踊る小児科医のblog

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禁煙は愛~タバコのない世界を目指して

2010年03月20日 | 禁煙・防煙
 毎年小学校で実施している喫煙防止授業の感想文を読むと、必ずと言っていいほど「なぜそんなに害のあるタバコが売られているのか」という疑問を書いてくれる子がいます。

 タバコは合法的な嗜好品と言われていますが、医学的に考えれば依存性のある毒物で常習者の約半数が死亡するのですから、禁止薬物に指定されても何ら不思議ではありません。

 実際に世界でただ1カ国、タバコのない禁煙国家があります。アジアの仏教国ブータンです。それだけでなく、オーストラリア、タイ、英国といった国々で喫煙率ゼロを目指した政策が実施に移されようとしています。

 オーストラリアでは、現在でも千円前後のタバコ価格を1600円にすべきと政府の特別委員会が報告しています。英国では、タバコのパッケージを白箱にして個人宅や車内での禁煙も推進する法律が準備されています。

 タイではショッキングな画像警告のパッケージだけでなく、タバコそのものを隠して販売することが義務づけられています。フィンランドでもタバコの陳列販売を禁止する法律が準備されているなど、タバコ包囲網は最終段階に達していますが、日本だけがトラックを何周も遅れたランナーであり続けています。



 2006年に「禁煙は愛」を訴えて日本列島を徒歩で縦断したオーストラリア人看護師のマーク・ギブンズさんは、八戸市内の小学校で小学生の質問に対し「喫煙者はカワイソウ、真実を知らされないで死にゆく人たちだ」と答えました。現在のタバコ対策後進国という状況には、歴代の政府だけでなくマスメディアにも大きな責任があると言えます。

 タバコは百害あって一利なしと言いますが、喫煙者が一利あると信じていた「ストレス解消」が幻想であるとわかったいま、タバコのない社会を作り後世に禍根を残さないことは、私たちに課せられた責務なのです。

タバコによる社会の経済的損失

2010年03月19日 | 禁煙・防煙
 タバコ税増税に対して喫煙者から「これまでもタバコ税で国や地方に貢献してきた」という反発があり、政治や行政に関わる方から、貴重な税収のため厳しく規制することへの疑問の声も聞こえてきますが、この点がタバコに関する最大の誤解だと言うことができます。

 医療経済研究機構の試算によると、1999年の時点でタバコ税収が2.3兆円だったのに対し、喫煙による超過医療費と死亡や病気による労働力損失を合計して7.2兆円も損失しており、年間5兆円近く社会に負担をかけていたことになります。この数値は試算方法によって異なってきますが、いずれにせよ税収をはるかに上回る経済的損失を生じていることは間違いありません。



 しかも、これは単純にお金に換算して比較しただけであり、タバコで亡くなった方の命の重みや家族の悲しみは含まれていません。

 日本で初めて屋外タバコ自動販売機を撤去する条例を制定した深浦町の故・平沢敬義町長は、「お金よりも町民の健康の方が大事、長い目で見れば町民のためになる」と訴えて健康長寿のまちづくりを推進しました。それまでヘビースモーカーだった平沢氏は自ら率先して禁煙しましたが、肺がんの病魔に打ち勝つことはできず57歳で亡くなりました。

 お金よりも命が大事。こんな当たり前のことが全く逆になっていたのがタバコ問題の本質であり、突き崩せない壁だったのです。

 タバコ税大幅増税はこの問題を一気に解決に向かわせる切り札と言えます。1)喫煙率激減とタバコによる死亡者減少、2)医療費減少、3)税収増加、4)タバコ税の逆進性(低所得者ほど多額の税金を納めていること)の解消、5)未成年の喫煙がほぼ不可能になるという「一石五鳥」の効果が期待できます。1箱千円になれば、よほどの大富豪の子でないかぎり未成年は買えなくなります。

タバコ 二つの依存症、二つの誤解

2010年03月18日 | 禁煙・防煙
 最近の調査で、20代喫煙者の約7割がニコチン依存症であることがわかりました。これは全世代の喫煙者における割合とほぼ同じで、吸い始めて間もない若者でもニコチン依存に陥っている実態が明らかになりました。

 多くの人が禁煙したいと思っていてもやめられないタバコ。その原因はニコチンにあります。ニコチンには二つの特性がありますが、その一つは毒物だということです。ニコチンの毒性は青酸カリを上回り、タバコ1本分のニコチンで赤ちゃんの致死量に達します。

 もう一つの、最大の特性は依存性です。ニコチンの依存性はアルコールよりもはるかに強くヘロインと同等とされています。タバコをお酒と同じ嗜好品だと言い張る人がいますが、よほどの酒好きでも朝起きてすぐに飲み始める人はいません。しかし、多くの喫煙者は朝から晩まで一日中吸い続けているのです。



 禁煙が難しいのは、ニコチン依存に加えて心理的な依存が生じるからです。喫煙者の多くはタバコがストレス解消になると誤解していますが、実際にはニコチン切れのイライラが喫煙によって緩和されることをストレス解消と錯覚しているだけです。タバコはストレスを減らすのではなく、増やしているのです。

 しかし、仕事の合間の一服でニコチン切れ解消という「報酬」を得る体験が長年続くと、パブロフの犬でお馴染みの条件反射により行動と喫煙が結びついてしまい、心理的依存が生まれます。この依存が残っていると、禁煙に成功して何年もたちニコチン依存から解放された人が、何かのきっかけで再喫煙してしまうことに繋がります。この「幻想」から解放されれば後戻りすることもなくなるのです。

 喫煙者の持つもう一つの誤解は、禁煙は苦しくつらい、自分は意志が弱いので禁煙できないというものですが、禁煙補助薬を使う禁煙治療で楽に禁煙できる時代になっています。

タバコは予防可能な最大の流行病

2010年03月17日 | 禁煙・防煙
新型インフルエンザのパンデミックという言葉がすっかり定着しましたが、そのパンデミック宣言を出した世界保健機関(WHO)では「タバコは流行病(エピデミック)であり、防ぐことのできる死亡原因のうち最大のもの」という認識で規制に取り組んでいます。

 現在、タバコにより全世界で年間500万人以上が死亡しており、このまま放置すると2030年には800万人にまで増加すると警告しています。現在の喫煙者の半数の5億人がタバコで命を落とすことになるのです。

パンデミックとはエピデミックが地球規模で起こることを意味しますが、年間500万人という数字はエイズ、マラリア、結核の死者数を足したものより多く、タバコ病をパンデミックと表現しても不思議ではありません。

 先進国男性の喫煙率は減少し続けていますが、途上国、女性、未成年、貧困層の喫煙は減少しておらず、今後、タバコ病流行の中心は途上国にシフトしていくことになります。

 しかし、感染症ではない喫煙がどうして流行し、なぜ犠牲者が増え続けるのでしょうか。

 その原因の第一は、親や家族、友人、先輩の喫煙です。身近な人の喫煙を見て育った子どもは、喫煙に対する抵抗感が少ないことに加えて、受動喫煙によってタバコを吸いながら育った状態にあるとも言えるため、高率で自らもタバコを吸い始めることになるのです。



 二番目には、テレビドラマやアニメ、映画などにおける喫煙シーンが子どもの喫煙開始に及ぼす大きな影響が指摘されています。

 その源流には、タバコ産業による広告・プロモーション戦略があります。可愛いピンクのパッケージが誰を標的にしているかは明らかです。タバコ規制枠組み条約のガイドラインで、直接的な広告だけでなく、マナーCMやスポーツ文化活動への助成を含む広告の全面禁止が掲げられていることをご存知ですか。

飲食店は通知を守り禁煙に!(2010年3月11日 東奥日報明鏡欄掲載)

2010年03月12日 | 禁煙・防煙
 ◇本年2月末に厚生労働省から、飲食店を含む公共的施設を全面禁煙にすべきという通知が出されました。    

 ◇私たち県民が待ち望んでいた歓迎すべき通知ではありますが、努力義務のみで罰則がないため、多くの飲食店では現状のまま受動喫煙が続くのではないかと危惧されています。

 ◇WHOによると、全世界で喫煙により年間500万人以上が死亡しているだけでなく、受動喫煙でも年間60万人もの人が死亡していると推計されています。

 ◇すでにハワイや香港などの日本人に身近な観光地を含む世界数十カ国で、受動喫煙から利用客と従業員の命を守るために、法律で飲食店内の喫煙を禁止していることは広く知れわたっています。

 ◇今回の通知を見て、何も対策をせず客に受動喫煙の害を被らせ続けるのか、タバコの煙のないきれいな空気で客や従業員の命を守るのか、飲食店としての最低限のモラルが問われる事態となりました。

 ◇本来、諸外国と同様に法律で全ての施設を一斉に禁煙にすれば複雑な問題も生じなかったのに、自治体や現場の飲食店などに責任を押しつけた政府の姿勢も重大な問題です。

※喫煙および受動喫煙による死亡者数推計は、
WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2009: Implementing smoke-free environments
http://www.who.int/tobacco/mpower/2009/en/index.html
による。

※紙面に掲載された文章は上記原文と若干異なっています。

☆字数が足りず書けなかったポイント
・日本人1億2千万人のうち1億人は非喫煙者
・禁煙にすると飲食店の売り上げが落ちるというのはデマ
・分煙でも新しい環境基準(PM2.5)を大幅に上回る
・禁煙にすればコストゼロ
・FCTC受動喫煙ガイドラインの期限は過ぎている
・分煙を残せば従業員の受動喫煙は不可避=職業差別、未成年
・県民の命を守る知事とそうでない知事
・罰則のある法制化が絶対に必要

人権無視の愛子さま報道

2010年03月11日 | こども・小児科
たとえばあなたのお子さんが何らかの理由で一時的に学校に行けなくなったときに、いきなり市長やら教育委員長やらが記者会見を開いて、
「○○さんのお子さんの△△ちゃんは、いついつから学校に行けなくなってます」
「今日は4時間目だけ学校に行きました」
「今日はまた休みました」
などと逐一報告して、それが全国紙やワイドショーで大々的に取り上げられたらどう思いますか。

当然、一般市民の私たちにはそういうことはあり得ないし、発表しても誰も興味を持たないわけですが。。

それが現実に起きている。
一連の「愛子さま報道」がいかに異常事態か、おわかりいただけるかと思う。
もちろん、宮内庁とマスコミの双方に大きな問題がある。

それどころか、ネットで「愛子さま」と検索してみると、悪質な人権侵害としか思えないような憶測と中傷であふれている。。
この信じ難い状況が今の日本人の姿なのか。。

元々、皇室の子どもたちには基本的人権が大きく欠けているといことをこの場でも指摘してきました。
職業選択の自由がない
プライバシーが大幅に制限される
(天皇に近い人ほどその制限幅が大きい)
自由に外出することもできない
(カレシとデートしたり外泊したりすることも困難…ローマの休日という例外はありますが)
選挙権がない
もちろん、被選挙権もない
名字すらない
税金を納めていない
税金で生活している
自由に発言することができない
もちろん、政治的発言は禁忌
日本国憲法で守られていない(逆に憲法で制限されている)
主権者である「国民」ではない
皇位継承権を放棄することもできない
(もちろん、家出もできない…上記映画の例外あり)

同じ国に生まれた赤ちゃんなのに、どうしてたまたまこの家系に生まれてしまったために、このような制限された一生を送らなければいけないのか。
それがその子にとって本当に幸せなことなのか。

皇室というと後継者問題ばかりが取り上げられますが、子どもの人権という視点で皇室というものの在り方について考え直すべきと思う。
それが後継者問題、皇室の将来とも繋がってくるはず。

最短命県脱出へ~寿命を10年縮めるタバコ

2010年03月07日 | 禁煙・防煙
 ご存知のように青森県は男女とも平均寿命が一番短く、がん死亡率もワースト1であり、県の最重要課題として喫煙率を下げることに官民協力して取り組んでいるところです。

 特に男性の平均寿命はトップの長野県と3.5歳もの開きがありますが、弘前大学の中路教授から、この差は青森県の男性が30~69歳の年代で長野県の1.5倍も多く死んでいる結果としての数字であり、一朝一夕に追いつくことは困難と聞いて驚きました。

 一方、喫煙者は非喫煙者より平均10年も寿命が短く、40~60代では倍以上も多く死亡していることが、英国人男性医師の50年にわたる追跡調査で明らかになっています。



 35歳の喫煙者、非喫煙者の同級生が100人ずついたとして、70歳で非喫煙者は19人しか死んでいないのに対し、喫煙者は42人も死亡しているという大差がつくのです。

 よく「うちのおじいちゃんはタバコを吸って90歳まで長生きした」などと言う人がいますが、それは100人のうちたった4人の幸運に恵まれただけであり、非喫煙者はその歳でも24人も長生きしているのです。

 ニコチン依存症と喫煙による合併症を合わせてタバコ病と呼んでいますが、実はタバコ病は子どもがかかる病気です。喫煙者の約9割は20歳より前に吸い始めているのです。

 タバコ病にかかると、約半数は喫煙による病気で早死にし、壮年期死亡者の損失余命は平均22年になります。タバコ病は完治することが困難でしたが、禁煙治療の進歩により苦しまずに治すことが可能になっています。

 かつて医師ですらタバコの害を知らず、多くの人が喫煙していました。いま日本医師会でも喫煙率ゼロを目指して取り組みを進めています。この問題は医療、教育、経済、政治などの糸がからみ合って解決が困難でしたが、ようやく突破口の光が見えてきたところです。

無煙環境でタバコの世代間連鎖を断つ

2010年03月06日 | 禁煙・防煙
 信号待ちをしていると、子どもを乗せた車の中で親が喫煙している姿をよく見かけます。

 青森県が2007年に県内の小中学校・高校で調査した結果、父親の6割、母親の4分の1が喫煙していることがわかりました。



 全国調査でも30代の喫煙率が最も高く、男性が46.9%、女性は16.8%(JT調査・2009年)となっていますが、本県の父親・母親はそれと比べてもかなり高い喫煙率であることがわかります。

 この親の子どもたちは、多かれ少なかれ受動喫煙の中で育っています。もちろん、最近では受動喫煙の害についての知識が広まったため、ベランダや外に出て吸うなど、子どもの前では吸わない方も増えていると思います。

 しかし、肺から吐き出されるタバコ煙が室内を汚染するため、喫煙する家族がいない子どもと比べると何倍もニコチンや有害物質が体に取り込まれていることがわかっています。特に、母親の喫煙でその差が大きくなります。

 さらに最近では、床やソファ、車内などに残留した有害成分による三次喫煙(サードハンド・スモーク)の害も指摘されています。

 受動喫煙によって多くの人が亡くなっているため、世界中で屋内全面禁煙の動きが加速していることをお伝えしましたが、家庭や車の中での受動喫煙はどうなるのでしょうか。

 子どもが同乗している車内での喫煙を禁止する国や州も増えていますが、家庭の中まで法律で踏み込むことは現実的とは言えません。

 さらに大きな問題は、親がタバコを吸うと子どもがタバコを吸い始める率が高くなるという点です。特に、母親が吸うと娘の喫煙率が高くなり、世代を超えて連鎖していきます。

 子どもの喫煙を教育やしつけの問題にしても何も解決しません。タバコ税増税、屋内全面禁煙などの社会的規制により親も子どもも吸わない無煙社会を築くことが必要なのです。

日常生活での最大のリスクは受動喫煙

2010年03月05日 | 禁煙・防煙
 受動喫煙についての諸外国におけるいくつかの研究で、日常的に受動喫煙を被っている人は、そうでない人と比べて10~20%も死亡率が高いということがわかりました。ある物質に曝露された十万人あたり1人でも死亡してはいけないというのが環境汚染の許容基準ですが、受動喫煙はその基準の1万~2万倍の高さに相当することになるのです。

 実際に、全世界で受動喫煙により年間約60万人、対策の遅れた日本では約2万人もの人が亡くなっていると推定されています。

 個々の病気についても、肺がんの一種である肺腺がんのリスクは夫が喫煙者だと約2倍も高くなり、毎年およそ4000人の女性が受動喫煙による肺線がんで死亡していることが、厚生労働省研究班の長年にわたる調査で判明しています。同じ研究で、閉経前女性の乳がんは受動喫煙で2.6倍、本人の喫煙で3.9倍も高くなることがわかってきました。



 子どもの健康に与える影響も深刻です。乳幼児突然死症候群(SIDS)で年間400人前後の赤ちゃんが亡くなっていましたが、リスク要因のうつぶせ寝がなくなって200人以下に減少しました。残る最大のリスク要因は妊娠中・出生後の親の喫煙で、SIDSの約4割がタバコによるものと推定されています。

 新型インフルエンザでは過剰とも言える騒ぎを巻き起こしましたが、国内の死者数は数百人のレベルで季節性以下に収まりそうです。

 一方で、受動喫煙の危険性については、政府もマスコミもその扱いはあまりに小さい状況にありますが、日常的に家庭や職場における曝露でこれだけの死者が出ていることを知れば、国際条約で定めた「屋内全面禁煙」に疑問を差しはさむ人はいなくなるはずです。

 被害の規模と日常的に多くの人が曝露されているという点において、アスベストとは比較にならないほどの被害が続いているのです。

受動喫煙の想像をはるかに超える健康被害

2010年03月04日 | 禁煙・防煙
 飲食店を含む公共的施設を分煙ではなく全面禁煙にすべきという厚生労働省の通知に対して、あるメディアに「えー!?公共空間を全面禁煙。禁酒法ならぬ禁煙法成立も近い?」などという世界の医学的常識を全く踏まえていない記事が載りましたが、この程度の認識が今の日本の実態なのかもしれません。

 皆さんはレストランで「こちらはアスベスト席、こちらは禁アスベスト席ですが仕切りがないので流れてきます」と案内されたらそのお店を利用しますか。現実にはそれと同じことが起きています。それが受動喫煙です。

 受動喫煙による健康被害は医学的に確定され、受動喫煙にはどこまでなら安全というレベルはなく、分煙では被害から守ることはできない。これは米国政府やWHOなどが数多くの調査研究を元に導き出した結論です。



 前回も触れたタバコ規制枠組み条約の受動喫煙防止ガイドラインでも、「2010年2月までに罰則のある法律によって屋内全面禁煙を実現する」ことが、2007年に日本を含む加盟国の全会一致で決定しました。

 その期限である本年2月までに、欧米先進国のみならずタイやトルコ、ブラジルなど世界の数十ヶ国が、罰則のある法律や条例によって屋内全面禁煙を実現しました。その結果として、驚くべき事実が判明したのです。

 ヨーロッパやアメリカの各地から、法律制定後に心臓発作による救急患者が10~40%も減少したという報告が相次ぎました。これは通常の予防医学の進歩では説明できない数字であり、それまで受動喫煙によってそれだけ多くの人が心筋梗塞で入院したり亡くなったりしていたことが確定的と判断されました。

 ところが、日本で期限末に出てきたのは罰則のある法律ではなく、実効性の乏しい努力義務を課した局長通知一通でした。これでは利用者や労働者の命を守ることはできません。

葉タバコ農家の将来とタバコ税の活用

2010年03月03日 | 禁煙・防煙
 喫煙や受動喫煙の甚大な健康被害、タバコ税増税の必要性など大切な話を後回しにして、葉タバコ農家の将来について考えてみます。

 現在、国内の葉タバコ農家数、生産額はともに減り続けており、生産者の高齢化と後継者不足もあり将来性が不安視されています。

 一方、日本たばこ産業(JT)の葉タバコ購入量に占める国内産の割合は3分の1にまで低下しています。もしここでタバコ一箱千円になったら葉タバコ農家は壊滅的な打撃を受けると言われていますが、喫煙者が3分の1に減少しても、JTが全量を国内から購入すれば葉タバコ農家には全く影響は出ません。これが一番現実的な解決方法と考えられます。

 しかしそれで将来まで安泰とは言えません。今後もタバコ規制政策は厳しくなりこそすれ、ゆるむことはあり得ないのが現実だからです。

 日本を含む世界の168ヶ国が参加しているWHOタバコ規制枠組み条約をご存知でしょうか。世界中の国が手を取り合って、タバコから各国民の命を守ることを目的に制定された公衆衛生分野で初めての国際条約です。

 そこにはタバコパッケージの画像警告、タバコ会社の広告・スポンサーシップの禁止など数々の規制政策が掲げられていますが、その筆頭にあげられているのがタバコ税増税です。タバコ価格を上げることで、何の費用もかけずに最大の効果が期待できることは、諸外国ですでに証明されているのです。

 日本医師会を始めとする増税推進派は、増税による税収を、タバコによって増加した医療費や禁煙治療の保険適用拡大にあてるとともに、葉タバコ農家の転作補助に使うことを提言してきました。しかし、財務省は他の使い道に回すことのできない目的税に反対し続けています。全く理解できない理屈です。国民の命を守ることと葉タバコ農家の将来の両立を真剣に考えているのはどちらでしょうか。



タバコ税増税は誰のため?

2010年03月02日 | 禁煙・防煙
 いよいよ今年の秋からタバコ一箱の価格が300円から400円に上がります。飲食店を含む公共の場を全面禁煙にするという厚生労働省の通知も出されました。この機会に禁煙しよう、あるいはご家族に禁煙してほしいと考えている方も多いのではないでしょうか。

 最近なぜこのように喫煙に対する規制が厳しくなってきたのでしょう。数回にわけてタバコと健康について考えてみたいと思います。

 日本医師会など多くの医療団体ではタバコ1箱千円を目標とした大幅増税を求めて署名運動を繰り広げてきましたが、2008年末には前政権の中で増税は見送りになってしまいました。今回の100円の値上げは諸外国と比べても全く不十分なものですが、それでも首相が「国民の健康を目的に」と言明して増税することが決まった点において、これまでの政策から大きく転換してタバコ規制政策に舵を切ったものと評価することができます。



 一方で、喫煙者からは「取りやすいところから取る安易な増税」「今までもタバコ税を納めて国や地方に貢献してきた」といった声も聞こえてきます。また、青森県南・岩手県北は葉タバコ栽培が盛んな地域であり、これ以上のタバコ規制政策は葉タバコ農家に壊滅的な打撃を与えるものとなりかねません。この点は非常に重要で、地域の暮らしを守るために真剣に考え、緊急に果たさなくてはいけない政治的課題が山積しているのです。

 「取りやすいところから取る安易な増税」という批判は、実はこれまでの増税についてはその通りでした。1本1円程度の増税では一時的に税収が増えても、元々の喫煙率減少傾向の中ですぐに減収となってしまう愚策だったのです。今後も毎年のように大幅増税が議論に上るはずですが、その目的は「できるだけ多くの国民に禁煙してもらい、タバコで命を落とす悲劇を減らすこと」にあるのです。