手話通訳者のブログ

田舎の登録手話通訳者のブログです。

手話通訳技術/視線

2015-03-31 04:20:10 | 手話
「視線が技術とは、どういうことや?」

視線の使い方、と言えばいいかな。
手話通訳者は、ろう者と聴者の間にいる。

聴者が話している時、ろう者を見て、手話を表す(聞き取り通訳)。
この時はごく当たり前のことで、視線について語る必要なし。

ろう者が話している時、ろう者を見て、日本語に変える(読み取り通訳)。
これもまあ、当たり前やね。

さて、ここで、考えてみよう。
上記の場面、
(1)聴者が話している時
(2)ろう者が話している時
両方とも、視線はろう者に向いている。では、通訳者が聴者を見るのは、どんな時か。(2)の直後だろう。
今、ろう者が表した手話の読み取りを完了したことを、ろう者と聴者に伝える意味のある視線。
通訳者の、この視線の動きで、相手の聴者に発言を促す意味もある。
聴者が話し始めたら、視線はろう者に戻し、聞き取り通訳を行う。

視線は基本、ろう者に向いている。
この視線がろう者以外に向く時、それは意味を持った視線の動きである。

通訳者がこの基本を踏まえていないと、通訳者の視線は聴者に向かってしまう。
こうなると、上記とは逆となり、通訳者の視線は基本聴者に向いていて、時々ろう者を見る、ということになる。
これは駄目。
通訳にならなくなる。
まるで、通訳者がろう者の「代わりに」、相手の聴者と話しているような感じになる。
手話通訳者の技術や経験が足りないと、まさに、こういう状況となる。



イマジン

2015-03-30 01:40:27 | 手話
手話通訳者のみなさん、イメージしてみていただきたい。
聞こえない自分を。
日常生活の中、聞こえない自分。

年度替わりの季節。歓送迎会の時期や。
歓送迎会の様子をイメージする。そのイメージから、音を消す。
宴会。
最初に、偉い人が立ち上がり、みんなに檄を飛ばす。
参加者全員、真面目な表情。
何を言っているのかわからないが、とりあえず、真面目な表情を作っておく。
挨拶が終わり、乾杯。
酒が入り、だんだんと盛りあがってくる。
みんながドッと笑う。なんとなく、つられて笑う。
盛り上がれば盛り上がるほど、心が冷えてくる。

お付き合い。
聴者でも、あまり楽しいものではない。苦痛でさえある。
しかし、それなりに、同僚と冗談を飛ばして会話し、酔っ払えば、ある程度は楽しめる。
しかし、聞こえないとなると、楽しむことは無理だろう。
ひたすら苦痛だろうと思う。




乱入/反省

2015-03-29 12:01:48 | 手話
今回、学童保育関係で俺がやったことは、完全に、手話通訳者としての役割を超えている。
だから、さんざん、批判もされた。
でも、後悔はしていない。

「ろう者がいるから手話通訳者がいる」
のではなく、ろう者がいてもいなくても、
「手話通訳者がいるのが当たり前」
という環境を作りたい。



「乱入」完。



乱入/再び、派遣者との交渉

2015-03-29 11:44:55 | 手話
学童保育から手話通訳者派遣申込があったら、公費で派遣していただきたい。
「いや、前例がないので、それは難しいと思います」
なんでや?
「いや、ですから、前例がないので・・・」
前例がないことはやらない、なんて言っていたら、聴覚障害者は運転免許がとれないままだったはずや。
「それはそうですが・・・」
責任者と話がしたい。
「あいにく、外出しております」
じゃ、アポイントをとらせてください。
「わかりました。課長から直接、連絡させていただきます」



数日後、課長から電話があった。

「たいしさん、来てもらう必要はありません。市の担当者と協議しまして、学童保育は公的教育機関という扱いにすることに決定しました。公費での手話通訳者派遣が可能です」


やれやれ。


<続く>



乱入/学童保育父母会との交渉

2015-03-29 00:37:36 | 手話
Sさんから手話通訳者派遣申込を行うようになって、毎月、手話通訳者が派遣されてくるようになった。
派遣者の方針で、通訳者は毎回、別の人が来る。
俺は用済みになったはずなのに、毎月、父母会に参加していた。
今回、派遣されてきたのは手話通訳者B。

「うわ、たいしがいる・・・」と、露骨に嫌な顔をした。


議題のすべてについて評決が終わり、会長が、「これにて終了しますが、よろしいですか?」と終了しかけた時、立ち上がった。

すみません、手話通訳者派遣について、皆さんにお願いしたいことがあります。
Sさんの息子さんは6年生です。間もなく卒業されます。
そうなると、4月からは手話通訳者は来なくなりますよね。
では、もし、今後、ろう者のご両親がいらっしゃったらどうなるんでしょうか。
ここの学童保育は子供たちの父母が経営しています。
その子供たちが卒業すれば、経営する親たちも代わることになります。
今回、幸運なことに、理解のある方ばかりで、手話通訳者の派遣を認めてくださいました。ありがとうございます。
でも、もし、将来、Sさんのようなろう者のご両親がいらっしゃった時、その時の父母たちに理解がなかったら、手話通訳者派遣を認めてもらえないかもしれない。
それでは、困ります。
今後は、ろう者個人からではなく、学童保育から手話通訳者派遣申込をしていただきたい。
ろう者がいるから申込をするのではなく、学童保育の会議には常に手話通訳者がいるようにしていただきたいのです。
そうなれば、ろう者のご両親も安心して、子供さんを学童に通わせることができます。


会長さんは困惑の表情。
「たいしさん、それでは、議論が振り出しに戻ってしまう。費用負担の問題が出てきてしまいます」


おっしゃる通りです。
だから、派遣者と再度、交渉します。
もし、費用負担の問題がクリアしたら、学童保育としての手話通訳者派遣申込、お願いできますか?



会長も他の出席者たちも、「費用負担がないということなら、学童保育として手話通訳者派遣申込を行うこととしよう」と決議してくださった。

手話通訳者Bは苦い顔をしている。
「また、たいしがでしゃばって余計なことをしてる」と目が言っていた。


<続く>