踊る小児科医のblog

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デング熱フィーバー 麻疹・風疹の流行はスルー?

2014年09月05日 | こども・小児科
デング熱の国内発生は新しいステップに入ったという点で大きな事態であることは確かですが、蚊の対策が主であり、過剰に騒いだり恐れたりする必要はありません。
(この文章の本題は後半の「麻疹・風疹」です)

デング熱
・人から人への感染はない
・ほとんどは自然治癒する。重症化は少ない
・死亡例は先進国ではほとんどない(集中治療により)
・ワクチンも治療薬もない(ワクチンは開発中)
・不顕性感染(かかっても発症しない)や軽症感染者がある程度の割合でいるはず(…そこから感染が拡大するのが厄介だが)
・八戸はヒトスジシマカ分布の北限(既に侵入しているかも)

今回のデング熱の多発は、1人の感染者から拡がったのではなく、複数・相当数の感染者から拡がったと考えるのが普通。
だとしたら、代々木公園に限定されているわけがない。
患者が全員代々木公園で刺されたというのは、行った人が心配になって検査しているから。
(脱原発集会を潰そうとした政府の陰謀のわけないだろう)
診断されていない症例、自然に治った症例は多数あるはず。

いくら亜熱帯の東京でも、秋になれば収束するはずだが、昨冬のドイツ人のことを考えると、通年性で温かい排水などで蚊が発生している可能性もあり、既に東京はデング熱常在地域になっているのかもしれない。。

デング熱の過剰報道の一方で、本来であれば抑えられているはずの疾患が国内で多発しているという例はいくらでもあります。
その最たるものはタバコですが、ここでは麻疹と風疹と取りあげてみます。


例えば、麻疹(はしか)の報告数をみると、
2008年の732例から2013年の232例まで毎年減り続けていたものが、
2014年は34週までで既に438例に達しており、2011年・2012年を上回ることは確実になっています。


流行の中心は首都圏4都県と大阪、愛知などの大都市を抱える地域。
でも東京の人は何も気にしてない。
(一部の医療関係者を除けば)

国内の麻疹排除の目標は2012年でした。
すでに2年も過ぎているのですが、また元の木阿弥になりつつある。。

麻疹の排除の目安は、患者数が100万人に1人以下(年間120人が目標)で、輸入例はあっても拡大せず、国内での自然流行がない状態ですが、いずれの条件も満たしていません。

十数年前の、年間数十万人(推定)という患者数を考えると、ゴールがかすかに見えてきた段階まで来ていただけに、更なる対策の強化が求められています。


風疹は2012年から2013年にかけて非常に大きな流行になり、先天性風疹症候群も多発し、メディアで何度も取りあげられました。

このグラフで、2013年だけスケールが異なっていることにご注意ください。
(2013年は16,000まで、他の年は4000まで)

2008年 293
2009年 147
2010年 87
2011年 378
2012年 2,386
2013年 14,357
2014年 265

2014年は前年までの流行によって流行地域で感受性者が減ったために、2011年のレベルに戻りつつありますが、青森などの流行のなかった地域では成人男性の感受性者が大量に残ったままであり、予防接種もほとんど進んでいません。

2008年~2010年にかけて連続して減少し、麻疹排除と同じ目標の「年間120例」を2010年には一旦は下回ったのですが、現在のような抗体保有状況ではそのレベルを維持することは困難で、いつ拡大してもおかしくない状況にあります。


風疹の報告数も東京と神奈川が突出して多い。

表題に戻ると、
デング熱 が dengue fever なので、
「デング熱フィーバー」は dengue fever fever ??

昭和37年(1962年)生まれの子どもの予防接種記録 種痘含む5種類 ポリオは3回 母子手帳より

2014年09月04日 | 予防接種

母子手帳が保存されていて手元にあるので、チェックしてみた。クラシカルなデザイン。


百日咳、ジフテリア、ポリオ(急性灰白髄炎)、種痘(天然痘)、BCG(結核)の5種類しかない。
DPTじゃなくDPの二種混合。破傷風はない。
麻疹、風疹もない。

ポリオは3回。(接種欄は4回まである)
この3回目だけ別のページに「生ワク」と書いたハンコが押されているので、2回目までは不活化ワクチンだったのかも。3回目の昭和39年(1964年)が生ワクチン定期接種開始の年。

・ポリオ 1960年 不活化ワクチン勧奨接種
     1961年 生ワクチン緊急投与
     1964年 生ワクチン定期接種   

種痘があって、BCGは皮内接種だというのも歴史を感じさせる。4カ月でBCGを接種している。
赤ちゃんの結核検診で全員に(?)間接撮影をしている。

・BCGが経皮接種(管針法)になったのは1967年
・天然痘が根絶されて種痘が中止になったのは1976年

接種欄には腸チフス・パラチフスなんてのもあるが、もちろん接種してない。(当時の制度がよくわからないが)

ちなみに、

・麻疹 1966年 不活化・生ワクチン併用(任意)
    1969年 弱毒生ワクチン単独接種(任意)
    1978年 定期接種開始

・風疹 1977年 定期接種開始(中学生女子)

丸山眞男「常に精神の冒険をし、常に疑い、全部相対化し、いろんな角度から検証する」

2014年09月01日 | 政治・行政
丸山眞男「常に精神の冒険をしなければならない。正しいと思っていることを常に疑い、冒険に出して、無事に乗り越えて帰ってこれるかどうか。全部相対化し、その人の中に入り込みながら、絶対視するのではなく、いろんな角度から検証するという学問態度…」(江田五月氏)

NHK 戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか
2014年度「知の巨人たち」 7月19日(土)
第3回 民主主義を求めて 政治学者 丸山眞男
http://www.nhk.or.jp/postwar/program/past/

「日本に内発的なデモクラシーの萌芽があったんだと言いたい気持ちは非常に強かったんですよね。占領軍から押しつけられたものじゃないという気持ちが明治の精神の中にもあったんだと、福沢とか持ってきてですね…」

「政治に対して無関心、嫌悪の支配するところでは、民主政治の実質が否定され、政治家は独裁化し、ボス化する。独裁者は民主主義の敵であり、政治は形骸化される。民主主義の実態は、プロセスを重視するのである。討論が重視されるのである。権力に対して常に問いかけること、問い続けることである」

「永久革命は、ただ民主主義についてのみ語りうる。民主主義は制度としてでなく、プロセスとして、永遠の運動としてのみ現実的なのである」

江田五月氏「丸山(眞男)先生から言われたことで思い出すのは、常に精神の冒険をしなければならない。自分はこれが正しいと思っていることを常に疑って、これを冒険に出して、無事に冒険を乗り越えて帰ってこれるかどうか。そういう意味で、この人は素晴らしいとかいう話じゃなくて、それを全部相対化して、その人の中に入り込みながら、しかしそれを絶対視するのではなくて、いろんな角度から検証するという学問態度というのをずっと持ってこられたんで…」

(若者がこの(当たり前ともいえる)言葉に耳を傾けることはあるのだろうか…私自身、丸山眞男は名前は知っていても著作を読んだこともありませんでしたが)

江田氏「戦後民主主義は虚妄だと、建前だけで薄っぺらなものだという説もあるけれど、それでも戦後民主主義の虚妄に賭ける、虚妄だと言われながらこれしかない、スカスカの民主主義ではあっても、もっともっと内実を充実させていく努力をしなきゃいけない。そんなに、民主主義をさらさらっと勉強して、さらさらっと捨て去って、民主主義は駄目ねなんて、そういうものではないでしょう。かなり骨太の民主主義者だった」

「今日でも新たに原爆症の患者が生まれている。長期患者あるいは二世の被爆者が、今日でも白血病で死んでいる。日々起こっている。毎日、原爆は落ちている。広島は毎日起こっている。毎日新しく、毎日我々に、問題を突きつけている」丸山氏も被爆者だったことを初めて公表

「何か日本はおかしいところがある。一番、世間を騒がしたのはオウム真理教ですね。あれが非常に変わったもの、自分たちと縁が無い、どうしてあんなのが生まれたのかと、思う方が少なくないようですけど、私はひと事と思えません。一言にしていえば、私の青年時代、日本中がオウム真理教だったのではないか。そうすると、非常によく思い当たる。一歩日本の外に出れば全然通じない理屈が、日本の中でだけ堂々と通用している。それ以外の議論は、耳にもしないし問題にしない」

(私はオウム幹部と同世代であり彼らと私と何が違ったのかかなり突き詰めて考えたし、縁遠いなどとは思えなかった。村上春樹氏と河合隼雄氏の対談本でも取りあげられている)

「最後に理屈を言いますならば、他者感覚のなさということなんです。他者がいないんです。同じ仲間とばかり話していますから、その怖さです」
(この「怖さ」がいま現実に吹き荒れている事態)

江田五月氏「自分自身が正しいと思っていることを常に疑ってみる、相対化する。そしてその自分自身が正しいと思っているものに対抗する。自分と意見が違う、その自分と意見の違うものをどれだけ自分が内在的に理解するか。その上で自分の意見と内在的に理解した他者の意見とを、自分の中でぶつけ合わせてみることによって、思想の発展が出てくる。これは非常に(丸山から)教わったことですね。今現実の政治の中でそういうようなことが、あまりにもちょっと足りないという感じはしてまして、多数を持っている人たちも、自分の考えに、あぐらをかくんじゃなくて、少数、あるいは自分と違う他者への、いっぺん共感してみようという思いを持って、お互いの討論をすると、少数の方も同じことは言えるわけですけどね、そういうことがないと、次のステージにのぼっていくことがなかなかできない」

「もし「永久革命」という言葉に意味があるとしたら、民主主義だけが永久革命という名で呼ばれるに値する。世界中どこも民主化を完了した国はない。これから永久に革命していかなければならない。あらゆる国は民主化の過程にある」