手話通訳者のブログ

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私的手話通訳

2015-01-23 07:08:12 | 日記
手話通訳者派遣制度によって行われる公的通訳など、手話通訳のほんの一部でしかない。
公的通訳の登場人物は3者。
① 申請者(手話通訳者派遣を申し込む者)
② 派遣者(手話通訳者を派遣する者)
③ 手話通訳者

公的通訳で対応できない内容はすべて、私的通訳である。
私的通訳の場合、派遣者は登場しない。
ろう者と手話通訳者1対1である。

ある日、携帯に電話がかかってきた。
知らない番号である。

「今、家に近所のろう者きてんねんけど・・・今から来てもらえまへんか?」

市営住宅に住んでいるろう者のTさんが近所の住民とトラブルを起こし、話し合いになったが、意思疎通がうまくいかない。
同じ棟に住んでいる自治会長宅で話し合いとなったが、筆談をしてもうまく話が通じない。
自治会長がしびれをきらし、荒々しくメモした。
「手話通訳者を呼んでください」
それで、Tさんが俺の携帯電話番号をメモして、自治会長に渡した、というわけ。

この時、もしTさんが役所の電話番号を書いていたら、公的通訳での対応になったかもしれない。
でも当事者のTさんとしては、住民同士のトラブルなど、誰にも知られたくない。
だから、私的通訳となる。
このように、公的制度に乗らない手話通訳は、数えきれないほど、ある。