踊る小児科医のblog

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禁煙外来はまだ不足・医師の喫煙は不適格・野田内閣の不作為:八戸医学会発表(3)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙

発表は以上ですが、少しだけ付け加えさえて下さい。禁煙外来は八戸で18軒と、ここ1-2年で急増していますが、


人口あたりでみると、野辺地、弘前、青森より下で、全体では19位と低く、まだまだ足りないと言えます。


そして、本日お話ししたのは、(この真ん中の円の)禁煙治療の部分だけで、これは受け皿として必要ではありますが、本当はこのように他のことも全てやらなくてはいけない。特に、タバコ税増税で八百円・千円になれば、禁煙外来に難民が殺到することになります。


もう一つだけ、今年2月に日医で受動喫煙ゼロ宣言が出されましたが、ほとんど知られていません。これは、受動喫煙ゼロだけでなく、医師はタバコを吸っていてはダメですよと宣言しているのですが、八戸では医師会は何もしていない状況にあります。


准看学院で禁煙の講義を行っていますが、医師だけでなく看護師も、これからは喫煙者は失格なんだ、医師や看護師がタバコを吸っていることで、タバコ会社の社長は高笑いしているんだということを話しています。


喫煙している医師・看護師には禁煙治療を行うことはできません。同じように、国のトップが喫煙していると、、


この方(野田首相)は、昨日(11/16)ご自分でお辞めになったようで、もう二度と首相に戻ることはないと思いますが、財務相当時も担当大臣であるにも関わらず「タバコ税増税はオヤジ狩りだ」などと国際条約に反したことを平気で公言していました。
以上です。ありがとうございました。

(註:実際には衆議院を解散しても次の首相が決まるまでは首相職に留まりますが、現実的な表現としてこのように言いました。)

チャンピックスの副作用・減量者率と新たな体重別男女別投与量:八戸医学会発表(2)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙

禁煙補助薬は、ニコチンパッチと、経口薬のバレニクリン(商品名:チャンピックス)の2つが使われています。


2つの薬剤の選択は、虚血性心疾患のある方はニコチンが禁忌ですのでバレニクリンを、精神疾患のある方にはニコチンパッチを主に選択しています。(※)


同じことを表にしてみましたが、心疾患のある方はニコチンパッチが使えず、精神疾患のある方はチャンピックスは慎重投与となるので、何もない方と心疾患の方はチャンピックス、精神疾患のある方はニコチンパッチが主に使われています。


薬剤別の患者数ですが、チャンピックスの発売以降は、ほぼ9割の方がチャンピックスを選択しています。


薬剤別の成功率では、チャンピックスが64%、ニコチンパッチが42%と2割以上の大きな差がみられました。


精神疾患の患者さんは、統合失調症、うつ病など、全体の1割、31名でした。人数には重複があります。


精神疾患の患者さんの禁煙成功率は39%と低く、薬剤別で比較しても特に差はみられませんでした。


バレニクリン(商品名:チャンピックス)は、使いやすくて成功率も高く、ニコチンを投与しなくていいというメリットはありますが、吐き気などの副作用の頻度が高いことが問題となります。
(註:今回の発表では精神疾患への影響については検討していません)


今回の検討でも、チャンピックスの吐き気が圧倒的に多く、ニコチンパッチでは皮膚症状が主でした。


禁煙治療の標準手順書では、吐き気に対して吐き気止めを使うか、用量を減らすと書かれていますが、薬の副作用に対して更に薬を使うというのは間違っていると思いますので、(患者さんと相談しながら)副作用の程度と禁煙の状況に応じて減量するようにしています。


何らかの副作用により減量した人は、チャンピックスが2割、ニコチンパッチでは3分の1ですが、ここには最初から投与量を減らした人も含まれています。チャンピックスでは男性に比べて女性が3倍も高くなっています。


そこで、体重別、男女別に減量者の割合を調べたところ、 50キロ未満では半数以上が、50~60キロでも4分の1以上が減量してることがわかりました。


同じものをグラフにしてみましたが、注意したいのは、60キロ以上でも女性の減量者はほとんど減っていないということです。これを見ると、日本人の女性には用量が多すぎるのではないかと考えられます。


そして、減量した人の成功率は、減量しなかった人や全体の平均よりもむしろ高くなっています。本当に高いのかどうかはわかりませんが、少なくとも成功率は下がっていないということは言えると思います。


そこで、この2週目、8日目から1ミリグラムに増量するところを、


体重と男女別に、50キロ未満はそのまま増量せず、50~60キロの男女と60キロ以上の女性は0.5ミリを3錠までにしてみることにしました。これはまだ実施していませんので今後更に検討する必要があるかもしれません。

禁煙治療の成功率・男女・年齢・受診回数・本数年数・依存度別 体重増減:八戸医学会発表(1)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙
第38回八戸医学会(2012年11月17日)で発表した『禁煙外来6年間305例の治療経験から 特にバレニクリンの副作用と新たな用量設定について』のスライドと口演原稿を、若干の注釈を加えて掲載します。枚数が多いので3回に分けます。画像が小さくてみにくい部分があるかと思いますので、PDFファイルもアップしておきます。 →PDF



まずはじめに、喫煙は予防可能な最大の死亡原因であり、ニコチン依存症は完治しうる慢性疾患であるとされています。この「完治できる」というところが、高血圧や糖尿病との最大の違いです。


わが国では2006年に禁煙治療が保険適用になり、2008年には経口薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)が使えるようになり、2年前にはタバコ税が増税されています。(※八戸医学会ではこのスライドは省略:以下※印は同じ)


当院では10年前から禁煙外来を実施していますが、2006年の保険適用で急増し、バレニクリン(チャンピックス)が使えるようになってまた増えて、タバコ税増税で倍増しています。


今回はこの赤枠の、保険診療の6年間305例について検討してみました。


男女比では女性が約3分の1で、JTの調査では約4分の1ですから、女性の比率がやや高い傾向にありました。


全体の禁煙成功率は、12週間後で58%で、男女差はありませんでした。あとで触れますが、精神疾患の患者さんの成功率は39%と明らかに低くなっていました。


年代別の受診者では、30代が最も多く、40代、20代と続いていますが、 禁煙成功率は年代が上がるにつれ高くなり、60代が最も高くなっています。


受診回数別では、5回12週受診された方は98%が成功していますが、1回目から4回目まで毎回1割前後の方が脱落しています。


中医協の資料では、5回終了者の成功率は79%であり、これよりも高い成績が得られました。(※)


タバコ依存症スクリーニングテスト、TDSの点数別では、9点10点と依存性の高い方の成功率が低めになっていますが、全体では明らかな傾向はわかりませんでした。(※)


ブリンクマン指数(喫煙本数×年数)でみると、むしろ本数・年数が多いほど成功率は高い傾向となりました。これは、何らかの疾患により禁煙の必要性が高い人が多いためと考えられます。(※)


体重の増減では、12週間後の体重はプラス1.8キロで、男女差はありませんでしたが、男性の方がばらつきが大きい傾向がみられました。


体重別に比較してみましたが、特別の傾向はみられませんでした。男性に増減の大きい方が散見されます。(※)

太陽光発電を始めました 脱原発・エネルギーシフトへの力に プロパンガス発電機も導入

2012年11月07日 | 東日本大震災・原発事故
 かなり離れないと下から見えないかと思いますが、10月中旬に太陽光パネルを設置し、太陽光発電を開始しました。パネル25枚で5.5kW、一般家庭に設置できる容量としては大きな方で、7月から始まった固定価格買取制度により十数年で元が取れるという皮算用です。診療所兼住宅のため日中の使用電力量が大きくなり年数がかかりますが、一般家庭なら売電量が大きくなるため十年ちょっとでプラスになるのではないでしょうか(メーカー・価格・屋根や気象条件などにより異なります)。

 4kW程度の太陽光パネルを25万世帯が設置すれば計算上は100万kWの原発1基が不要になります。もちろん夜間の電力は買わなければいけませんが、特に夏の日中のピークには大きな戦力になるはずです。東北電力では東通・女川あわせて4基が停止中ですが、この夏も一時的に火力が停止して厳しい時期はあったものの電力は足りています。原発反対のデモや集会も大切ですが、持ち家のある方や今後建てる予定の方なら自分で電力をつくることが脱原発・エネルギーシフトの大きな力になっていくはずです。

 なお、停電時も日中の発電中であれば1.5kWまで電気が使えますが、曇天時や夜間のためにプロパンガスの発電機も購入しました。自家発電で全てをまかなうことはできませんが、長期の停電や大規模災害のときに最低限の診療や対応ができることを目標としています。(使う機会がないことを願いますが)

(以上、院内報より)

→山匠電気のHPにも設置工事の写真が掲載されています


10月13日。朝方の雨もあがって半日で架台設置終了。


10月14日。快晴。25枚の太陽光発電パネルを設置し、屋内工事もほぼ終了。


太陽光発電パネル(Panasonic)。畳を二まわりくらい小さくしたサイズ。


下から見上げても、かなり離れないとよく見えません。


屋内に設置されたパワーコンディショナー。直流から交流に変換される。233W×25枚で計算上は5.825kWがmaxなのですが、パワーコンディショナーの5.5kWが上限となる。


停電時には自立運転で1.5kWまで使うことができる。

ロタウイルスワクチン(ロタリックス・ロタテック)の接種を開始します 11月から 料金・回数・接種時期

2012年11月07日 | 予防接種
A) ロタリックス(1価) 1.5ml×2回(経口) 12,600円/回
B) ロタテック(5価)  2ml×3回(経口)   8,100円/回
 接種時期 A) 生後6週から24週未満(4週以上の間隔で) 同時接種可
  ・間隔 B) 生後6週から32週未満(   〃    )   〃

※ どちらも弱毒生ワクチンで、ロタウイルス胃腸炎による重症化・入院や死亡を減らす効果が認められています。製法等が異なるため単純な比較は出来ませんが、明らかな優劣はないとされています。主な副反応は下痢・嘔吐等で、週数が限定されているのは腸重積を増やさないためです。初回は15週未満が推奨されています。

(院内報10・11月号より)

インフルエンザ予防接種 10月から始まっています

2012年11月07日 | 予防接種
 ご案内が遅くなりましたが、インフルエンザの予防接種が10月から始まっています。 接種量、回数、間隔、料金は昨年と同じです。 流行開始前に接種し終えるためには、年明け頃がリミットとなります。早めにお申し込み下さい。

 生後6カ月~2歳 0.25ml 2回(2~4週間隔) 2,500円
 3歳~12歳    0.5ml 2回(2~4週間隔) 3,500円
 13歳~64歳    0.5ml 1回 or 2回(1~4週間隔) 3,500円
              (小児には2回接種をお勧めしています)
(院内報10・11月号より)

不活化ポリオ 単独は9月から 四種混合は11月から接種開始

2012年11月07日 | 予防接種
 不活化ポリオ単独ワクチンの接種が9月から始まっています。接種回数等については表でご確認下さい。なお、このワクチンはフランス製で針付きの注射器になっていますが、日本製と比べて針の切れが悪く、他の予防接種よりも痛みがあるかもしれません。痛みが少ないように工夫しながらやっていますが、いかんともしがたい。必要なワクチンなので全部済ませるようにして下さい。

 11月から始まる四種混合(三種混合+ポリオ)は、これまで三種混合もポリオも1回も受けていない子が対象となります。三種混合とポリオを3回接種し終えた子の追加接種が、四種混合1回で済むようになるかどうかは未定です。



(院内報10・11月号より)

生後6カ月までの予防接種スケジュール 四種混合・ロタ・ヒブ・肺炎球菌・BCG

2012年11月07日 | 予防接種
乳児期に接種すべきワクチンの種類が大幅に増えてスケジュールの組み方が大変難しくなっています。5種類12~13回のワクチンを生後6カ月までに接種できるスケジュールの例を紹介しています。

生後6カ月までの予防接種スケジュール 2012年11月1日版 くば小児科クリニック

当院では同時接種を行っていますが、次のような方針で接種しています。
1)注射は同時に2種類までとする。組み合わせは「ヒブと肺炎球菌」「三種混合と不活化ポリオ」のパターンを原則としていますが、進み方によってはその他の組み合わせも可能です。
2)BCGと他の注射は同時に接種しない。(医学的にダメなわけではありませんが)
3)ロタウイルスワクチン(ロタリックス・ロタテック:経口)については、他の4種類のいずれとも同時接種可能。ロタは原則として他と同時接種で進めることにする。したがって、1)2)の原則と合わせると、ヒブ・肺炎球菌+ロタ、四種混合+ロタ、BCG+ロタのいずれかの組み合わせになる。

例として2つのパターンをお示ししましたが、いずれも生後2ケ月から15週間7回の受診で全ての接種を終えることができます。例1(BCG+ロタを入れる)の方がロタウイルスワクチンを早く終了することができます。

なお、どうしてもご希望の方には全部単独接種も可能ですが、受診回数も多くなり終了までの期間も長くなります。

同時接種については、一つ一つのワクチンのリスクを更に高めることはないということが世界的に共通の認識となっており、日本小児科学会でも同時接種を推奨しております。

日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方(PDF)

食品の放射能汚染その後 キノコとタラはもう大丈夫?

2012年11月06日 | 東日本大震災・原発事故
 「食品の放射性物質 年齢の数字が目安か キノコとタラに注意」と書いたのは2011年12月・2012年1月号でした。その後、マダラが100Bq/kgの基準値オーバーを繰り返して出荷制限に追い込まれたことは御存じの通りです。11月から解除になりましたが、基本的な状況は昨年から何ら変化していません。

 マダラに関しては、100を切ったから良い悪いという問題ではなく、次の2点について全く分かっておらず、県も関係者もマスコミも解明する気が全然ないということ自体が最大の問題です。

1)マダラの回遊ルートや範囲がわかっておらず、汚染度の高かった個体が福島や宮城沖から来たのか近海で汚染されたのかがわからない。
2)それに関連して、海底の汚染状況がほとんど調査されていない。

 マダラは海底に近いところに棲息していて食物連鎖の最上位に位置しているため、他の魚と比べて格段に海底汚染の影響を強く受けるようです。個人的な推測としては、事故後に莫大な量(詳細は不明のまま)が放出された福島の海洋汚染に加えて、広い流域から放射性物質を海に流し続けている阿武隈川の河口~仙台湾の海底汚染が今後更に蓄積されていくのではないかと懸念していますが、具体的なデータの裏付けはなく、解明される見込みもなさそうです。

 ですから、マダラは出荷制限が解除されて「安全宣言」が出されても依然として要注意であり、八戸港の出荷前検査も大きな進歩ですが、検査値までは表示されないようなので、子どもに安心してお勧めすることはできません。津軽海峡や日本海なら大丈夫だとは思いますが、引き続き検査情報のチェックを続けていく必要はあります。昨年と同様に<年齢の数字>を目安に。。

 キノコに関しては「岩手県南は要注意、県北はたぶん大丈夫」と書きましたが、10月に入ってから少し様相が変わってきました。

 十和田市 チチタケ   Cs137 120 Cs134 ND Bq/kg
 階上町  ホウキタケ  Cs137  98 Cs134 18 Bq/kg
 青森市  サクラシメジ Cs137 107 Cs134 ND Bq/kg

 十和田市、階上町に続いて青森市にも野生キノコの出荷制限が指示されました。ただし、ここで注意してほしいのはセシウム(Cs)137と134の割合です。福島原発事故では137:134がほぼ1:1の割合で放出されました。1年半経って、Cs137(半減期30年)に比べてCs134(半減期2年)の方が多く減少しているとしても、上記のデータはアンバランス過ぎます。

 この結果から推測されることは、1950-60年代の核実験による汚染やチェルノブイリ由来が7~8割、福島原発事故による汚染が2~3割程度であり、過去40年以上にわたって私たちは放射能キノコを食べ続けてきたという事実です。過去にはもっと汚染されて時期もあったのに、検査してないからわからなかった。フクシマ以前の基準はチェルノブイリの時に定められた370Bq/kgだったし、国内のキノコなど誰も気にかけていなかったので、フリーパスで市場に出回っていた。

 もちろん、階上のデータでわかる通り、フクシマの影響が無いわけではなく、過去の汚染に更に上乗せされた状況にあります。山林の除染、特に青森県のような比較的汚染度の低い地域の除染がなされる見込みはゼロ(不可能)ですから、今後もCs137がゆっくりと減るのを待つしかなさそうです。(60年で1/4にはなりますが…)

日本脳炎と不活化ポリオ予防接種との関連を疑われた死亡事例報道についてのコメント(11/1改訂版)

2012年11月06日 | 予防接種
 10月中旬から、日本脳炎と不活化ポリオ接種後にみられた死亡事例について報道されています。詳細な情報が手元にない段階で、因果関係の証明や否定は元々非常に困難だという前提の元に、コメントしてみます。(10/26に書いた文章に、10/31の厚労省委員会の結果を受けて加筆修正しました。)

1)日本脳炎 10歳男児 10月17日 接種後5分で心停止、2時間半で死亡
 このケースは接種後5分には心肺停止していたと伝えられていますので、予防接種という行為との直接的な関係が考えられますが、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)による経過としては少し早すぎるように思われます。

 この年齢で「接種を嫌がって逃げたところを待合室で取り押さえて接種した」ということと、何らかの疾患で薬を飲んでいたという情報から、軽度の発達障害などの基礎疾患があったと考えられますが、死亡との関係も不明です。不整脈を起こしやすい疾患や併用薬の副作用も疑われますが、原因やワクチンとの因果関係がこれ以上明らかになることはないと思われます。

 このやや特殊な1例だけを根拠に日本脳炎の接種全体を見合わせることにはならないものと予想されます。(10/31の委員会でも同様の判断でした)

2)日本脳炎 10歳未満の子ども 7月 接種後7日目に急性脳症にて死亡
 接種翌日から感冒症状、2日後に発熱、痙攣の重積、7日目に死亡。剖検はしておらず、ワクチンとの因果関係は否定できないものの、夏かぜのウイルス感染による脳炎・脳症などの紛れ込み事故の可能性が強そうに思われます。基礎疾患として甲状腺機能低下症、てんかん、発育遅延があったとのことです。

 日本脳炎は2009年に新しいワクチンで接種が再開されてから1000万接種以上で関連が疑われた死亡事例はありませんでした。なお、この2例で使用されたワクチンは阪大微研製で、当院で採用している化血研ではありません。

 また、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)はウイルス感染やワクチン接種後などに生じる原因不明のアレルギー性脱髄疾患で、現在のワクチンはより安全性が高められたはずですが、引き続き発生頻度(1/131万)に注意は必要です。

3)不活化ポリオ 6ケ月~1歳の女児 9月 接種後18日で嘔吐、翌日死亡
 これは明らかに「紛れ込み事故」と断言できます。不活化ワクチン接種後ずっと元気だったのに18日目にいきなり症状が出ることは考えられません。

 現在、日本は乳児死亡率が世界で最も低い国の一つですが、それでも千人あたり2~3人、全国で毎年100万人生まれた赤ちゃんのうち2000~3000人(毎週50人前後)が1歳前に亡くなっています。その多くは先天的な重い病気や小さな未熟児などですが、元気に育っていた赤ちゃんが突然亡くなる「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という病気により、かつての年間500人からここ数年は年間150人程度に減ったものの、全国で毎週3人前後の赤ちゃんが突然死しているのです。(SIDS の最大の要因は父親・母親の喫煙です)

 今回の3例はSIDSではなく年長児も含まれていますが、様々なウイルス感染による脳炎・脳症や心筋炎、それまで診断のついていなかった病気などによって、元気な子どもが急激に重症化したり死亡したりすることも稀にあります。

 特に乳幼児期は多くの予防接種を短い間隔で接種している時期ですから、接種後の一定の期間に重篤な症状が出たり死亡した例が発生することは避けがたく、ワクチンとの関連が強いのか、何らかの病気によるものかを区別することは困難になります。そこで、定期接種であれば因果関係が不明な紛れ込み事故も含めて予防接種の有害事象として救済措置がとられることになるのです。

 ポリオの生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えの際に、マスコミは「危険な生ワクチン」「安全な不活化ワクチン」というレッテルを貼って混乱を助長しました。これまでこの院内報でもお伝えしたように、ワクチンに限らず医療には「ゼロリスク」というものはありません。不活化ワクチンでも非常に少ないとはいえ他の予防接種と同程度の頻度で急性の副反応や、ワクチンと関係のない「紛れ込み事故」が起こり得ることを理解した上で、病気にかかった場合の大きなリスクも考慮して判断していただければと思います。

 日本脳炎に関しては、人から人への感染が無いことと、青森県内にいるなら感染のリスクは非常に低いことから、もし心配なら少し様子を見てから接種しても問題は生じないでしょう。ポリオは未接種者が多く輸入感染による流行が懸念されていることに加えて、今回の死亡例と接種との因果関係は否定的なことから、接種を見合わせるべきではありません。

リンク
第7回予防接種部会日本脳炎に関する小委員会資料(2012.10.31)(厚生労働省)

院内報2012年8・9月号と10・11月号を掲載しました

2012年11月06日 | こども・小児科
毎回発行が大変遅くなっておりますが、8・9月号および10・11月号をHPに掲載しました。

くば小児科クリニック院内報
http://www.kuba.gr.jp/info/ih.html

2012年10・11月号(PDF)
 院内版感染症情報~2012年第44週(10/29~11/4)
 インフルエンザ予防接種 10月から始まっています
 不活化ポリオ 単独は9月から 四種混合は11月から
 ロタウイルスワクチンの接種を開始します 11月から
 予防接種との関連を疑われた死亡事例報道についてのコメント(日本脳炎・不活化ポリオ)
 11月~12月の診療日、急病診療所、各種教室、相談の予定
 11月の予定表(PDF)

2012年8・9月号(PDF)
 食品の放射能汚染その後 キノコとタラはもう大丈夫?
 原発ゼロでも核燃サイクル堅持を喜ぶ青森県 中間貯蔵も焦点
 太陽光発電を始めました
 津波の被害を最小限にするために 将来の市街地の縮小を

2012年10月に読んだ本

2012年11月01日 | ART / CULTURE
2012年10月の読書メーター読んだ本の数:25冊読んだページ数:2475ページナイス数:2ナイス旅の絵本 (3)旅の絵本 (3)読了日:10月29日 著者:安野 光雅
絵本玉虫厨子の物語 (愛と真実の絵本)絵本玉虫厨子の物語 (愛と真実の絵本)読了日:10月29日 著者:平塚 武二
はっぴぃさんはっぴぃさん読了日:10月29日 著者:荒井 良二
無常という力―「方丈記」に学ぶ心の在り方無常という力―「方丈記」に学ぶ心の在り方感想玄侑宗久氏の放射能汚染に関する意見には殆ど賛同できない。その上で、方丈記を通読してみたいという動機と兼ねてフクシマに関して何が書かれているのか気になって図書館から借りてみた。全体の解釈には納得できるが、放射能汚染については方丈記からの我田引水、牽強付会の論法と言わざるを得ない。読了日:10月25日 著者:玄侑 宗久
プロメテウスの罠 2プロメテウスの罠 2読了日:10月23日 著者:朝日新聞特別報道部
旅の絵本〈5〉旅の絵本〈5〉読了日:10月23日 著者:安野 光雅
おしゃべりなたまごやき (日本傑作絵本シリーズ)おしゃべりなたまごやき (日本傑作絵本シリーズ)読了日:10月22日 著者:寺村 輝夫
ちいさな1ちいさな1読了日:10月22日 著者:アン・ランド,ポール・ランド
ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間 (ノンフィクション・隣人たちの哲学)ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間 (ノンフィクション・隣人たちの哲学)感想菅谷昭先生が2001年に書いた『ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間』を11年ぶりに読み直した。子ども向けの本だから何時間もかからないが、菅谷先生の発した警告のメッセージの数々を改めて目にすると、悔恨の念しか浮かばない。菅谷先生自身が最もその思いを強くしているのではないか。「日本は、世界で唯一原子爆弾の被害を受けた国でもありますが、現在は全国に五十以上もの原子力発電所を抱える国でもあります。チェルノブイリ事故は、決して人ごとではないのです」「二十一世紀の日本をになう少年少女たちが、この本を読んで、原子読了日:10月19日 著者:菅谷 昭
八戸写真帖―明治・大正・昭和・平成 南部寺子屋「はちのへ塾」八八戸写真帖―明治・大正・昭和・平成 南部寺子屋「はちのへ塾」八読了日:10月16日 著者:八戸観光コンベンション協会
想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)読了日:10月16日 著者:高田 郁
すずの兵隊―アンデルセン童話 (おはなしのたからばこ 14)すずの兵隊―アンデルセン童話 (おはなしのたからばこ 14)読了日:10月16日 著者:石津 ちひろ
あさになったのでまどをあけますよあさになったのでまどをあけますよ読了日:10月15日 著者:荒井 良二
キャベツくん (ぽっぽライブラリ―みるみる絵本)キャベツくん (ぽっぽライブラリ―みるみる絵本)読了日:10月15日 著者:長 新太
ゴムあたまポンたろう (絵本・こどものひろば)ゴムあたまポンたろう (絵本・こどものひろば)読了日:10月10日 著者:長 新太
おならのしゃもじ (日本の民話えほん)おならのしゃもじ (日本の民話えほん)読了日:10月9日 著者:小沢 正,田島 征三
やまからにげてきた;ゴミをぽいぽい (絵本・こどものひろば)やまからにげてきた;ゴミをぽいぽい (絵本・こどものひろば)読了日:10月9日 著者:田島 征三
旅の絵本〈6〉旅の絵本〈6〉読了日:10月8日 著者:安野 光雅
はだしのゲン (第10巻)はだしのゲン (第10巻)読了日:10月8日 著者:中沢 啓治
花散らしの雨 みをつくし料理帖花散らしの雨 みをつくし料理帖読了日:10月5日 著者:高田 郁
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)読了日:10月5日 著者:高田 郁
もう原発はいらない!もう原発はいらない!読了日:10月1日 著者:郡山昌也,大野拓夫
いろはにほへといろはにほへと読了日:10月1日 著者:今江 祥智
旅の絵本II (改訂版) (安野光雅の絵本)旅の絵本II (改訂版) (安野光雅の絵本)読了日:10月1日 著者:
はだしのゲン 9はだしのゲン 9読了日:10月1日 著者:中沢 啓治
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