果があります。ある程度の達成感を得てストレスを解消するためには、30~40分以上の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)がお勧めです。無理なく続けられるものを選択して下さい。

l. 息切れしない程度の運動量から徐々に増やしていけば、若い頃の運動能力に近づいていきます。

m. 最終的に、「ストレス解消神話」がウソだということを、紙の上の知識だけでなく、自らのドーパミン分泌が回復して「タバコは全く不要のもので百害あって一利なしだった」と体感することにより理解できれば、「心理的依存」という「タバコの呪縛」から解き放たれ、一生後戻りすることはなくなります。それを実感して維持していくためには、運動習慣が最も有効だと考えられます。

n. 青森県が最短命県から脱出するためには、食事(塩分・糖分)、飲酒、運動、ストレス対策などを別々に行うのではなく、喫煙者は必ず禁煙するところからスタートし、「喫煙・肥満・うつ」の三角形を好循環に変えるために、「禁煙治療+運動」をベースにして他の対策を積み重ねていくことが必要です。

o. 運動には老化防止効果があり、「禁煙+運動」は認知症予防、アンチエイジングの特効薬と言えます。

「禁煙治療+運動」で脳内ドーパミン回復(上)「タバコでストレス解消」はウソ 喫煙・肥満・うつの悪循環

2015年07月17日 | 禁煙・防煙
#患者さんだけでなく、一般、教育(子供・親)、行政、医療関係者にも説明するための資料(裏表2ページ)を作成したので、2回に分けて掲載します。前半は「ストレス解消」はウソで、タバコを吸いながら悪循環に陥っている状態についての説明。後半は禁煙+運動が悪循環脱出の特効薬であることについて。
→PDFファイル

●「タバコでストレス解消」は真っ赤なウソ 喫煙でストレス増加 禁煙でストレス減少

喫煙者も非喫煙者もだまされている「ストレス解消神話」から解放されることが、スタートでもありゴールでもあります。



a. タバコを吸うと、吸収されたニコチンが脳の中でドーパミンという神経伝達物質を増やします。ドーパミンが脳の特定の部位を刺激すると、快感や達成感などを感じます。

b. やはりタバコでストレスを解消しているのではないかと思うかもしれませんが、ここでだまされてはいけません。元々ドーパミンを出す能力は全ての人が持っています。運動後の爽快感、受験に合格した時の達成感、美味しいものを食べた時や性的快感などにもドーパミンは関与しています。

c. ところが、喫煙者は外から摂取したニコチンによる強い刺激でドーパミンを出すことを繰り返していると、ニコチンが切れた時に自分でドーパミンを出す能力がなくなってしまい、ドーパミン欠乏のため常にイライラして満足感が得られない状態に陥ります。そして、タバコを吸った時だけ一時的にニコチンが供給されてドーパミン不足が補われると「ストレスが解消された」と感じるのです。

d. これは麻薬などの薬物依存症の離脱症状と同じで、ニコチン依存症という病気の症状そのものです。

e. この「ニコチン切れのストレス」は、非喫煙者にはありません。喫煙によって増えたストレスです。

f. 実際にストレスの程度を測定すると喫煙者の方がストレスは多く、禁煙するとストレスは減少します。(禁煙するとストレスが増えると感じるのは、上記の「ニコチン切れのストレス」のことです)

g. うつ病や抑うつ傾向の人はドーパミンが低下しており、喫煙者にはうつ病が多く、うつ病の人には喫煙者が多い。喫煙本数が多いほど抑うつ傾向は強く、自殺率も高くなります。喫煙とうつの悪循環です。

h. 妊娠中に禁煙しても、出産後に「育児ストレス」から再び吸い始める人が多く、ストレスを解消するつもりが実際にはストレスは増加し、育児不安が高まって虐待へと繋がっていきます。データは公表されていませんが、報道されるような虐待事例の両親のほとんどは喫煙者だと関係者は口を揃えます。

i. 喫煙者は、ドーパミン欠乏がタバコで一時的に解消されるという体験を繰り返すことにより、アルコールや危険ドラッグなどの依存症を合併する頻度が高くなります。これも公表されていませんが、ドラッグで検挙される人のほとんどは喫煙者であり、タバコはゲートウェイ・ドラッグと呼ばれています。

j. 喫煙者は薄味やだしの味がわからず、味が濃くて糖分の多いラーメンや牛丼のような食べ物を好みます。やせるためにタバコを吸い始める人もいますが、喫煙者の方が肥満や糖尿病の割合が高いのです。

k. 運動によりドーパミンは高まりますが、うつ病の人は運動不足で、喫煙者も運動習慣のない人が多い。喫煙者は呼吸機能が低下しており、すぐに息切れがして、運動を続けることができなくなっています。

l. 「喫煙・肥満・うつ」の三つはお互いに悪影響を及ぼし、悪循環に陥っています。この「三角形」が、青森県が最短命県である原因であり、別々に対策を取っていたのでは改善は期待できません。

m. 「喫煙・肥満・うつ」の三角形は、早死にだけでなく老化や認知症の早期発症にもつながります。喫煙者はスモーカーズ・フェイスと呼ばれるように顔貌も肌も早くに老化し、認知症の頻度も高いのです。

福島県の小児甲状腺がん推定発症率をグラフ化/ベラルーシとの対比 DAYS JAPAN記事へのコメントも

2015年07月09日 | 東日本大震災・原発事故




ベラルーシのグラフの引用元は、
児島龍彦:チェルノブイリ原発事故から甲状腺癌の発症を学ぶ.医学のあゆみ, 231(4): 306-310, 2009.

このグラフは、5月までに発表になった福島県の小児甲状腺がん=細胞診で「疑い」+手術で「確定」の人数を一次検診受診者数で割った数字(受診集団のその時点での有病率)を、先行調査ではスクリーニング効果を10年と仮定して10で割り、本格調査では受診間隔の2.5年で割ったものです。

解釈とコメントについてはブログ既報(その1)
1)甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に 2015年06月03日 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9484f13f2d01ec85504b104e500d079d

解釈とコメントについてはブログ既報(その2)
2)福島県甲状腺がん 本格調査>先行調査の経緯を発表時の数値で検証してみた 2015年06月05日 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/75c50cf497db6f29a441efd93159cbd1

本格調査の受診間隔を2.5年としたが、2年間隔の人が多いはずなので過小評価している。その理由は「なるべく低く見せたいから」ではなく、過小評価しても高く出るなら確実に増加と判断できるから。。スクリーニング効果の「10年」については誰も言及していないが、仮定としては適当な数字だろう。

グラフの傾きは増えているスピードとは全く関係なく、検診が順調に進んで「疑い+確定」の人数が明らかになっていることを示しているだけ。時間がたてば先行調査のようにプラトーになっていく。ただし、本格調査のグラフがクロスして更に上に向かっていることで「増加」と読み取れる。

前記ブログにも書きましたが、本格調査は5月の時点で、
一次判定率 121997/148027=82.4%
二次受診率 593/1043=56.9%
であり、かけ合わせると46.9%
単純計算で、8.7人/10万人という発症率になる。

比較対象としている2枚目のグラフがベラルーシの甲状腺がん発症率。先行調査の3.7、本格調査の4.1という現時点での数字が、ベラルーシの95年の小児と思春期に相当するレベルになっている。本格調査で予想される「8人」という数字はベラルーシの思春期の2000年頃に相当。

この増加傾向が3巡目、4巡目にも続いていくのか、低下するのか、誰にもわからないが、現時点での判断は「先行調査でも多発、本格調査で更に増加」か「先行調査は判定不能、本格調査で増加」のどちらかで、「先行調査では増えていない」と断言することは不可能。

DAYS JAPANの特集記事は、この本格調査(2巡目)ではなく、先行調査の111人(確定98人+疑い13人)=記事では手術して良性だった1例を含めて112人について、評価部会のまとめで「数十倍のオーダーで多い」と触れられた点について、

比較は津金氏が第4回評価部会に提出した資料「2001-2010 年のがん罹患率(全国推計値)に基づくと、福島県において18 歳までに臨床診断される甲状腺がんは2.1 人(男性0.5、女性1.6)、受診率は約80%なので受診者集団からは約1.7 人」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-b4.html

この1.7人と112人を単純に比較すると、65.9倍。これを「統計の性質上は試算なので『数十倍のオーダー』と丸めた」とのこと。津金氏は「スクリーニング効果だけで解釈することは困難」「別の原因があると解釈する方が合理的」「過剰発生か、過剰診断のいずれか」「個人的には後者と…」

過剰診断でないかどうか、宮内昭医師はいずれも手術適応通りで過剰診断ではないと。この点はそうだろうと思っていた。一人一人の患者さんについて、この子はスクリーニングから来たからとか、症状で発見されたからといって判断を変えるわけがない。医師ではない火山学者まで口を挟んでいたが。

清水一雄医師へのインタビュー(おしどりマコ氏)は面白い。同様に「過剰診断ではないことは診たものが一番わかっている」と。3県の調査(2012)についても、県全体のような調査を提案したが却下された」。地の文でも判定割合だけでなくがんの発生を調査しなければと。ここがポイント。

山下俊一「検査で発見されたのは、原発事故とは直接的な関係が無い『自然発症の小児甲状腺癌』であり、前述の通りスクリーニング効果であると評価しています」首相官邸(平成26年2月12日)
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g62.html

第19回福島県「県民健康調査」検討委員会 配布資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-19.html
甲状腺検査に関する中間取りまとめ [PDFファイル/183KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/115335.pdf

前述のように「本格調査が先行調査を大きく上回りそう」で、現時点での判断は「先行調査でも多発、本格調査で更に増加」か「先行調査は判定不能、本格調査で増加」のどちらか。DAYS JAPAN記事、評価部会まとめでも「先行調査の多発は過剰発生か過剰診断」。だが過剰診断は否定的。

本格調査で気になる要因は、受診率の低下がバイアスになる可能性。不信感から県の検診を受診せずに他の医療機関を受診している人も相当数いるようだが、その影響で高く/低くなる可能性はあるだろうか。検診不要説は排除された。不信感は別にして、まずは受診し続けないと。。

「低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関」記事の「1mSvで相対リスク千分の3上昇」の意味を読み解く

2015年07月04日 | 東日本大震災・原発事故
「低線量も白血病リスク」の記事、流して読んだのでは理解できない。
1mSvで相対リスク(RR)が3/1000上昇の意味をチェックしてみる。
(未検討にてこのtogetterから)
2015.7.2報道【 疫学調査:低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関】について マキノさんのツイートまとめ
http://togetter.com/li/842180

Jun Makino ?@jun_makino 7月2日
http://t.co/RnBRf85jSv
論文はこれ

元論文のサマリー
CLLを除いた白血病の過剰相対リスク(ERR)は1Gyで2.96(100mSvで0.3)これが「1mSvで3/1000上昇」という過小に読み取れる数字の意味。特にCMLではERR 10.45/Gy

Interpretation This study provides strong evidence of positive associations between protracted low-dose radiation exposure and leukaemia.
かなり強い調子。記事と印象が違う。

過剰相対リスク(ERR)と過剰絶対リスク(EAR)については、ここにまとめてあるので参考にして下さい。
「1Gy被曝でがん死リスク42%増」の意味 LNT仮説が「哲学ではなく科学」であることは明白 中川恵一批判 2012年03月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/2ad492da4a74ac761c45ccfd75842712

2012年の「CTによる白血病と脳腫瘍増加」の論文についてはこちら
「子どもに関しては楽観しない方が良い」鹿児島大・秋葉教授「小児の放射線被ばくと健康への影響」を聴いて 2012年07月04日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9ec609b8405eb63f731ecaddc66b46ea

2012年の「CTによる白血病と脳腫瘍増加」の論文
過剰相対リスク excess relative risk [ERR] ERR=RR-1
 白血病 0.036/mGy
 脳腫瘍 0.023/mGy
相対リスク relative risk [RR] <5mGyと比較して
 白血病 30mGy以上 (平均51.13mGy) で3.18
 脳腫瘍 50-74mGy (平均60.42mGy) で2.82
(1mGy=1mSv)

小児のCT被曝による
 白血病の過剰相対リスク 0.036/mGy=36/Gy
今回の成人原発労働者
 CLLを除いた白血病の過剰相対リスク 2.96/Gy
小児のCT被曝の方が10倍以上高い…

(しかし中川恵一の「LNTは哲学」というのは哲学を随分馬鹿にした発言だな、今読み返してみても。。哲学はサイエンスではなく机上の空論だとでも。。そもそも科学が仮説で成り立っていることすら忘れている)

元の白血病リスクに戻る。
原発労働者で2.96/Gy=0.3/100mGyというのは
被曝がなくて白血病になるのが0.3%だとすると、100mSvの被曝で1.3倍=0.39%になる。0.09%の増加(EAR)。
(この数字は検討のための仮定の数字。白血病の自然の発症率を調べていないが、元の数字が低いのでERR0.3/100mSvとは言っても見かけ上は低そうに見えてしまう。)

LNTの説明で使われるのは全がん死が100mSvで0.5%(EAR)増加。
全がん死が30%だとしたら30.5%になる「だけ」というのが中川理論。
今回は白血病だけだから、この値とは直接比べられないし、確かにこれまでのLNTの数字を書き換える必要があるデータではなさそうだが。

記事の元グラフ
100mSv未満では90%信頼区間が1.0以下にかかっているので統計学的に有意ではないが、その直線が<300mGyと全体の直線に一致していること。(広島・長崎のLSSでも同じ)
LNTはほぼ確実に証明。
<img src="http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/1b/df11638e90eb500062ad2dbe6895a62a.png">

低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関 毎日新聞2015年7月02日 http://mainichi.jp/shimen/news/20150702dde041040015000c.html
「ICRPは100mSvを超すと発がんリスクが高まると指摘。それより低い線量では、健康影響を懸念する専門家と心配ないとする専門家で意見が分かれている」これが結論?

100mSv未満の低線量被曝でも、今回のデータや2012年の小児CT被曝(白血病・脳腫瘍)などで証明が積み重ねられており、「心配ないとする」専門家の見解を支持するエビデンスはない。この記事の記載(千分の3程度上昇などという過小表現も含めて)はミスリーディング。

昨日のまとめだが、記事にある原発労働者だけでなく「子どもの白血病のリスク」を注視する必要がある → 「低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関」記事の「相対リスク千分の3上昇」の意味を読み解く http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/875129890a6792dc4568aba5814e1ed0 (このentry)

2013年12月号(既読だが読み返してみる)
RT
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study2007 @study2007
岩波「科学」12月号 http://www.iwanami.co.jp/kagaku/
◎「子どもの外部被ばくと全がんおよび小児白血病リスク」(study2007氏)は、外部被ばくがもたらすリスクが、現実の福島県各自治体でどれほどのものかを見積もります。(続)
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