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もんじゅ廃炉後の核燃料サイクル 政策転換の転機はいつどこに?(青森県保険医新聞掲載)

2017年05月29日 | 東日本大震災・原発事故
もんじゅ廃炉後の核燃料サイクル 政策転換の転機はいつどこに?

 問題は複合的だが、5つに絞って考えてみる。①余剰プルトニウム、②使用済み燃料(核のゴミ)と最終処分場、③再処理中止・原発廃炉により施設と使用済み燃料が負債になる問題、④立地地域対策と六ヶ所の使用済み燃料返送覚書、⑤将来世代に対する責任。

 いずれも福島以前から指摘されてきた問題で、順に考えていけば、脱原発+再処理中止+暫定保管・直接処分+立地地域への補償・支援という選択肢に辿り着くはずだが、現実には政策転換が検討される気配すらない。

 ④が全体を縛っているが、再処理機構との覚書にも「施設外への搬出を含め速やかに必要かつ適切な措置を講ずる」とあるだけで、原発に必ず返送するとは書かれていない。河合弘之弁護士は「事情変更の原則」により約束は失効したと考えるべきと提案している(同氏HPに掲載)。

 最終処分場は、学術会議の提言「50年間の暫定保管と30年以内の合意形成」が採用されたとしても解決は難しく、政府の有望地マップ提示方式ではすぐに頓挫するであろう。事故の危険性を除いても、②と⑤は原発・核燃が倫理的に存立し得ない最大の論拠である。

 2月に開催された「日米原子力協力協定とプルトニウム政策国際会議」の有志声明でも、日中韓への再処理モラトリアムと六ヶ所稼働無期限延期が提言されている。

 その一人である鈴木達治郎氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター長)は、核燃料サイクル・全量再処理の行き詰まりを打破する改革として、(1) 使用済み燃料の直接処分を可能にする、(2) 中間貯蔵としての乾式貯蔵容量の拡大、(3) プルトニウム在庫量の削減計画の明示、(4) 第三者による総合評価の4点を挙げていた。

 鈴木氏は2012年に原子力委員会委員長代理として核燃料サイクル政策の選択肢について取りまとめており、当時は直接処分と再処理の併存が政策変更コストを含めた諸条件で有利と提示された。

 もんじゅ廃炉が現実となったいま、プルトニウム削減を考えれば再処理工場が稼働する可能性はゼロに近い。県や県民はそれを前提に将来の論議を急ぐべきだ。

(7月15日に鈴木氏の講演会が八戸市で開催される)

…青森県保険医新聞の4月号に掲載された文章ですが、ブログに転載するのを忘れていて遅くなりました。

『世界最低レベルから更に逆行するタバコ規制』(5/20地方紙投稿)

2017年05月27日 | 禁煙・防煙
(6月3日に一部手直しされ、最後の文章も過去形になって掲載されました。画像を最後に載せておきます)

 昨年公表された『たばこ白書』には、受動喫煙により年間約1万5千人が死亡しており、日本の対策は世界最低レベルだとWHOが評価していることが明記されました。

 様々な災害や内戦などで多くの人の命が失われていますが、一方で、家庭や職場などの身近な環境において毎年これだけの犠牲者が出ていることを放置し、有効な対策を実施してこなかった政治に憤りを感じます。受動喫煙死はゼロにすることが可能なのです。

 新たな受動喫煙防止法案のニュースも伝えられていますが、この議論は世界的には十年前に決着しており、2007年には国際条約のガイドラインで例外のない屋内全面禁煙が求められることになったのです。もちろん、日本政府もこれに賛同しました。

 その後、世界各国で受動喫煙対策が進み、ロシアや韓国でも法律が制定されました。日本も2010年までに規制すべきだったはずなのに、2020年の東京五輪に向けた法案が骨抜きにされようとしているようです。

 この厚生労働省案は世界的には認められていない分煙を残した不完全な対策なのに、これを「厳しすぎる」として反発している一部の国会議員は、国民の命を守るという職務を忘れているのではないでしょうか。

 5月31日は世界禁煙デーです。28日には7年ぶりに八戸でシンポジウムが開催されます。世界の最前線の対策を学び、最短命県脱出を目指す一歩にしていきたいと思います。


鈴木達治郎氏講演『3・11以降の原子力政策 青森県民と核燃料サイクルを考える』(7/15)

2017年05月26日 | 東日本大震災・原発事故

→PDF Download
→参加申込はこちらから

八戸市医師会市民公開講座(青森県医師会生涯教育講座)
『3・11以降の原子力政策 青森県民と核燃料サイクルを考える』

講師 長崎大学核兵器廃絶研究センター長 鈴木 達治郎 教授
  (前・内閣府原子力委員会委員長代理/日本パグウォッシュ会議代表)
日時 2017年 7月15日 (土) 15時〜17時
会場 八戸グランドホテル 3階 双鶴
    八戸市番町14番地 TEL 0178-46-1234
主催 八戸市医師会 TEL 0178-43-3954
参加無料・要申込 定員150名(申込順)

鈴木達治郎氏 Profile
1951年大阪府生まれ。東京大学原子力工学科卒、米マサチューセッツ工科大学修士修了。工学博士。専門は原子力政策。2010年〜14年、内閣府原子力委員会委員長代理。2014年より長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長、2015年より現職。

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 東日本震災・福島原発事故から6年が経過し、いくつかの原発で再稼働が始まっていますが、東日本では1基も稼働していません。一方、最近1年間だけみても、電力自由化に対応した「使用済燃料再処理機構」の発足、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定、高レベル放射性廃棄物最終処分場の適性地マップの公表延期、六ヶ所再処理工場の基準適合性審査における前進など、青森県の原子力政策をとりまく環境は大きく変化しており、先行きに不透明感も増す中で、国や県などは全量再処理路線を堅持しています。
 また、国際的に核兵器廃絶を求める声が強まる中で、日本の余剰プルトニウム保有にも厳しい目が向けられています。 
 今回、原子力政策の専門家で、福島原発事故以前から提言を続けてきた鈴木達治郎教授をお迎えして、市民公開講座を開催することになりました。鈴木氏は、2015年の「八戸シンポジウム〜放射性廃棄物と地域を考える」(山脇直司氏・今田高俊氏・鈴木氏)以来2年ぶりの来八となり、今回は核燃料サイクルを中心とした原子力政策の問題や課題についてお話しいただいた上で、来場者との議論や対話にも応じていただけることになっています。
 広く様々な立場の市民にご参加いただき、共に学んで議論する場になることを期待いたします。なお、この講座は医師会の予算により運営され、政治的・経済的に中立で、利益相反はありません。

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参加申し込み・お問合せは、
①氏名、
②在住地(市内・県内・県外)、
③原子力政策に関する質問・疑問(あれば)をご記入いただき、post311aomori@gmail.com にメールをお送り下さい(担当:久芳)

http://www.kokuchpro.com/event/post311aomori/ からお申し込みいただくこともできます

頂いた個人情報は法律に則り他の目的には転用いたしません
(八戸市医師会員およびその家族、従業員の方は八戸市医師会に直接お申し込み下さい)